ライオン
インターホンを押して少し間が空きゆっくりとドアが開く。
「雪兎さん!ただいま!身体しんどい?」
「……ああ…動けなくてだらだらしてた」
言葉どおりに雪兎さんはのろのろと気だるそうに移動してリビングのソファに座った。どうやら起きてからずっとソファにいたらしい。
クッションを抱きかかえ、足も抱えてソファに小さく座った雪兎さんが可愛い。
「…ごめんね?」
「ん?…ああ…別にいい。休みだし」
そんなにひどくはしていないけれど雪兎さんの身体の負担になったのは事実だろう。
でも雪兎さんももっともっととねだるから…つい。…と自分の中で言い訳をする。
「夜ご飯も俺用意しますから。昨日は結局ちょっとしか食べてないし」
「…ん」
喋るのも億劫なのか雪兎さんからは短い返事しか返って来ない。怒っているわけでもなさそうだけど…。
雪兎さんの隣に腰かけ、さてどうしようかなと獅王が悩んだ。
触ってもいいのだろうか?抱きしめてもいいのだろうか?
雪兎さんが抱えてるクッションに顔を埋めるようにしているのをちらりと見て、そしてやっぱり…と獅王は手を伸ばすと雪兎さんの身体を自分の方に倒した。
「寄りかかって?」
「別にそこまでひどいわけじゃないけど…」
そう言いながらも雪兎さんは体勢を戻そうとはせずに獅王に寄りかかったままにして足をソファから下ろし、クッションも離した。
雪兎さんの細い肩を抱きしめながら黒いサラサラの髪にキスを落としていく。
「…何してる」
「だって…したいから。好きな人が隣にいたらしたくなる」
それに雪兎さんはつれなく返事をしてくれない。
「…バイト…ないんだ?」
「月曜日は、というか雪兎さんが休みの日は入れません。貴重な一緒にいられる時間ですもん」
そういやモデルの仕事するという事をまだ言ってなかった。
「雪兎さん、ラサ-ルイってブランド知ってます?」
「………聞いた事あるような、ないような…?」
「CMとかも一応してるんだけどな…。そこ、実はウチの姉の会社なんですけど、今度俺そこのモデルするんで、一応報告」
「モデル…?」
「そう。今までも社用パンフレットのモデルとかはしてたんですけどね、今度は外の媒体にも露出すると思うんで…」
「………ふぅん。…すごいな」
「すごくはないけど。思いっきり身内コネですし」
「でも……そうしたら…獅王はますます騒がれて…」
雪兎さんが眉間に皺を寄せて難しい顔つきになった。
ヤキモチ妬いてくれるのだろうか…?いや、違うか…。
「だったら…俺なんかと一緒にいないほういいんじゃ?」
「ダメ。…関係ないです。プライヴェートは出さない約束だし」
「…そんな事言ったって無理じゃないのか?」
「ある程度はね…姉が社長だし仕方ないけど」
やっぱりそっちか…。別れる前提でいっつも話する雪兎さんが心配するのは男同士でバレるんじゃっていう心配だろうか?
そうしたら雪兎さんと別れるとでも思ってるのだろうか?そんな事獅王は思ってもいないのに…。
「俺は別に雪兎さんとの事隠すつもりありませんけど?」
「……は?」
「堂々と、とでもないですけど。雪兎さんが堂々としろって言うならしますけど?」
「するな!バカか?そんなの…世間一般的に無理だろう!やめてくれ!」
雪兎さんが悲愴な声をあげた。
「いえ…だから自分から吹聴はさすがにする気はないですけど」
「……ならいい…」
雪兎さんが疲れたように獅王に身体を寄りかかって体重を預けてくる。
「…雪兎さんは俺の、っていいふらしたいんですけど。本当は」
「……そういえば友達の…林くんだっけ?彼にも言ってるって…?」
「ええ。まぁね。アイツは高校からのツレだし」
「……林くんだけか…?知ってるの…?」
雪兎さんが窺う様に獅王に視線を向けた。
「…ですよ?」
一応姉にも言ったけど雪兎さん本人を知っているわけじゃないし。母親には恋人が出来たとだけしか言ってないし。
「…それならいいけど…」
「…俺と付き合ってるの…知られるのは嫌?」
幾分むっとして獅王が尋ねるとそうじゃないと雪兎さんが小さく否定した。
「なんで…そんな…獅王は元々ノーマルなのに…」
「え?ああ…ウチはそういった事に拘りないんで。外国に親戚も多いし」
「………」
信じられないという目つきで雪兎さんが獅王を凝視していた。
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