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ライオンとウサギ 59

ライオン

 雪兎さんは本当に寂しんぼウサギだったらしい。

 「…顔きもちわりぃいんだけど?」
 隣の席で林が呆れた顔で獅王を見て小さく言われた。
 講義の最中なのに獅王の顔はどうやらにやけていたらしい。
 「ほっとけ」
 「勿論ほっときますけど」

 あれから獅王は毎日雪兎の部屋にお泊り中だ。家に戻るのはいるものがある時とバイトがなくて中途半端な時間を潰す時位。
 それはいいんだけど、経済的には雪兎さんの負担になっているはずだからそこをちゃんとしないと。
 マンションは持ちマンションだから気にする事はない、と雪兎さんに言われたけど光熱費とかだってかかるわけで。

 ただ合鍵はまだもらえてないので基本は雪兎さんと一緒の帰宅と一緒にマンションを出る生活だ。
 さすがに迷惑なんじゃ?と思うけれど、帰るような素振りを見せると雪兎さんが落ち着かなくなって泊まっていい?と確認するとほっと安心した顔を見せるようになった。
 口元を押さえて弛む顔を隠す。
 だからちゃんとしたほうがいいと思うんだけど…。
 もう半同棲だと思うんだけどな…。

 付き合って一、二週間でこれってありなのだろうか?
 いや、いいんだけど。
 このまま雪兎さんがちゃんと甘えてくれるようになればいいのに。自分から泊まってと言ってくれるようになればいいのに…。
 まだそこまでは言えないらしいのが残念だ。
 もっと出してくれてもいいんだけどな…。

 「レオ!合コンいかねぇ?」
 「行かない」
 講義が終わって帰る用意をしていたら顔見知りの程度のヤツから声がかかったけど即座に断る。
 「え~…女子側から連れてきてって言われたんだけど」
 「行かない」
 「まぁ…レオ来ちゃったら女子総取りなるだろうからいいけど…」
 だれが合コンなんか行くか。

 「レオってそういうの出ねぇよな?出なくたって寄って来るだろうけど…」 
 「興味ないから」
 じゃ、と手を上げて教室を出た。
 まだ雪兎さんの事で悩んでた頃は出た事があったけど、いかにも獲物を狙うような女子の目に辟易したというのが本音だ。

 「今はもう一筋なんだ?」
 林が笑いながら獅王をからかうような口調で小さく聞いて来たのに獅王は頷く。
 「勿論」
 「へぇ~」
 その時ポケットの携帯が震えたので出してみると姉からだ。
 「あ、姉貴迎えに来るらしいから行くわ。じゃ」

 「あ~沙羅さん来んの?会いたい!」
 「…子持ちだぞ?」
 「そういうんじゃなくて!美人さんは目の保養でしょ!」
 「あんなのより雪兎さんの方が美人だ」
 「……あの人も美人さんだけど…男だもんよ」
 林がむぅっとしてるのをじゃ、といって校門に向かって行った。

 途中で雪兎さんにメールをしておく。
 用事が出来たのであとでまた連絡しますね、と。
 沙羅は多分モデルの件で来るんだとは思うけど…ただ迎えに行くとだけしかメールに書かれていなかったので目的がわからない。
 雪兎さんは仕事中は携帯に触らないので入れておくだけだ。今日はカウンター業務らしいからバイトもないし図書館に行こうと思ってたのに…。

 校門に向かうと真っ赤なポルシェがすでに停まっていた。
 …ったく。
 その車に獅王が向かっていくと視線が追ってくるのがわかる。
 「なんでわざわざ来んだよ」
 「え~?近くまで来たからついで。ね!アンタのウサギちゃんは?」
 「ちゃん言うな。ウサギさんだ。…っていうかお前が言うな」

 「見たかったのに…」
 「大学にいるわけないだろ」
 向いの図書館にいるけど、なんて言ったら行く!と言いそうなので黙ってそのまま沙羅の車に乗り込んだ。
 「何?」
 「打ち合わせ。ちょっと変更になった事とかあって。このまま会社向かうよ」
 沙羅が車を出したのでほっとした。視線を大分集めていたのは分かっている。女の子達が騒いでいたのも。

 「相変わらず騒がれてるんだ?ふふふ…仕事始めたらますます騒がれちゃうねぇ?そのアンタのウサギさんはいいのかな?」
 「…どうだろう?騒がれるだろうな、とは言ってたけど…」
 「ちゃんとモデルするって言ったんだ?」
 「そりゃちゃんと言うよ」
 「へぇ」

 栗色の長い髪にサングラス、真っ赤な口紅…派手ないでたちだ。
 「…年考えたら?」
 「失礼ね!」
 どうしても正反対であろう雪兎さんの方が綺麗で可愛い…とか、自分の姉貴と比べても仕方ないけれど、やっぱりそう獅王は思ってしまい、可愛いエロウサギさんを思い出してしまえば口元が緩んでしまう。 


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