ウサギ
「しお…う…!」
早く触って、滅茶苦茶にして、と雪兎が声にしないで目で訴えれば獅王の目にも焦燥感が見える。
こんなに欲しいと思ってくれる、求められていると確認できれば雪兎の心も震えてしまう。
今までだって何人かとセックスしてきたけどこんなに自分から欲しいと思った事もない。
……それ位獅王の事を好き、なのだとは思う。
何されてもいい位。
このまま痛くても突っ込まれてもいい位に欲しいと思ってしまう。
昨日は自分から獅王を遠ざけたくせに。
こんなに獅王が求めてくれるのが分かればそれだけで昨日のやさぐれた思いが払拭されてしまうんだ。
ちょっとした事に嫉妬して、されて、それでもいいと、嬉しいと思い思われる。
こんなに互いの思いが行き来するのは初めてで戸惑ってしまう。
今まで雪兎の経験して来た事はどこか一方通行だった気がする。
気持ちを確認して付き合ってきたはずなのに簡単に捨てられ、捨ててきた。
でも獅王に関しては簡単に切り捨てられない。何度も部屋に入れるのはやめようと思ったのに結局いつも獅王を中に入れ、あげくにほとんど一緒に住んでる状態にまでなってた。
買い物して帰ってきてから料理したりじゃれたりが普通で、そのまま体を結び快楽に身を任せ、腕に包まれて安心して眠るなんてなかった事。
「獅王……いい、のか…?」
獅王の首に腕を巻きつけ、首を持ち上げて自分からキスをねだりながら口を開いた。
「いい…?何が…?」
獅王の手が雪兎の身体を撫でていく。キスも唇だけでなく首や目元や耳とあちこちを舐められたり吸われたりしている。
部屋の鍵も…獅王から口にされて獅王がじっと待っていたことも知れば、獅王が何を待っているのかも分かる。
獅王のキスも手も忙しなく雪兎の体を動き回りますます雪兎の体に熱が籠もってきてそして心臓が激しく脈打っている。
口に出してもいい…?
意固地になって言わなかった言葉。自分を守る為だけに言えなかった。
それを獅王はずっと急かす事なく待ってくれた。
毎日毎日。わざと体だけでいいというように見せかけたのにそれでも獅王は変わらず言葉をくれた。
全身で好きだと言ってくれる。
動き回る手も目も獅王はいつも雪兎といる時は誰かを求めはしない。それが安心をくれた。
体だけは何度ももう知っている。一緒にいる空気ももう安心できている。他人のはずなのに、血のつながりのあるはずの人と一緒にいるよりも獅王といるのは安心したんだ。
「獅王……一緒に…いてくれる…のか?」
ずっと…?とはそれでも言えなかった。
でももういい。今日も明日も好きと言ってくれるならそのまま今日と明日が続けばいい。
「…雪兎さん?」
獅王が動きを止め、手をそっと雪兎の頬を包んだ。
「……もしかして…言ってくれる…の?」
なんでそこでわざわざ確認するのか!熱に浮かされた状態のままうやむやに言ってしまいたかったのに!
そっと雪兎も獅王の頬に触れた。
そして真っ直ぐに獅王の目を見た。
日本人とは違うはしばみ色の綺麗な瞳。髪も金茶で綺麗だ。染めている色とは全然違う自然な色。
そっと手を獅王の胸に這わせる。
張った肩に筋肉のついた腕や胸板。雪兎のような貧弱な体とは大違いだ。
年だって雪兎の方が7つも上なのに獅王はそこは自分の方がマイナスだと思っているらしい。けっこう年下なのを気にしている。
…そんな所も好きだ、と自然に思えるんだ。
言っていいのか…?本当に?言ったらもう後戻りできないと思う。
獅王は雪兎の言いたい事が分かったのかじっと雪兎を見て待っている。早く言って、なんて獅王は言わない。そして雪兎も自分から踏み出さなきゃいけないと分かっている。
こくりと雪兎も獅王も息を飲み込んだ。
緊張している。心臓もどきどきしてるし…そして獅王を見れば落ち着かなさそうな目をしながらも待っていてくれる。
「獅王…」
とんでもなく照れくさくなって獅王の首に腕を巻きつけて顔を隠し、獅王の耳に口を近付けて小さな声で囁いた。
「好き…だ」
その瞬間獅王の腕は雪兎の体をぎゅっと力強く抱いた。息もしづらい位。でもそれ位獅王が言葉を待ってくれていたのは雪兎にも感じられた。
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