ライオン
どこか獅王の反応を見て楽しんでいるかのような雪兎さんの態度に獅王はむかむかと嫉妬が渦巻く。
それも子供っぽいと思われるのがオチだとは分かるけど、面白くないんだから仕方ない。
過去に男がいたのは聞いていたけれどまさかまだ電話がかかってきたりするとは思ってもいなかった。
最初に注意を受けた浮気したら、の相手は今の電話の男の事だろうか?
「帰りましょ」
ぐいと雪兎さんの腕を引っ張ってズンズンと歩き出すと雪兎さんはおとなしく獅王のされるがままになってついてきた。
誰にも渡したくない。本当ならしまって隠して閉じ込めて自分だけのものにしたい位に独占欲が渦巻く。そして雪兎さんがもう自分以外の誰にも目がいかなければいいのに、とも思う。
たった少しの電話だけでこんな風に思ってしまうなんて。
ああ…と獅王は過去に付き合った相手と本当に全然違うんだな、と分かっていた事だけれどまた再確認した。
自分は嫉妬深い方じゃないんだと思っていたし、自分も縛られるのはごめんだ、と思っていた節があった。けれど、本当に好きな相手だと一切そういう事は思わない。もっと自分だけを見ていて欲しいと思うし求めて欲しいと思うしそう思われたい。
そんなのは鬱陶しいと思っていたのに違った。
「獅王…」
「あ…すみません」
「…いや?」
腕を引っ張りながらの早歩きに息を上げそうになった雪兎さんの声に歩きを緩め、腕を離していつもの様にゆっくりな歩調に戻すと雪兎さんはほっとしたように息を吐き出し、そしてうっすらと笑みを見せた。
「…ガキくさい嫉妬ですみません」
素直に獅王は自分の行動を認め謝ると雪兎さんが無邪気そうな笑い顔を見せた。
「いや、……嬉しいよ…」
そして小さくはにかむように雪兎さんが小さく付け加えた言葉に獅王の理性がぶちんと切れそうになってぐらぐらと眩暈がしてきそうになる。
嬉しいって事は雪兎さんも獅王と同じ気持ちなんじゃないのか?
だって獅王は自分が女の子と付き合っている時は嫉妬を向けられるなんて嬉しくもなかったのだ。好きな相手だからこそ嫉妬して欲しいと思うのであってそうじゃない相手から向けられる嫉妬は煩わしいだけだ。
自分が過去付き合った事のある相手には失礼だとは思うけれど、自分がそうだったのだから…。
「…雪兎さんも嫉妬ってする…?」
してくれたらいいのに、と思いながら雪兎さんに聞いてみると雪兎さんはきょとんとした視線で獅王を見た。
「…するよ。昨日……したし…」
「…昨日?」
誰に!?と獅王は雪兎さんに咎めるような視線を向けた。だが、雪兎さんは顔を伏せてその獅王の視線には気づかない。
「…だって…女の人の車に乗っていったって…」
「………………え?」
獅王は足を一瞬止めた。
そして雪兎さんから半歩遅れたのを手を伸ばし雪兎さんの腕を慌てて捕まえた。
「…俺!?」
「…他に誰がいるんだ。今付き合ってるのは獅王しかいないけど?」
怒った口調の雪兎さんに獅王の顔が緩んでくる。
「うそ…?」
「嘘ってどういう意味だ」
むっとした顔をした雪兎さんだけど、獅王は雪兎さんの言った言葉を噛み締めた。
「…昨日女の子が…図書館で…レオが女の人の車に乗って行ったって…言ってたから…」
「それ聞いて?」
「……」
「あ…昨日…飲み会って…もしかして…本当はなかった…?怒ってた…?」
「…怒ってはいなかったけど…獅王は元々男が好きなわけじゃないしきっと女の子の方がいいに決まってる、と思った」
小さくぼそぼそと話す雪兎さんにぎゅっと抱きしめたい衝動に駆られる。
「獅王のメールも…用事とだけしか入ってなくて…」
「すみません!」
確かに姉貴に拉致られて、とは入れてなかったかもしれない。
「今日も昨日のその件で姉貴の事を彼女?と聞かれたり、決定事項にされてたりしてます。俺にしたら否定してまわりたいとこですけど…。本当に好きで付き合ってるのは雪兎さんです、と言ってまわりたいんだけど…」
「やめてくれ」
「…と言うと思って、姉貴の事は否定してません。肯定もしてないけど、噂だったら十分かな、と思って。なのでもし雪兎さんの耳に付き合っている相手がいるとか耳に入っても気にしないでね。否定して雪兎さんの事言っていいならいつでも言って下さい。いつでも俺は相手は雪兎さんだって言えるから」
「…やめてくれ」
むぅっと雪兎さんが怒った様な困ったような顔になっていた。
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