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ライオンとウサギ 40

ウサギ

 「大丈夫…?」
 「多分……」
 「雪兎さんは明日仕事だし、抑えたつもりなんだけど…」
 「…………」
 むっつりと雪兎は黙った。自分からもっととねだったのは分かっているので何も言えない。

 でも獅王は確かに抑えてくれたらしく体が今は重いけれど動けないというほどでもない。
 それに今は獅王が甲斐甲斐しく風呂場まで雪兎を運んでくれるし体も綺麗にしてくれた。
 なんとも年下の彼に頼りっぱなしで甘えっぱなしなのは情けない気もするが、獅王は嬉しそうに世話を焼いているようなのでいいのだろうか?

 今まで誰にもこんな事された事もなく、大抵はヤり終わったらさようならだったんだけど。
 場所もホテルばっかりだったし、そういう付き合いしかしないつもりだったから。
 それなのに何故獅王にはこんな風になっているのだろう?
 だいたい家に上げるのも断ろうと思ってたのに今日もこんな事になってる。

 自分から誘って腰振ってその後終わったから出てけ、……なんてさすがに言えない。
 言えないし…獅王がまた雪兎をぐだぐだに甘やかすのだ。
 体も拭いて髪も乾かしてくれてベッドまで運んでシーツも交換して。
 雪兎は何もしないでぼうっとしてるだけでいいから楽ちんだ。
 交換したシーツにとぽりと雪兎を沈め布団をかけてくれる。

 「洗濯は明日朝しますね。あ、タイマーかけとけばいいか…」
 「……明日、バイトって言った?」
 「そうです」
 「何時?早起きじゃなくともいいんだろう?」
 「そうですけど。バイトというか…明日はその前の契約の話なんで午後からなんです」
 「……」
 じゃあここにいれば、と喉まで出かかった。

 別に学校でもないのなら雪兎と一緒にここを出る必要はないのだろう。でも、そうすると合鍵を渡さないといけないのか?渡してそのあと返せって言えるのか?
 …どうしようかと逡巡する。
 「いいですよ。雪兎さんと一緒に出ますから。明日は我慢するけど明後日は来てもいいでしょ?いっぱいもっとエッチしたい。今日もちょっと我慢したんだから」

 「……我慢?三回もして?」
 「だってそれは雪兎さんがねだってきたんでしょう?丁寧に雪兎さんの負担にならないようにって気をつけたつもりですけど。昨日がしんどそうだったから。本当はもっとぐちゃぐちゃにしたいんだけど…ダメ?」
 「………」
 もっと激しく…。今日だって十分な位だと思ったんだけど、さらにもっとがあるらしい。

 「…ダメじゃない」
 「………雪兎さん欲望に忠実すぎ!」
 ぷっと獅王が笑ってそしてキスしてきた。
 「エロウサギだぁ」
 「うるさい。エロライオンが」
 くっくっと獅王が笑っている。

 「じゃあエロライオンくんは洗濯物タイマーセットして電気消してきます」
 「…ん」
 くすぐったい。こんな事初めてだ。
 ダブルの広いベッドにいつも一人で悠々と寝るのが気持ちいいのに獅王がいないといつもよりも広く感じるのはどうしてか…。

 もうダメなんじゃないか…?
 自分が怖くなりそうだ。
 すぐに獅王が戻ってきて隣にするりと体を滑らせるとリモコンで電気を消し、そして雪兎の体を抱き寄せた。
 パジャマを着て肌が触れているわけじゃないのに温かい。
 「俺のお着替え置いてってもいい?」
 ダメだ。そんな獅王の存在が部屋に残ってたら期待でおかしくなりそうだ。

 …でもダメというのも付き合ってるなら拒絶に感じてしまうだろうか?それで獅王が怒ったら離れていくのか…?
 「図々しすぎ?」
 「……いや」
 小さく答えて結局いいも悪いも言えなくなる。
 「雪兎さんは俺と一緒にいるの嫌?」
 「……嫌じゃない」
 だから困るんだ。

 「着替え…置いて…いい」
 「ありがと」
 獅王がぎゅっと腕に力をこめると雪兎の頭にキスする。
 ああ…ダメかも。後戻りできないかも…。
 すっかり獅王は雪兎の中まで入ってきてる。
 もぞりと自分から獅王の腕の中に入って頭を獅王の胸にこすり付けると獅王が雪兎の頭に何度もキスする。

 「可愛い…一人で寂しい時いつでも呼んで?いつでも来るから。雪兎さんが嫌じゃなかったら毎日でもいいんだけどな…」
 「…嫌ではない…けど…」
 でも困るんだ。
 そんな雪兎の気配を悟ったのか獅王はそれ以上強く言ってこない。それが物足りないなんて思うのは気のせいだ。
 疲れた雪兎の体はすぐにうとうととし始める。温かい獅王の体温を感じて安心するように…。
 


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