どうやら三塚は怒ってはいなかったけど…。まさか!あんなことになるなんて。
確かにチョコは甘くておいしかったけど…ってそういう問題じゃない。
風呂から上がった後さらに広がった惨状をどうにか二人がかりで片付け、三塚がさっと夜ご飯を用意してくれて食べ終わり落ち着いたのはいつもよりもずっと遅い時間だった。
冷蔵庫から凪がどうにか作ったちょっと形も歪なフォンダンショコラと三塚の作ってくれたバレンタイン用のチョコケーキを出してリビングでお互いの前に置く。
ソファで並んで座った三塚が凪の顔を見ながら皿を持ちスプーンを刺すと中からとろりとチョコが流れ出てどうやら最後の一箱は成功だったらしいと安堵した。
「うん。おいしい」
それを三塚が口に運びそんな事を言ってくれる。
実際そんなおいしいわけではないだろうに凪の苦労を労ってくれての言葉にじわりと瞳が潤みそうだ。
「ほら、凪も確かめてみて?」
三塚がスプーンを差し出してきて凪は恐る恐る自分の作ったシロモノを口に入れた。
「あ…本当だ…」
初めてにしては、あんなに苦労したにしてはまぁまぁ普通に食べられる。
「ね?」
三塚がそう言ってぺろりと食べてくれれば三塚に抱きつきたい気分だ。
「凪…ありがと」
三塚が凪の頭を抱き寄せてキスしてくれる。
「ごめん…」
「なんで謝るかな?俺にとっては今までで一番嬉しいチョコでしたけど?案外不器用な凪があんなに一所懸命作ってくれたものだし」
あの惨状をみただけで凪が必死になっていた事は三塚には分かってしまうのだろう。
…予定では三塚が帰ってくるまでには綺麗に元通りにして驚かせるつもりだったのに。
「忘れられないバレンタインになったなぁ~」
くっくっと三塚が笑っている。
「キッチンの惨状には家の中に台風でもきたのかと思ったくらいだけど」
「ス・ミ・マ・セ・ン!」
「全然?おかげでおいしく凪もいただけちゃったしね」
「…それは…」
もごもごと凪が口ごもるとまた三塚に笑われた。
「凪もまんざらでもなさそうだし」
「あんな事は…もうしませんっ!」
なにしろ後片付けが大変だ!
「そうですねぇ~…生クリームも油分がね…ビニールシートでも貼れば…」
「そんな事までしなくとも!」
随分とノリ気らしい三塚に真っ赤になってしまうとまた笑われる。
「ま、今度ね」
……今度…あるのか?本当にする気か?
思わず疑いの目を向ければ三塚がにやりと不敵な笑みを見せるのにちょっと怖くなった。
「それより、どうぞ?凪のおかげで存在が薄れてしまったけど」
三塚が笑って凪にケーキを勧めてくれて凪はフォークを握り、小さなチョコのホールケーキに直接刺す。
かなり贅沢な気分だ。
ケーキ屋さんに一人で入るのも恥かしかったのに今では当然のように出てくるのだからなんて幸せだろう。しかもホールケーキを独り占めなのだ。
「ん~~…おいしい!」
やっぱり三塚のケーキがおいしい!ふわふわのシフォンケーキだ。それでいてしっとりしてるし。真ん中にはチョコクリームがたっぷりでアクセントにオレンジピールがさっぱりする。
「濃いのはさすがに飽きるかな、と思って。散々試食でも食べてもらったし。その代わりトリュフと生チョコもつけたのでそっちは濃厚で」
生チョコとトリュフも一口ずつ頬張る。
チョコが口の中で蕩ければ幸せも広がっていくみたいだ。
「んんー!」
おいしい!
やっぱりチョコの質が全然違う!
もう一口、と口に生チョコを放り込んだら三塚がぐいと凪の頭を抱えてきて口の中に舌を突っ込んで来た。
「んんっ」
さっきチョコ味のキスはいっぱいしたのに!
舌を絡め、蕩けたチョコと唾液も交じってくれば凪の身体はさっきの官能をすぐに思い出しそうになってしまう。
「ん…こんなもんかな」
三塚が凪の口腔を舐めあげそして唇を離すとチョコがついた自分の唇を拭っている。
「まだ…チョコ味…」
「あれ?チョコ味のキスには飽きた?」
「そうじゃっ…ない…けどっ」
顔が熱い。しばらくはチョコを食べたら今日あったいろいろな濃厚な一日の事を思い出しそうだ。
「…しばらく…チョコ味はいい…」
三塚が凪の呟いた言葉にぷっとふきだした。
Fine.
※ これでキリ番リク終了です。ちょこっと話に長々とお付き合いありがとうございます~^^
明日からウサギちゃんに戻りますね~^^
キリ番リクいただいたf様、t様、n様…いかがでしたでしょうか?^^;
思ってたのとちがーう(><)…ってなってたらすみません^^;
すこしでも皆様に喜んでいただければ幸いです^^
ありがとうございますm(__)m
たくさんのポチいつもありがとうございますm(__)m
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