ライオン
あんまり雪兎さんは自分の言いたい事を言ってくれない。
でも獅王の言葉に拒絶もしないし否定もしない。…肯定もしてくれないけど。
電話を切る間際にそっと雪兎さんが明日は外で会おうか?と窺う様に言って来て獅王は眉を顰めた。
そこは気づかないふりをしてどうして?雪兎さんの部屋がいいな、とわざと言えばそれ以上雪兎さんは外で、とは言わなかったけれど…。
やっぱり獅王の事は部屋に入れたくないと思ってるのだろうか…?
どうして…?
「レオくん!視線こっち」
カメラマンに声をかけられてはっとした。
今はスチール撮影中だった。
真面目にしないと、と意識から雪兎さんの事を抜くように気をつけた。
ポージングを求められてその通りにしていく。今までも何度かモデルはしていたので苦ではない。
ただ今までしてたのは姉に頼まれて社内用の分のモデルだけだったけど、今回からは表にも出る事になる。
雪兎さんにも一応報告しておいた方がいいかな…?まだ本格的に撮影に入ったわけじゃないけど。
そしてまた雪兎さんの事を考えてしまってくすりと笑ってしまうとフラッシュをたかれた。
「今のいい表情!」
「…そうですか?」
「前よりも表情よくなってるねぇ」
それはきっと雪兎さんのおかげかも。
雪兎さんから付き合うのをOKもらってから日増しに自分の中で雪兎さんの存在が大きくなって行くのがわかるから…。
今日だってもう早く終わらせて雪兎さんに会いに行きたい位だ。
…とはいっても雪兎さんはまだ仕事中だからすぐに、というわけにはいかないけれど。
合鍵でも貰えてるのなら先に行って飯とか用意しておくのに…。
いつも買い物しても雪兎さんは獅王に支払いをさせてくれない。獅王はまだ学生だから、と。確かにそうだけど、マンションにも押しかけて一方的に世話になりっぱなしというのはいただけない。それじゃ雪兎さんの負担になるばかりだ。獅王の出来る事は雪兎さんの家事の負担をちょっと減らす事位しかないのだから情けない。
だからこそのモデルのバイトだ。身内のコネがバリバリだけど。
服だって獅王は買った事はほとんどなくてもらい物だ。それは獅王を使っての宣伝費、という事で相殺されてるからだ。
「カメラ睨んで」
髪をかき上げ、前をはだけてカメラを睨む。
フラッシュで光りが弾ける。
この瞬間は好きかもしれない。
「いいね。レオくんも撮れたの見てみる?」
頷いてカメラマンと一緒にカメラを覗き込んだ。
デジカメ撮影だからすぐに確認できる。
「……まぁまぁ?」
「まぁまぁどこじゃないけど。専属なんて勿体無い!本当にモデルする気ないの?」
「ないです」
カメラマンやアシスタントの人にも言われるけれど獅王にはまったくもってそんな気はない。本当は目立つのだって嫌な位だ。…とはいっても見た目から今まで目立たなかった事など一度としてなかったけど。
「今日はOKかな。じゃあ次の撮影は土曜日になってたけどOK?]
「大丈夫です」
服も小物も全部ラサ-ルイのものだ。今度の撮影は春物。まだ真冬にもなっていないけど。
今までラサ-ルイには専属モデルはいなくて毎回姉に頼み込まれてたけど断っていたが、今度は専属モデルとして表に出る事になる。それでもそれ以上の事などする気はない。
仕方なく、だ。ちゃんと稼いでます、と雪兎さんに言える様に、だけが目的だから。
お疲れ様です、と挨拶してスタジオを出て一度自宅に戻る。着替えなどを持参で行かないと。
一着分を雪兎さんの部屋に置いてきたけどもっと増やすつもりで。いつでも行っていいように、確信犯だ。
……雪兎さんは嫌がりそうだけど。
一緒にいたいって思ってくれないのだろうか…?でもダメとも言わないんだよな…。
そこ等辺が雪兎さんは曖昧だ。嫌われてないのはわかるのに、どうしてだろう…?
そこまでまだ獅王を信用していないし、好きでもないと思ってるのなら当然か?
早くもっと一緒にいたい、好きと言ってもらえるようになりたい。
セックスだけはもっともっととねだられてそこは安心するけど。これじゃ身体だけ?
……普通反対じゃね?食ってるのは獅王の方なんだけど…。
いや、食われてるのかな?飲み込まれるって感じか?
いいんだけど。身体だけでなく精神的にも繋がりたいと思うのは好きだったら当たり前の事だ。
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