ウサギ
「ダブルベッドいいですよね…余裕がある。俺の部屋シングルですよ?」
「…狭くないか?」
なにしろ獅王は雪兎よりもずっと身長もあるし、肩幅だって広い。
「知っちゃうと狭いですねぇ。雪兎さんと寝たって余裕ですからね。ね、抱っこしていい?」
「は?」
するりと温かくなっているベッドに獅王が入ってくるともぞもぞと獅王が雪兎に擦り寄ってきた。
「何もしませんから」
いいも悪いも言わないうちから獅王は雪兎の体に長い腕を回し、腕の中に閉じ込められる。
許可しなくともするくせに夕方雪兎にさせられたキスはなんだったのか…。
温かい…。
朝、というかもう昼になってたけど、目覚めた時に獅王がいなかったのが寒いと感じてしまった。
…明日の朝は獅王はいてくれるらしいからいいけど、じゃあ明後日は?その後は?
いなかったら寒いじゃないか…。そう思うようになってしまったのはどうしたらいいんだ?
「雪兎さん温かい~!これからもっと寒くなりますもんね!」
「…暖房つければいい」
「…そうですけどぉ」
そっと目の前にある獅王の胸に手を置き獅王がちゃんと持ってきたパジャマを掴んだ。
雪兎の服では獅王にはサイズが小さいだろうから入らないだろうからと獅王は着替えもちゃんと準備して万全で来てたらしい。
そういえば初めて来た日のバスローブも雪兎にはぶかぶかだったのに獅王はきちんとぴったりサイズだった。
獅王の心臓がどくどくと鳴っている。
「…心臓…の音早くないか?」
「だってそりゃね!雪兎さんとくっついてるし」
ぎゅっと獅王が抱きしめてきて雪兎までどきっとしてきてしまう。
自分の心臓まで早くなってるのが聞こえないようにと雪兎は獅王の胸を掴んでいないほうの手で自分の胸をガードした。
なんでもない。なんとも思ってない。
だから気づくな。
……支離滅裂なのは分かってる。でもそんな事思うとますます獅王を意識してしまいそうだ。
「……何もしないです。今日はね。雪兎さんはゆっくり安心して寝て?」
何もしないってこうして抱きしめてるだろう!だからちょっとどきっとしたんだ。
…なんて言ったら意識しまくりだと自分で言ってるようなもので、黙るしかない。
「体温つき抱き枕とでも思って?」
「……無理じゃない?」
「あれ?そう?」
くくっと獅王が笑う。
でも本当に温かい…温かいと幸せだと思うのはどうしてなんだろう…。
「幸せ~…って感じしません?」
思った事を言い当てられたのかと雪兎は驚いた。
「ちょっとは雪兎さんにそう思ってもらえればなぁ…」
どうやら言い当てられたのとは違うらしくほっとしてしまう。
…思ってる、と言えればいいのに…。
たった一言が言えない。
獅王……。
すりと雪兎が頭を獅王に摺り寄せると獅王の手が雪兎の背中を撫でた。
セックスなしでこんな風に誰かと寝るのも初めてだ。
「…本当に…いいのか?」
「うん?何が?」
「…セックス…しなくて…」
「あのね…。だから!もちろんしたいですけど。それだけが目的じゃないでしょう?こうしてるだけでも全然いいです。雪兎さんがしたいならさせていただきますけど、キツいでしょ?だからいいの」
いいのだろうか…?
分からない。
「好きです」
そっと小さく獅王の声が雪兎の耳元に囁かれるとどくんと雪兎の心臓が跳ねた。
「…ん…」
びっくりした。
雪兎はかっとして慌てて獅王の胸に顔を伏せる。
どくどくと雪兎の心臓がうるさい、と思ったら獅王の心臓もどくどくいってる。
同じ、だ…。
それにほっとして雪兎は体に無駄に入った力を抜いた。
さわさわと獅王の手が雪兎の背中を子供を宥めるように動いている。そこに肉欲はなくてただ柔らかな動きだ。
とろりと雪兎に眠気が襲ってくる。
なんでこんなに眠いのか…体がよほど昨日のセックスで疲れたのだろうか?
「…眠い」
「寝ていいですけど?」
ぷす、と獅王が笑う。
「お休みなさい」
「…おやすみ」
声が近い。体温が温かい。ここは安心できる場所?
…だったらいいのに…。
ああ…セックスだけでなくずっと一人で気を張っていたのだろうか?それが安心できる場所を見つけてしまったからこんなに眠いのだろうか…?
でもいつまでもこの場所があるわけじゃないのに…。
でも欲しい、と思ってもいいのだろうか…?
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