お湯の水音とキスが重なる水音にこんな明るい昼間のしかも外で何をしているのか、と思いつつもずっと寂しかった心がやっと安心を取り戻して怜さんにしがみついてしまう。
「あっ…ちょっ…何…してっ」
「何って…ナニするに決まってるけど?」
「だって!まだ明るいし外!」
「たまにはね…いいでしょう?」
怜さんがそんな事をいいながら明羅の後ろを弄ってくる。
「昨日も一昨日も俺は明羅に避けられて寂しい思いをしたんだから」
「そんなの俺だって!」
「…それは明羅が自分でしたの」
…そうだけど。だって女の人と会ってたなんて聞かせられて何事もなかったようになんて出来なかったから。
「それともう一つ」
「な、何?」
「怜って呼んでごらん?」
「え?何…?」
「宗には最初から宗なのに。瑞希くんと俺は同じ扱いか?」
「ちがっ」
「俺は明羅はパートナーだと思っている。音楽においても私生活においても。まぁ普段は仕方ないから今まで通りさんづけでいいけど。セックスの時位はね…」
「そ、そ、……無理」
「ダメ。今回はペナルティも兼ねてだな」
そう言われてしまえば明羅に拒否権はなくなる。なにしろ勝手に誤解して勝手にぐるぐるして勝手にいじけてただけなのだ。
「怜さん…んんっ…本当にここでする気?」
「当たり前。何の為の離れで内風呂で露天風呂よ?ほら腰浮かせて」
「やだ…後ここ入れなくなっちゃうじゃん!」
「もう一つ内風呂ついてるから平気」
「へ?…あっ怜さん…っ」
明羅の腰を怜さんの腕が押さえ、ぐっとすでに昂ぶっていたものを怜さんが押し付けてきて明羅は声を押さえようと口を覆った。
だって外で…声が響いて外に聞こえそうだ!
「声も平気だって。今日は離れ使うの俺達だけらしいよ?さっき確認した」
「うそ…」
「ホント…ほらそこはいいから…怜って呼んでごらん?」
怜さんの声が明羅の耳にぞくぞくと響いてくる。
いつもいたずらっ子みたいにサプライズしてくる怜さんが可愛くて好きだ。まんまと罠に陥ってるのはいつも明羅なんだ。
「怜さん………怜…」
そんな小さい事も気にする怜さんも好き。いつもだったら無理、と呼び捨てになんかしないけれど、誤解が解けて、それが明羅の誕生日の為だったと知れば明羅だって嬉しい。
自分でもめんどくさい女々しい奴と思うのに怜さんはパートナーだと言ってくれるんだ。
きっと日付が変わる時に怜さんは誕生日おめでとうを言ってくれるつもりなんだと思えばますます怜さんが愛しくなる。
温泉も明羅が来た事なかったと思って連れて来てくれて…こんなに明羅の事を考えてくれているのに本当に自分は馬鹿だ。
キスを交わしながら怜さんが奥深くまで納まってくる。
「あ、ぁ…っ」
「中キツイ…感じちゃってるんだ?」
だって…こんないつもと違う…。
「温泉もいいだろう?また来年も来ような?」
「んっ!」
来年も…。
「でも…っ…ここでは…や…」
落ち着かなくて…やだやだと明羅が首を振っていると仕方ないと言わんばかりに怜さんが明羅を離してくれる。
「じゃあとでゆっくりと時間かけてだぞ?」
「わ、わかった…」
上気しているだろう顔で明羅が頷けば怜さんは満足そうだ。
せっかくこんないい所に連れて来てくれたのに露天風呂を使えなくするのは勿体無い。
怜さんに抱っこされたまま外の景色にじっと見入る。
和のテイストのウッドデッキに露天風呂。小さな日本庭園、静かな空間。
「…すごくいい…」
「そりゃよかった」
「ありがと…」
「どういたしまして」
こういう事されちゃうから明羅はいっつも何を怜さんに返したらいいのか困っちゃうんだ。すると怜さんは明羅の思っていた事が分かるように口を開いた。
「俺は明羅がいてくれるだけでいい。甘やかせたいし喜ばせたい」
「…どう、…して…」
「明羅が明羅だからな。…今回の…ちょっとは面白くなかったけど、ちょっとは嬉しくもあった。俺の事いらなければこうはならないだろう?」
「いらなくなんてない!…本当に…怜さんがいなかったら…俺には何もないんだ…」
「それでいい」
「…いいの?」
いいの、と頷きながら怜さんがキスしてくる。舌を絡めて深いキスをするとまた体が火照ってきそうだ。
「あ、ん…ダメだってば」
「ちぇっ。…まぁ明羅の誕生日だから…そこは今はいう事きいてやるよ。折角借りた部屋だし、堪能しないとな」
「…ありがと…」
本当に…怜さんと出会えたのも奇跡でこんな風に互いが欲しい位に結ばれるのも奇跡だ。
「好き…」
「ああ…。明羅…愛してる。……少しは信じてくれ」
はぁと怜さんに溜息を吐き出されてごめんなさいと明羅は小さくなった。
そして食べるのが惜しいくらいに飾られた料理を満腹になる位食べた後はもう怜さんの言われるがまま、されるがままだった。
日付の変わる頃まで怜さんに啼かされ、そしてまた露天風呂に入ってたら誕生日おめでとうと囁かれた。
いつもイベントの時には必ずと言っていいほど忘れられない事が増えていくのだ。
今年も…来年も…。きっとずっとずっと…。
Fine
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