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キリ番リク① 怜×明羅6

 確かに寝不足だけだったらしい。
 眠った後は顔色も戻ったし安心した。もし宗がかかってた強力な風邪がうつされていたら一泊に連れ出すなんて無理だったろうから。
 明羅が熟睡している間に怜はこっそりと二人分の一泊の荷物を作って車に積み込み、これで準備はOKだ。

 あとは明日明羅を連れ出せばきっと何を誤解してたのか、それも解けるだろう。
 聞き出してもいいのだが…藪蛇になりそうでとにかく明日だ、と怜もわざと問い詰めない。
 目覚めた後は顔色はよくなったがやはり明羅はどこか落ち着きがなく視線が不安そうに彷徨っているのは気になったが…。
 怜の動きを明羅が不安そうに瞳を揺らしながら目で追ってずっと姿を追いかけている。

 …ちょっとこれはこれで可愛いな…なんて思ってしまったのは明羅には悪いが。
 だが機嫌はすっかりよくなったわけではないらしく、その晩も明羅は怜から離れるように体を小さくしてベッドの端で眠った。
 …まったく。

 旅館のチェックインは午後三時。夕方までに着けばいいかと思っていたがこれはもう早めに連れ出した方がいいか…。
 温泉街を食べ歩きでもして時間を潰してさっさと部屋に引きこもった方がよさそうだ。
 なにしろ明羅の目が捨てられるのが分かっているような小犬の目をしてるんだから。
 抱っこしてよしよしして甘えさせたい所をぐっと我慢してるこっちの身にもなって欲しい。それに結局今日も明羅は口を開かなかった。

 こんな目を向けるくらいなら何でも言えと言ってるのに!
 はぁ、と怜が電気を消した暗い部屋に響くような大きな溜息を出したらびくっと明羅が体を揺らせた気配がする。
 どうやらまだ眠っていなかったらしい。
 …明日も寝不足になるのだろうな…。
 早めに出発して遠回りして行くか。
 なにしろ旅館ではゆっくり寝かせてあげられないだろうから。

 …困った子だ。
 こんなに可愛くて大事にしたくて仕方ないのに明羅は怜がそう想っている事を信用していないようだ。まったく…。


 「明羅、起きて」
 うーんと呻りながら明羅が目を擦っている。
 やはり昨夜もあまり眠られなかったのか目が腫れぼったいようだ。
 「…また眠れなかったのか?」
 「…ちょっとね…平気だよ」
 気だるげそうに明羅が頭を押さえながら起き出した。

 怜はすでに起きて家の事も済ませ、嬉々として上機嫌だ。何しろ明羅を一泊に連れ出すのだから。
 そんな怜を見て明羅がどうしたのだろうという目でじとりと見ている。
 「怜さん…?…何か…いい事でもあったの…?」
 穿ったような目だ。
 「いや?あ、明羅今日はちょっと遠出するからな」

 「…遠出?どこに?」
 「内緒。車の中では寝てていいから」
 「……ふぅん」
 気のなさそうな返事をしているけど、明羅の頬が仄かに上気した。心もち口元も緩んでいる。どうやら嫌ではないらしいし嬉しいと思ってくれたらしい。

 本当にこんな小さな事で表情を見せるのが可愛い。
 普段は強気で物言うくせに脆いのだ。才能に溢れているのに自信がない。誰にもそんな所は見せないのに怜にだけそういった脆い所を見せてくれるという所が怜は嬉しいし、だから甘やかしてやりたいのに。
 今日は旅館に着いたら全部を吐き出させて甘えさせてやる。

 「覚悟しとけ」
 明羅に聞こえないように口の中だけで呟いた。
 「ん?何か言った?」
 「いいやぁ?」
 にっこり笑みを向けてやると明羅が怪訝そうだ。

 「なんか…怜さん…変、だよ…?…誰かと…会ったり…する…?」
 明羅が言葉を小さく尻すぼみさせながら聞いて来た。
 「誰とも会わないけど?」
 なんでわざわざ誰かに会いに行かなきゃないんだ?折角の明羅の誕生日なのに。温泉で二人っきりでしっぽりと、に決まってる。
 「…そう…」

 ほっとしたような明羅の表情と返事にはぁと怜は溜息を吐き出した。明羅の中では一体怜の事がどんな事になっているのか知らないがかなり重症らしい。
 だがあと数時間の辛抱だ。

 「どこに…?何か用事?」
 「内緒だと言っただろう?」
 むうっと明羅が口を尖らせたがすぐに引っ込めて心配そうな目で怜を見上げて来て、怜は安心させるように明羅の髪を撫でてやる。
 何も心配などすることないのに。でもそれ位怜の事を明羅が気にしているのだと思えば満更でもないなと顔がにやけそうになるのだからどうしようもない。
 

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