ライオン
歓迎されたわけではないけれど、どうやらお泊りはOKされたらしい。このまま居ついちゃおうか…?
それが雪兎さんが望んでいるのかいないのかイマイチ獅王には分からない。
別れた後に寂しいと思うのなら、それで誰も入れなかったというならば獅王は寂しい思いをさせたくはないし一緒にいたいと思う。
好きだったならばそう思うだろうけど…。
どうにも雪兎さんは過去に色々あったのだろうとは何となく分かっている。
その全部を話してくれてそして思っている事を言ってくれればいいのに…。
もしくは望んでいる事を言ってくれればいいのに…。
今はまだ獅王の方ばかり雪兎さんの事を考えている状態で雪兎さんは獅王を受け入れてくれているだけだろうけれど…雪兎さんから求めて欲しい。
…でもそれを焦っちゃいけない。
雪兎さんはかなり譲歩してくれているんだ。今まで付き合ってた人達からしたら随分と特別措置はされているらしい事に期待してしまう。
…きっと雪兎さんだってこれからの事を信じたいと思っているはず。
こんなにもすんなりと獅王の中で最優先事項が出来たのは初めてだった。
雪兎さんは正直で素直で可愛い。
どこも飾った所もないし、獅王と外を歩いていてもいつも自然だ。
今までの付き合った彼女達はまるで獅王を自分の飾り物のように見せびらかすような所があった。
別にそれが普通なのかな、と思っていたけれどどうやら違うらしい。
…いや、ただ単に雪兎さんが獅王に興味ないだけだろうか?
………………それはそれで凹むな。
でもかっこいい、とか言ってくれるし、少しは雪兎さんもそう思ってくれている?
一見外国人のような容姿は人の目を惹く。自然、一緒にいる人にも目を向けられる事も多くなるけれど、雪兎さんはそんな所も自然だった。
女の子と違ってそんな事気にしないのだろうか…?
どうにも同性相手に付き合うのは初めてで勝手が分からない。しかも年上だし社会人だし。
それでも一緒にいたい、と思うのだから自分に正直になるしかない。雪兎さんが自分の気持ちにだけは素直になれず、口を開けない代わりにそこは獅王が出さないと進んでいけないだろう。
身体の欲求は素直に口に出すんだけどな…。
好きなんて一言も言ってくれないのに欲しいとかは言ってくれる。イコールじゃないのだろうか…?
いや、女の子と付き合った時の事を考えればそうか、とも思う。
その時の獅王の状態が今の雪兎さんなんだろうか…?
嫌いというわけでもないから軽く付き合ってというのにOKして、欲求不満解消して、だからといって好きだ、と思ってるわけじゃない…?
自分ばかりが好き好きなのだろうか…?
「獅王?」
「…え?あ、…何?」
「いや…なんか難しい顔してるから…」
嫌な考えに行きそうになって顔を顰めていたらしく、それに雪兎さんが気づいたらしい。
「……なんでもないです。…ね、キスしていい?」
「………別に…今までだって断ってしてたわけでもないのに」
雪兎さんがぱぁっと顔を仄かにピンク色に染める。
…なんで今まで何人か男がいたようなのにこんな可愛い反応するのかな…?
「いいよって言って欲しいし、雪兎さんからして、って言って欲しいし、雪兎さんからして欲しい」
「………」
いつかは…と付け加えようとしたら雪兎さんがのそりと獅王の膝に手をつき体の向きを変えて乗っかってきた。
「…え?」
目元のホクロが赤く染まっている。
「いいよ、……して…?」
「え…?…あれ…?」
今すぐのつもりじゃなかったんだけど…。
雪兎さんがすっと目を閉じて獅王の唇にそっと唇を重ねた。
「………これでいいのか?」
軽く合わせた唇を離すと雪兎さんがますます顔を真っ赤にさせて怒ったような口調で小さく言うけど、怒ってるんじゃなくて照れてるだけ、だよね?
「…雪兎さんっ…」
獅王はぎゅっと雪兎の身体を抱きしめた。
「好き!」
「……分かった…って」
小さく雪兎さんが獅王の耳元にぶっきらぼうに呟くけど、これも照れてるだけだ。
まさか今本当にしてもらえるとは思ってもみなかったのでかなり嬉しい。
雪兎さんの顔中にキスしたい位だけど、引かれそうでそこは抑えるけれどキスしてくれるって、これって結構好きって思われてるって事で間違いないはずだ。
たくさんのポチいつもありがとうございますm(__)m
にほんブログ村小説(BL) ブログランキングへにほんブログ村 BL小説