ライオン
雪兎さんのマンションに着いてすぐに玄関先に買い物を置き雪兎さんを抱きしめた。
「獅王っ」
「雪兎さん…雪兎さん…」
ぎゅうぎゅうに雪兎さんを抱きしめると、最初は荷物!とか言いながら抵抗していた雪兎さんがやがて静かになって獅王に身体を委ね、あまつさえ雪兎さんも手を獅王の背中に回してきてさらに獅王は抱きしめる腕に力を込めてしまう。
黒い襟足にかかる長めの髪、目元のホクロ、黒い濡れた目、ピンク色の唇、獅王の腕の中にぴったりと嵌まるような身体。
もうどれもこれもたまらない。
服の下に隠れてる白い肌を思い出しただけでもう獅王の下半身が反応しそうだ。
でも明日は土曜日で獅王は学校はないが、雪兎さんは普通に仕事だから我慢しないと。
昨日みたいにしんどそうにさせたりしたら雪兎さんに悪い。
ぱっと獅王は腕を離し解放した。
キスもしたいけど、しちゃったら止められなくなるのは自分がよく分かっている。
「片付けましょ」
「………そうだな」
ちょっと雪兎さんが不満そうな表情を浮かべているのはどうしてだろう?
「雪兎さん?」
「ん?」
「…なんか…不満?」
「不満…?」
雪兎さんに聞くと同じ言葉を聞き返してきた。
「だって…面白くないって顔してる…」
言ってもいいのかな…?と思いつつ口にするとかっと雪兎さんが頬を赤くした。
「案外獅王は理性的なんだな、と思っただけだ」
あれ…?もしかして…足りない、とでも思った…とか?
「キスの一つでもされるのかと思ってた」
そそくさと雪兎さんがスーパーの袋を手に部屋に入り、キッチンの方に大股に歩いていく。
その後姿を獅王は慌てて追った。
「したいですけど!…だってそれ以上止まれる自信なかったんですもん!ね!ご飯の後!…いっぱいキスしてもいい…?」
「………」
雪兎さんはそれには答えず、スーパーの袋をダイニングのテーブルに置き、スーツの上着を脱ぎ始め、ネクタイを緩めた。
ああ…脱がすのも自分がしたい…なんてもう下心ばかりで獅王の中が埋まってるなんて雪兎さんは思わないのかも。
「着替えてくる。冷蔵庫に入れるもの適当に片付けておいて」
「……はい」
キスしていい、の返事がなくてガックリしてしまうが一応拒絶はされなかったのでとにかく言われた通りの事をしようと人の家の冷蔵庫を開けて買ってきた食材を片付けていく。
今日は簡単に鍋にしよう、とスーパーで二人で決めたので今日使い分は出しておいて。
そんなのまだ雪兎さんの事もよく知らないのにこうしてお客さん扱いされないのが嬉しいとか。
一日会えなかっただけで足りないとか。
どれも獅王にとっては初めての感情だった。
きっとセックスしてもまたすぐに足りなく思っちゃうんだろうな…と貪欲な自分に少し呆れる。
電車の中でももっとぎゅっと抱きしめたかったしキスもしたくなってたし。…我慢したけど。
部屋に入ったら歯止めが利かなくなりそうでまた我慢したら雪兎さんに煽られるし。
それでも自分の思いのままに進んだらきっと雪兎さんをまた滅茶苦茶にしてしまいそうで我慢だ。
煽られても、今はダメ。
…でも雪兎さんもセックスしたいって思ってるって事でいいのかな?
にやぁと獅王の顔が緩んできて頬っぺたを叩いた。期待しすぎ?
「獅王、風呂入る?入るならお湯張るけど」
「わざわざだったら悪いです。シャワーでもいいですけど。雪兎さんは?」
「俺も別にどっちでもいいけど。……そうだな…一緒に入る?」
「ハイ!」
にっこり笑顔で言われて獅王が即座に頷いたら嘘だよと冷たくあしらわれてしまった。
「……雪兎さん…意地悪」
なんかやっぱり少し不機嫌?
獅王がしゅんとすると反対に雪兎さんは満足そうに笑った。
「俺なんかこんな人間だけど?獅王は嫌にならない?」
「なりませんね」
雪兎の頭を抱き寄せて頭にキスした。
「俺だって本当は雪兎さんをいっぱい苛めて滅茶苦茶にしたい、とか思ってるんですけど…雪兎さんは?嫌?」
「……嫌じゃない…な」
かっと雪兎さんが耳まで赤くしたのが目に入って衝動が湧いてきそうになる。
「…その顔ヤバイですって」
「どんな顔だよ」
言いたい事を言ってくれる雪兎さんが可愛くて仕方ない。なんで7つも年上なのにこんなに可愛いって思うんだろう。
おとなしそうなイメージは今はもうない。いや、見た目はそう見えるんだけど今はそのギャップが好きでたまらないんだ。
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