ライオン
「お前…名前で?マジ?名前呼ばれてるなんて出席確認以外に聞いた事ないぞ?」
「俺もないし。家族も親戚も皆レオだからね」
獅王がくすりと笑みを漏らしながら言えばだよな?と林も頷いている。
図書館を出て駅に一緒に歩きながらの会話だ。
「ユキトってどんな字?苗字は穂波さん?」
「そう。あ、漢字は内緒。教えない」
「なんだよ…勿体つけやがって」
教えてなんてやるか。ユキウサギなんて可愛すぎる事は獅王だけが分かってればいい事だ。
「しっかし…なんつうか…色気あるな…男だけど」
「だろ?…まじで俺ヤバイかも…捨てられないようにしないと…」
「レオで捨てられるとか…ああ…でも女にはフラれてきたっけか?でもそれはレオが相手に興味もなかったからだろ?」
「多分ね。雪兎さんに限っては興味ないとかないから。むしろ俺の方がウザく付き纏ってる状態だし」
「ウザすぎんのも嫌われるぞ?」
「そうなんだよな…。あの人は大人だから…。年の差もあるし俺はまだ大学生だし…」
はぁと獅王が溜息を吐き出すと林が笑った。
「外見で引き止めるしかないな」
「なんだよそれ…俺のいいとこは外面だけか?」
「だろ」
「………」
断言されれば黙ってしまう。
それに言い返せない自分にも溜息だ。
駅で林と別れて自宅に向かう。
バイト増やしたいけどどうしようかと悩む所だ。日曜日に基本は雪兎さんは出勤だから増やしてもいいかもしれないけれど…自由に動ける時間も確保しておきたいとも思う。
いつ雪兎さんから連絡きてもいいように。
…連絡くるのかな?
どうも好き好きは自分だけのような気がするのは仕方ないだろうけど。でも雪兎さんもちゃんと獅王のスケジュールも受け取ってくれたし、話しかけても嫌そうには見えなかった。
仕事中だと少し突っぱねられはしたけれど。
何度か視線も合ったし、ちゃんと意識してもらえているのが分かって舞い上がりそうになっている。昼も断られなかったし。
でもどれも獅王が積極的に押した結果で雪兎さんからではない。
勿論、自分からの告白だったし、雪兎さんに同じ気持ちになって欲しいと押し付ける気もないけれど、好きと言われたいのは高望みだろうか?
雪兎さんが積極的だったのは昨日で、セックスに関してで、体だけ?…とか考えちゃいけないけど!
それじゃセフレだ…。
つい誘惑されて昨日抱いてしまったけれど抱いちゃいけなかったのでは…?
ちゃんと雪兎さんからも好きという気持ちをもらってからのほうがよかったのでは?と考えてしまう。
それでも目の前ではいどーぞ、と言わんばかりに誘われたら我慢なんか無理なので今考えても無駄だし、しちゃったんだから取り消す事も出来ない。
がつがつとがっついた自分もみっともないな…と反省してまたも溜息だ。
でも雪兎さんを見ても思い出しても好きだな…という気持ちが湧いてくる。
今日の昼の定食屋さんでただ顔を付き合せて食べただけなのに、それだけでも雪兎さんの表情も可愛く見えて嬉しいと思う。
獅王が美味しい、と言った時の雪兎さんの得意そうな顔とか、普段図書館で見せない顔が可愛い。
「ただいま」
自宅に帰ると玄関には高いヒールの真っ赤なパンプスがあった。
「あ!」
ばたばたとリビングに向かうと思ったとおりに姉の姿があった。
「なぁ!前に言ってた話ってまだ有効?」
「なによ?挨拶もなしに。…って、あら?やる気になった?」
「ちょっとね。バイト増やしたいって思ってたから丁度いいかと思って」
「…ムカつく子ね。ただのバイトのつもり?」
「そうだけど?」
「……わが弟ながら本当にムカつくけど…いつでも有効だわよ!」
「じゃやらして?」
「分かった」
すぐに姉が頷いて電話をかけ始める。
「レオ~」
甥っ子が抱っこと手を伸ばしてきてひょいと抱き上げればニコニコ顔だ。
「類は可愛いな。お母さんに似なくてよかったな」
「どういう意味よ!」
電話中でも姉がキンキン声で言い返してきて獅王は肩を竦ませた。
姉は獅王と違って見た目は日本人に見える。髪も茶色がかってはいるけれど日本人の範囲内だ。
「レオは今日はライオンさんじゃないね」
「ああ~…」
笑ってしまう。髪を下ろしてたから鬣に見えなかったらしい。
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