ライオン
「あ…メール」
雪兎さんからで、今日は飲みに行く、だった。
…という事は帰りが何時になるかもわからないという事で鍵も渡されていない獅王は雪兎さんの部屋には行けないという事だ。
「…ふられた…」
「え?何?もうふられたの?」
「違います!今日!」
「アンタずっと家に帰ってないらしいね?」
にやにやと姉に笑われた。
「離してもらえないから」
ちょっと見栄を張って言ってみるとあははは!と豪快に一笑にされた。
…ムカつく。
本当は何時に帰る?とか、待っててもいい?ってメールしたいところだけど…雪兎さんは社会人なわけでそういった付き合いがあるのは仕方ないし、そんな事言えず分かりました、とだけ返事する。
「はぁ~…」
今日は会えないのか…と凹んだ。
「あ、ってことは…」
今日の分の好きを言ってない。
後で電話するかメールで帰ってきたら電話下さいと入れておこう。
今日も好きだし明日もだ。
「ちょっと!デレてないでちゃんとしてよ?」
「…分かってる」
そのまま会社に連れて行かれて軽く打ち合わせ。
撮影日の変更とか衣装の打ち合わせなど。
「今日ふられたならウチでご飯食べてく?類が会いたがってたんだけど?」
「あ~…そうしよっかな。家に帰るってメールも入れてないから飯ないかも…」
「でしょうね。家が別になっちゃったみたいだし」
「……まだそこまででもないんだけど…」
何しろ鍵はまだ貰ってないのだ。あとちょっとかな?とは思うんだけど。最近雪兎さんはなんとなく落ち着かないみたいでうろうろとしてる事があってもしかして…と獅王はじっと催促しないで待っているのだ。
獅王から言えばきっと仕方ないと言わんばかりに渡してくれそうな気配を見せてるんだけどそこは雪兎さんからちゃんと渡して欲しいから。雪兎さんから一歩進んで欲しいからだ。
打ち合わせを終えて類を保育園に迎えに行くのに沙羅は車を替え、ポルシェは会社の駐車場に置いていく。カーシートをつけたワンボックスカーに獅王も乗り込んで一緒に保育園までいった。
途中雪兎さんに遅くなってもいいので帰ったら電話かメール下さいと入れておいた。
姉の家から獅王の自宅は近いので、飯をご馳走になった後、類とほどほどに遊んでやって歩いて自宅まで帰った。
携帯を見ても雪兎さんからは電話もメールも一切入っていない。
同僚と飲み会だと言ってたので仕事後そのまま行ったのだろうか?だから何も連絡がない?
少々不安がよぎったが深く考えすぎてもどうしようもない。
「ただいま」
家に着いたら帰ってきたのにご飯ないわよ、と簡単に言われ苦笑した。沙羅の家で食ってきた、と言ってそのまま風呂を使い、いつ雪兎さんから帰ったコールがあってもいいように待機。
だがなかなか連絡はない。
どうしたのだろう?酔って寝てしまったのだろうか…?
夜の11時を過ぎてさすがに今から行くというのは迷惑かと諦め、電話だけにしようと連絡を待つ。
それでも来ない。
電話をしてみようかとも思ったけど、まるでそれじゃ邪推しているようじゃないか?とやはり雪兎さんからのを待ったほうがいいだろうと携帯を眺める。
「…来ないな…」
完全に電話も諦め、メールで12時になる前に今日の分の好き、を言えなかったからメールでと入れておやすみなさい、と入れたけど、やっぱり雪兎さんは眠ってしまったのか返事は来なかった。
寝てるんだよな…?
どこかに出かけてまだ外…じゃないよね?
自分がされた事があったから浮気はしない、って言ってたし。疑うんじゃないけど…。もしまだ外にしたって仕事中じゃないんだからメール位できそうなものだけど…。
やっぱり帰って来て寝てるのだろうか…?
全然顔が見えなくて何も繋がらないだけで不安になる。なにしろまだ雪兎さんからか確定の言葉を貰っていないのだ。
雪兎さんの中にいくらか入れてもらえてる自覚はあるけれど、こうしてほんの少しのすれ違いだけでまだ不安になる位あやふやな関係だ。
メールは返って来ない。
きっと酔っ払ってもう寝たのだろう。雪兎さんはそんなにお酒に強くないから。
…襲われてなんかないだろうな?酒飲むと雪兎さんは肌も上気して色っぽくなるし…。
余計な心配をしながら一人のベッドに横になった。
腕に雪兎さんがいない。それがどうも不安定に物足りなく感じてしまった。
一緒に住んでいれば雪兎さんが遅くともちゃんと腕に抱けるのに…。
雪兎さんは何も思わないのだろうか…?
寂しいと思ってくれてればいいのに。
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