「明羅…?」
「…大丈夫」
「…宗に風邪うつされてきたんじゃ…」
「違うってば。…ただの寝不足。なんか昨夜寝つけなくて…寝たと思えば目覚めて…」
「…今日はおとなしく寝ておけ」
昨日からどうも明羅の様子が変だ。
朝、先に怜が目を覚まして動き出したがいつまで経っても明羅が起きてこなくてまだ寝てるのかと寝室に戻ったらぼうっと目を開けて虚空を眺めていたのだ。
顔色も悪い。
風邪ではないというが…額か首に手を当てて熱を確かめようと思ったが昨日明羅が触れるのを嫌がった様に怜の手を避けた事を思い出した。それに…ベッドに入ってからも怜から離れるようにベッドの端の方で体を小さくして眠ったのだ。…よく眠られなかったらしいが…。
このままでいいはずない。
「明羅?触れてもいい…か?」
そう問えば明羅がびくっとして怜を見た。
「な、んで…そんな事…聞くの?」
「いや、だって…」
昨日は嫌そうだったから…とは言いたくもない。何故か分からないけれど怜の何かが明羅は嫌になったのか?
昨日迎えに行った時は普通だったはず。車でも頭を撫でた時は普通に嬉しそうにしていた。
変になったのは帰って来てからだ。
すっと怜が手を伸ばすと明羅がびくっと体を竦めたがとりあえず逃げる気はないらしいのにほっと安堵した。
「…熱はないな…」
「…だから風邪じゃないもん」
ぷいっとむくれたように明羅は顔を背け布団の中に入ってしまう。そうなると明羅がどんな表情をしているか見えない。
…もしかしてまた何かを勘違いをしているのか?…何を?怜が一泊を隠している事を感づいたのだろうか?
でも今日一日我慢すれば明日は旅館が取れたので一泊だ。ここでもし明羅が何か誤解をしているなら解くのは簡単だが…折角サプライズにしたいのに、と葛藤してしまう。
「今日明日と予定はないな?」
「…ないよ」
布団の中から出る気はないらしくくぐもった返事が聞こえてきた。さらっと明日の分の予定も聞き出せてさらに安心する。四日の誕生日当日も多分何も入れていないはずだからこれで安心だ。
…やはり明日まで黙っておこう。
「…俺…寝てる……怜さん…出かける?」
「いや?」
明羅がいるのになんで出かける?しかもただの寝不足とはいえ明羅が具合悪そうにしてるのに。
「…そう」
明羅が布団から目だけを出したが少し機嫌が直ったか?
「飯は?食えるか?」
「…ん」
のそりと明羅が起き出したのでさらにほっとした。
それにしても何を誤解した?別に明羅が出かけた時にほんの少しでかけただけなのに…。
迎えに行った時は普通だったんだからそれが原因ではないはず。
分かんねぇ…と怜は首を捻った。
ま、何にしろ嫌われて、ではない様子なのに安心した。
まだ表情は強張っている所はあるけれど今見る限りでは大丈夫そうな気もする。
明日になれば解けるだろうからとにかく今日は気持ちを逆なでしないように気をつけよう。
誤解しているわけでないならそれでいいけど…。
明羅は我慢してしまうから…言えって言ってるのに。でもやっぱり驚かせたいから聞かれても内緒にしたいが…それでも明羅に嫌われたり嫌がられる位ならバラした方がずっといいに決まっている。
もし明羅が聞いて来たならばちゃんと答えよう。聞いてこないなら知らん振りだ。聞いてこない明羅が悪い。自分だけで悩んで解決するんじゃないと言っているのに…一緒にいて年数も経っているのに未だ全部を怜にぶつけるつもりがないんだと思えば怜の事を信用していないではないかとも思ってしまう。
挙句に怜が触れるのを厭うようにしたのだ。
これはおしおきだろう?本当に理由が明羅の勘違いならば…だが。
「…怜さん?」
それにちょっと引っかかるのがこの呼び方だ。
宗はずっと宗と呼び捨てなのに怜の事はいつまでもさんづけだ。そりゃ自分は年は10も上だし宗は同級生だ。でもなぁ…他人行儀じゃないか。もう何年も一緒にいるのに。怜のパートナーは明羅しかいないのに。未だにさんづけ。
いくらベッドの中でさんを取ってみろと言っても頑なに明羅は呼び捨てにしないんだから…石頭というか頑固というか…。
気位が高くて気が強いのは知っているが…いつまで経っても明羅の意識では怜は同等のパートナーにはなっていない気がする。よく口にする何も出来ないのに…という言葉が明羅の心情を物語っている。
何も出来ないんじゃなくて怜がさせたくないだけなのに…。
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