明羅が出かけると言ったら見計らったように怜さんも出かけた。いそいそと。一体どこに?
急にだ。その前まではいつもの様に明羅に対していらない心配をしてたのに…。
「明羅くんどうしたの?」
「あ、ううん?」
「お誕生日プレゼントなのにわざわざ取りに来てもらってごめんね?」
「それはうちも近いし全然!」
何しろ歩いて行き来できる距離だ。
「宗が風邪なんて…よっぽど強い菌だろうから瑞希さんうつらない様に気をつけないと」
ふふふと瑞希さんが笑っている。そして会話が聞こえているのかうるせぇぞという宗の声とごほごほと咳の音。
「…本当に風邪なんだ?瑞希さんが出かけるの嫌がっての仮病じゃないんだね」
「本当だよ?熱はそんなに高くないんだけど…。そういえば怜さんは?出てきて大丈夫?」
「いいの。なんか怜さんもちょっと出かけるって出て行ったみたいだし。ちょっとだけだから後で迎えにくるって。もし瑞希さんが邪魔なら帰るけど…」
「いいよ!本当にごめんね。明羅くんの誕生日なのに。当日でもよかったんだけど…怜さんとの時間邪魔しちゃ悪いし」
「そんな事気にしなくても…」
ここの兄弟は色々お互いの事牽制したり仲良くないふりしてるけど、実は性格もそっくりだし仲いいと思う。
「怜さんが出かけるってどこに?」
「しらなーい。怜さんって内緒にするの好きだから。…何でも言ってくれればいいのに」
「きっと明羅くんを驚かせたいんだよ?誕生日のサプライズかな?」
「さぁ~?」
…その線は考えてなかった!瑞希さんにそう言われればそんな気もしてくる。
…だったらいいんだけど。
明羅が出かけるといったらいつもはぶちぶち言うのにさっきは喜んだようにして出かけてくるなんて言うから変だなって思ったんだけど。
「そっか…な?」
「そうだよ。きっと」
なんとなく瑞希さんに言われてほっとした。
そしてなんとなく怜さんがいつも明羅に文句を言う気持ちが分かってしまって少々自分が嫌になる。
いつも明羅に聞かれるように怜さんにどこ行くの?何用事?と根掘り葉掘り聞きたくなってしまったんだけど、いつも文句を言う手前明羅はそれを押し留めたのだ。
だっていつもだと怜さんは何か自分の用事があっても行きたくないとか明羅も行かない?とか子供のような事言うのに、今日は嬉々としてまるで明羅が出かけるのを待ってたみたいにしてたからほんの少し気になっただけ。
「…怜さん…ナニゲにもてるし…」
「ナニゲにって…」
瑞希さんに入れてもらったコーヒーを口に運びながら言えば瑞希さんが小さく笑う。
「コンサートの時は分かるけど!普段でも…二階堂 怜って名前を知らなくても、髪とかぼさぼさでも結構女の人に見られてるんだよね」
「ああ…うん…」
分かる、と瑞希さんも頷いている。
「無駄にかっこいいのもよしあし」
「無駄に…」
瑞希さんが口を押さえて笑う。
そんな他愛もない二階堂兄弟のアレコレを話ながら時間を潰していると30分を過ぎた頃明羅の携帯が鳴った。
「もしもし?」
『明羅?もうちょっとで着く』
「分かった」
本当に用事はほんの少しだったらしい。
「怜さん?」
「うん。もう着くって。ごめんね?時間潰させてもらっちゃって。宗はお大事に。プレゼントもありがとうございます」
宗と選んだというプレゼントは綺麗なカフスボタンだった。
「気の利いたものでなくて…」
「そんな事ないよ!怜さんのコンサートの時とかにつけさせてもらうね。あ、見送りいらないよ!宗についててあげて?」
一緒に出てこようとした瑞希さんを止めて明羅はマンションを降りていくとすでに怜さんの車がハザードをつけて停まっていた。
「宗は?本当に風邪か?」
「ん。会いはしなかったけどごほごほいってた」
「…宗に取り付くなんて随分根性ある風邪だ」
明羅と同じ様な事を言う怜さんに笑ってしまう。
「プレゼントは?」
「カフスボタン。綺麗なんだ」
誕生日だっていつも一人だった。プレゼントは届いても両親はいつも仕事で家どころか日本にいない。海外を拠点にしているから当然なんだけど…。
それがこんな風に祝ってくれる人がいるっていうのが嬉しい。
「よかったな」
「…ん」
怜さんが手を伸ばしてきて明羅の頭をくしゃりと撫でてくれる。
こういう所も好きなんだよね…と明羅は一人で照れてしまった。
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