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ライオンとウサギ 45

ライオン

 やっぱり雪兎さんは困った顔をした。
 申し訳ないな、とかの顔じゃなくてそれじゃ部屋に行くのが断れない、というようにだ。
 気づかないふりしてたけど…。問いただしてみてもいいのだろうか…?
 嫌というのではないのは分かる。ただ困ってる。
 …どうして?

 諦めたように無言で雪兎さんのマンションに並んで歩いた。今口を開いたら余計な事を言いそうで獅王も口を閉ざしている。
 雪兎さんの部屋に着いたら…やっぱり聞いてみよう。雪兎さんを我慢させて無理させたいわけじゃない。
 何を言われるかどうしても悪い予感がしないでもないんだけど。
 最悪付き合うのがやっぱり無理だ、なんて言われたらどうしようか…。

 ずかずかと雪兎さんの中に入っていったことを自覚している獅王は冷や汗が流れそうだ。
 獅王から好きだと言って付き合ってと言ってOKされただけで、雪兎さんがどう思っているかなんて分からないから…。
 でも話している時も一緒にいる時も笑ったり表情を出してくれていたし、セックスだって誘われるし少しは期待してたんだけど…。
 どきどきしてしまう…。

 こんな時は電車に乗ってる時間も歩く時間もやけに短く感じてしまう。
 雪兎さんのマンションに着いてしまい、雪兎さんが鍵を開け部屋に入る。昨日は来ていないけどその前の日となんら変わらない部屋だ。
 「雪兎さん…」
 玄関のドアを閉め、電気をつけてすぐに玄関先に紙袋を置くと背中を向けていた雪兎さんにそっと腕を回して抱きしめた。

 会ってすぐにでもいつでもこうしたいのをいつも我慢している。キスしたい、抱きたい…。
 雪兎さんは後ろ向きのまま獅王の腕に黙って抱かれていた。
 黒い髪に白い項。獅王はその項に惹かれて唇を寄せる。
 「んっ」
 キスすると小さく雪兎さんが声を漏らし、それだけでもう獅王のスイッチが入りそうになってしまう。

 そうじゃなくて…。
 「雪兎さん…無理させてる…?」
 「………え?」
 雪兎さんが後ろを振り返ろうとした。
 「聞いていいのかな…?俺の事…あんまり部屋に入れたくないでしょう?…嫌?」
 雪兎さんの顔を見たら逃げてしまいそうになって顔を見ないように雪兎さんの耳元に小さく囁いて聞いてみた。

 「ちが、う…」 
 雪兎さんが小さくそう答えて頭を横に振り、そして顔を俯けたけど否定の言葉を貰ってちょっとほっとした。
 「でも…なるべく入れたくない…って思ってるよね?」
 「………」
 否定がないという事は肯定だ。
 「どうして…?って…聞いてもいいのかな…?」
 恐る恐る聞いてみると雪兎さんがひゅっと息を飲むのを感じた。

 「好きだよ…?知れば知るほど…もっと好きになるしもっと一緒にいたいと思う。雪兎さんに同じになって、なんて言えないけど…でも無理して欲しいわけじゃないんだ…だから…」
 「…無理じゃない…。違う…。俺の問題なんだ」
 「…どんな問題?」
 「………」
 逃がしてもいいのかもしれないけれどでもちゃんと聞いておきたいとも思う。上辺だけの付き合いにするつもりなどないから。

 こんな気持ちは初めてで雪兎さんを大事にしたい、だからちゃんと聞かないと、と思う。
 「………怖い…んだ」
 「怖い…?何が?」
 そっと腕を緩め後ろ向きだった雪兎さんの身体を向かい合わせに向きを変えもう一度腕の中に捕まえる。獅王よりも華奢な身体が腕に馴染むようにすっぽりとはまり、雪兎さんは頭をこつんと獅王の肩口に乗せてきた。

 「…………一人になるのが…」
 「?」
 一人になるのが?…どういう事?
 「俺が帰ったあと?」
 「…違う」
 「…んんと?」
 よくわからない。

 「一日置きに来てて図々しい位なのに?」
 「だから…違う」
 「じゃどういう事?」
 「………」
 小さく雪兎さんが頭を横に振る。
 「雪兎さん…言って?言ってくれないと…俺分かんないよ…ちゃんと…分かりたいから…」

 「…………………る、…から」
 小さく消えそうな声で雪兎さんが囁いた。
 「ん?ごめん…聞こえなかった…もいっかい言って?」
 なるべく優しく聞こえるようにと雪兎さんの耳に促す。
 ちゃんと伝えようとしてくれたのが嬉しい。
 「別れた…後……寂しく…なる…から」

 「……」
 また別れた後…。一番初めの注意でも別れる前程のような話ぐあいだったな…と獅王は複雑な気分だ。
 …そんなつもりないのに…信用ならないのだろうか…?


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  そして今日はJ庭です~^^
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