ライオン
どこか強張った感じだった雪兎さんの表情が自然になってきて獅王はほっとして図書館の前で雪兎と別れて大学に向かった。
ちらちらと視線が刺さってくるのは昨日沙羅に拉致られたせいだろうけど、誤解されたならかえって好都合だ。
あれを彼女だと思われるのは心外だが、堂々とを歓迎しない雪兎さんの事を思えばそのままにしといた方がおとなしくなるはず。
雪兎さんにはちゃんと姉貴に、って言ったし万が一車に乗って行ったことを知ったにしても誤解はされないはず。
でも一度ちゃんと沙羅にも紹介はしたいな、とは思う。できれば家にも連れて行きたいけど…雪兎さんは了解するだろうか?
相手が男だからといってウチの場合は全然平気なんだけど、普通それは考えられないだろうから…。
それでなくとも雪兎さんは難しく考えすぎるようだし。
でも紹介したらちゃんと本気で考えてるって雪兎さんも安心してくれないかな…?
だといいんだけど…。
獅王は考えた事がいい案なような気がしてきた。
とりあえず沙羅に先に紹介してみようか、とはいっても休みもなかなか合わないから難しいけど、さっきデートのお誘いがあったから車を姉貴から借りてその時に紹介、がいいのかもしれない。
一人で計画を立てくくっとほくそえんだ。
でも…よかった…。なんかメールは返って来ないし朝寄ってみれば雪兎さんの様子がちょっと変だったしだったけど、雪兎さんから休み取れるからなんて言ってもらえて…。
ちゃんと獅王の事を考えてくれているという事だ。昨日はきっと弱い酒に酔って寝てしまっただけに違いない。
でもやっぱりどこか雪兎さんは不安定な気はする。一日でも離れたらそのまま遠くなりそうな…。
まさかね、と獅王は苦笑する。
鍵も雪兎さんから言ってもらえるのを待ってたけど、自分から要求した方がいいのだろうか…?
いや、そこはちゃんと雪兎さんから渡して欲しいから我慢だ。ちゃんと雪兎さんが獅王の事を認めて、納得してそれで渡して欲しいと思う。
…早くそうなって欲しいけど。
しかし気長だなと自分でも思う。いや、それもこれも相手が雪兎さんだからだろうけど…。
本当にどうしたら信じて分かってもらえるのだろうか?
「レオ!おはよう!ねぇ…昨日の車の人って…」
女子の一人が構内を歩いていた獅王に近づいてきて話しかけてきた。
周りでも窺っているのが分かる。
「ん~?大事な存在…かな」
わざと曖昧な言い方にした。
かなりそんな事言うのは不本意なんだけど。大事な家族には違いない。
…こう言っておけばあとは勝手に噂が伝わってくれるだろう。
外見的に沙羅とは似てないし、勝手に彼女だと誤解してくれれば獅王も面倒が少なくなる。
ストーカーのようについてくるかしましい四人組にもうまく伝わればいいのだが…。
今日もカフェでバイトだが、店に随分と迷惑をかけているようで申し訳ないし…。
これでモデルやったらますますカフェがうるさくなるかも。
落ち着いたいい雰囲気のカフェで年齢層も高めで店のスタッフもよくて獅王としてもいいバイトだったんだけど、かえって迷惑になるなら辞めたほうがいいかもしれない。
今の所運よく四人組みには雪兎さんといる所は見られてはいないようだけど。
朝は雪兎さんに合わせて早い時間に来てるしバイトの時いても雪兎さんの帰りの時間に合わせて逃げるように出ているから雪兎さんの存在には気づいていないはず。
自分がもう少し日本人っぽい外見だったら違っただろうに…。
小さい頃から見た目がもう外国人だったから…。いや、小さい頃の方が髪の色ももっと薄くてとても日本人には見えなかったけど。
それでもどうやら雪兎さんは獅王の外見は気に入ってくれているらしいので今となっては感謝する。
外見だけ好き、って事ないよな…?
ちょっと未だにそこがひっかかりを覚えてしまう。最初はそれでもいいと思っていたけれど…それとも…顔だけだから雪兎さんは長く続ける気はないのだろうか…?
いや、まさかね。
獅王をアクセサリーのように見ていた過去付き合った女と雪兎さんの態度は全然違うし。
だいたい眠っている時に外見は必要ない。眠っている時こそ雪兎さんは素直に獅王に擦り寄ってくるんだから。
…それも寒いだけ、とか言わねぇよな…?
どうにも自信満々になれる気がしない。
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