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ライオンとウサギ 37

ライオン

 雪兎さんに歓迎されていないのだろうか…?
 告白した日は雪兎さんから積極的にマンションに連れてこられたけれど今日もどこか雪兎さんは部屋に入れたくはないような感じだったし、日曜日に来てもいい?と聞いた後の雪兎さんは困っている様子だ。

 どうして…?
 今まできっと何人もの男をこの部屋に入れてきただろうにどうして自分は歓迎されないのかと思うと嫉妬に歯噛みしたい位の激しい気持ちが湧いてくるがそれは表に出さない。
 まだ全然雪兎さんの事を知らないんだ。それで我が物のようにするなんておこがましいのも分かっているけれど、それでも付き合ってと告白してOKされたんだから今は彼氏でいいはずなのに。

 困った様子の雪兎さんを分かっていながら獅王はあえてそれに気づかないふりをして我を通すように口を開いた。
 「バイトが何時に終わるか分からないので終わったらメールか電話しますね!」
 「ん…ああ」
 雪兎さんがいいともダメとも言わない内に決定事項にしてしまわないと。
 小狡いのは承知だ。

 なんにしろまだ獅王は雪兎さんに全面的に認められているわけではないんだ。こうして内側に入れてもらえてはいるけど好きとも言われないし。
 だから少し位図々しいと思われても遠慮なんてしていられない。
 ちらっとダイニングの向いに座る雪兎さんを見ればやっぱり困ったような顔をしている。でも獅王はわざと見ないふりだ。

 さっきの身内の事情にも聞くなと雪兎さんの拒絶を感じた。
 もどかしいな、と思う。
 お母さんがすでに亡くなってるのは聞いたけど…、大学からここで一人暮らしも聞いたけど…。寂しいから付き合うのは誰でもよかったのだろうか?

 いや、それだってなんだってこうして雪兎さんと一緒にいられるなら獅王はそれでいいけれど。これから好きになってもらえばいいことだ。幸いにも雪兎さんからも電話くれたりバイト先で待ってくれたりしてくれるし、絶対に嫌われちゃいない。

 好きになって欲しい、好きって言って欲しい。
 でもそんな事強要する気もない。雪兎さんからそんな気持ちになってくれいと。
 だからその分気持ちの事は獅王から口にしないといけないだろう。
 「雪兎さん…」
 「ん?」
 食べ終わって片付けをしようとした雪兎さんの腕を掴んだ。細い白い腕。

 「好きです」
 「な、なに…言って…」
 ぶわっと雪兎さんが真っ赤になったのがまた壮絶に可愛い。
 目元のホクロまで可愛く見えるから不思議だ。いつもはエロくみえるのに…。
 「片付けは俺しますから雪兎さんは座ってて」
 雪兎さんが動揺しているすきにさっと鍋を取り上げてキッチンの方に片付ける。

 雪兎さんは照れたままでどうしたらいいのか、といわんばかりのままおとなしくダイニングに座っていた。
 今まで何人か付き合ったりした人がいたのを示唆してるのになんでこんな初心な反応なのだろう?
 勘違いしてしまいそうになるけれど、確かに抱いたときには雪兎さんは感じすぎる位に感じまくっていたし初めてではないだろうな、とは思ったけれど…。
 でもエロくて初心ってね…。やっぱ可愛いって思っちゃう。

 鍋なので汚れ物も少なくてあっという間に片付けも終わってしまう。
 「雪兎さん」
 そっと雪兎さんが座ってる椅子のすぐ横に立って声をかけた。
 さっきはキスも我慢してたけど、ご飯も終わったしもう解禁してもいいよね?
 雪兎さんの椅子の背もたれに手をかけて顔を近づけていく。

 「あのね…雪兎さんの事はずっと遠くからしか知らなくて…それが…少しずつ雪兎さんの事知っていくともっともっと好きって増えてく…」
 ほんのりと頬を紅色にして顔を上げ獅王を見ていたが、雪兎さんはふい、と獅王から顔を背けた。
 「…幻滅したんじゃないのか?」
 「え?幻滅?全然?…どうして?」
 「よく言われるから。思ってたのと違うって」

 「そうかもしれないですけど。でも雪兎さんは可愛いしそのままでいいです」
 「…可愛いって…7こも上の男に向かって」
 「だって本当の事ですもん。可愛い…好き」
 獅王は雪兎の頤に触れ、顔を上げさせると身を屈め、唇を啄ばんだ。
 何度も軽くだけ触れてキスしてると雪兎さんが自分から獅王の首に腕を回し、唇を深く合わせると舌を突き出してくる。
 足りない、といわんばかりに突き出された舌を捕らえればもう獅王の理性は飛んで切れそうだ。


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