ウサギ
まったくもって矛盾してる。
自分から休みを取れるけど、なんて話しをふれば獅王が喜んでそれに雪兎も嬉しくなって安心するのだから。
そのくせ昨日はメールしなかったりしているんだから獅王を振り回している自覚はある。
でも自分でもどうしていいのか分からないんだ。
いや、簡単な事なんだと思う。今現在の事だけなら。
自分だって獅王の事が好きで、一緒にいたいと言えば獅王も応えてくれるはず。
それは分かっているのに一歩が踏み出す事が出来ない。
昨夜一晩獅王がいないだけで寝不足になる位で不安になる位。そのくせ来たメールに返信できなくて、そしてそれでも朝こうして獅王が来てくれ、キスして言葉をくれれば縋りたくなっている。
そういえば、昨日の事…聞いていなかった。メールでも何も獅王は言ってなかったし…。
「昨日…」
「あ!すみません!昨日は姉貴に拉致られて。雪兎さんにもふられちゃったから姉貴んちでご飯食って甥っ子の遊び相手してましたよ」
……そうなんだ。
なんだ…何も難しく考える事はなかったのか…?
「雪兎さんは?」
「ん?ああ…帰って来てさっさと寝ちゃった」
「…のわりには顔色悪いですけど」
「よく…眠られなかったんだ」
お前がいなかったから…なんて言ったら…獅王はどうするだろう?
「今日は…来てもいい?そしたら雪兎さんぐっすり寝られる?」
「……ん」
分かっているのだろうか…?獅王がいなかったから眠られなかったって?
「…俺がいなかったから…」
どきりと雪兎の心臓が飛び跳ねた。
「…なんて思ってもらえたら嬉しいけどなぁ」
照れたように笑みを見せる獅王に自分が悪い事をしているようで後ろめたい。
本当にそうなんだ、と言えれば楽になれるのだろうか…?
昨日の一人寝がかなり雪兎にダメージを与えていると思う。寂しくて寂しくて仕方ない。
本当にウサギは寂しいと死んでしまうのだろうか…?だから雪兎はこんなに寂しくて寒いのだろうか?
ふる、と体を震わせると獅王がそっと雪兎との距離を詰めた。
「…寒い?」
「…ん」
「…今日はなんかすっごい素直でチョー可愛い。キスしたいなぁ」
獅王がこそりと雪兎の耳元に囁く。
「無理」
「わかってますってばぁ」
ふざけた言い方にしてくれるのも雪兎の気分を紛らわせてくれる為?
「……獅王ってさ…本当に19?」
「え?嘘ついてませんけど?」
電車に乗る時も、階段を上がる時も、ドアを通る時もさらりと獅王の手は雪兎をエスコートしている。それが本当に自然なので、女扱いというのではなくて大事にされているというような感じでこそばゆいんだ。
「なんか…ね…。全部含めて俺よりもスマートだなって」
「ちょっと背伸びはしてますけど。だって雪兎さんにガキくさ、と思われたくないし。本当は駄々っ子みたいにしたいんですけどね。必死に我慢してます」
「駄々っ子?」
「そう。あれ欲しい、これ欲しいって感じでいっぱい雪兎さんが欲しいんですけど。それ言ったら絶対引かれるもん」
ぷっと雪兎は笑ってしまった。ライオンの姿で駄々をこねてるイメージが浮かんでしまったのだ。
「…笑わなくても」
むぅっと獅王が剥れる。
「雪兎さん」
電車がホームに入ってくると獅王が雪兎の背を支え電車に乗り込むと込んだ人山から雪兎を庇うようにしてくれる。
獅王の胸に抱かれるような感じでくっ付きながら電車に揺られるが、獅王がいない時は人に押しつぶされそうになるのに最近はずっと獅王が一緒でかなり楽だ。
「…ありがとう」
小さく礼を言うと獅王がくすりと笑みを見せどういたしまして、と小さく返してくれる。
こんな些細なことも獅王は押し付けがましくなくさらりとしてくれるから、雪兎が増長していくんじゃないだろうか?
どうしたって雪兎のほうがもっともっとと欲張りになっているだろう。
獅王を家に帰さないのも獅王から言ってくれるけど、本当は雪兎が言われるのを待っている。それは言葉もそうだ。自分からは積極的にしていないようにして全部待っているようにして獅王にそう仕向けているんだ。
それでも獅王がもっとと思っているなんて言ってくれるから、だからますますいい気になっていってると思う。
今日は自分からキスしようか…?
先週獅王からキスをねだられたし、昨日の事もちょっと反省してるから…。
たくさんのポチいつもありがとうございますm(__)m
にほんブログ村小説(BL) ブログランキングへにほんブログ村 BL小説