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2012.08.13(月)
朝目覚めると腕は明羅の身体を捕まえたままだった。
親父からの連絡。
聞きたくもない声。
あれを聞くと精神的に参ってくる。
いつもならば何日も引きずるのだが、今日は明羅のおかげかダメージがない。
明羅の襟足までのちょっと長い茶色かかった髪の毛が色の白いうなじに張り付いている。
怜は無意識に顔を近づけてうなじに唇を這わせた。
おおっと、やばくないか?
何を誘われてるんだ?
本格的に欲求不満かと思ったが別に女を抱きたいとは思わなかった。
「?」
なんかおかしい。
ぐっと腕に力を入れて明羅を抱き寄せた。
「ん…」
明羅から鼻にかかった声が漏れたのにどくりと下半身が反応した。
いや、朝だから当然だ…
そう言い聞かせる。
だが明羅にも男同士という嫌悪感はないらしい。
そういう怜にも明羅に関してはまったくない。
「?」
やっぱり変だ。
妙な告白じみた明羅の言葉に翻弄されるように怜の心が揺れているのは明羅は知らないだろう。
告白か、と冗談めかして言ってみれば返って来た返答に男同士なのにおかしい、というのは含まれていなかった。
図に乗って体を抱き寄せてもそのまま従順に身体を預けてくるのだ。
いや、綺麗で、可愛いと思ったって男だろ。
まったく昨日と同じ事を考えているのに親父の事なんて忘れていた。
それに思わず笑いが漏れる。
もう一度今度は意識を持って明羅のうなじに口を付けた。
「ふ……ん…?」
くすぐったいのかもぞもぞと明羅が動くのに笑みが浮かんだ。
面白ぇ~。
小動物、ではないな…。犬っぽいようで猫っぽい明羅に怜の顔が緩んだ。
男でもこいつなら抱ける…?
一瞬よぎった考えに怜は頭を振った。
何を考えてる。
怜の事を絶対的な目で見てくるくせに媚は見せない。
それがまた面白かった。
そのくせ怜の演奏に涙まで流すのだ。
あれには慌てた。
ピアノを弾いて目の前で泣かれたなんて初めてだった。
密かに怜自身もそれに感動した。
自分が明羅に多大な影響を与えている。それが見えた。
音が、というのは分かったが自分の音のどこが?というのはイマイチ分からない。
CDを出さないの?と聞いてくる。いつでも聴きたいからと。
家に帰ったら、と言われて愕然とした。
明羅がいなくなるという事を全然考えてなかった。
ウチに来てたった3、4日。
それなのにいるのが当然になっていた事が驚きだった。
やっぱりわけが分からない。
怜は目覚めていたが明羅の身体を抱きしめたままでいた。
もちょっとくっついてみる。
やっぱり全然違和感はなくてさらにくっ付きたくなるのはどういうことだろうか?
「ん~?」
怜は首を捻った。
抱きしめてた腕をそっと明羅の胸に移動させる。
うん、やっぱり胸はぺったんこだ。
…当たり前だろう。
今は夏休みだと言った。
家に両親はほぼいないらしい。
だからこうしていられるのだろうが…。
明羅の学校が始まったら…?
学校はどこか知らないが別にここからだって通えないか?
車で送ってやってもいい。
怜はいや、だからどうしてここにおいて置く前提だと頭を抱え込みたくなる。
だが、離したくない、と思っているのも本当だった。
親父の電話があったのに頭の中はそれが全然ない。
浮かぶのはどうやって明羅をここにおいておくかだった。
でも多分明羅は家に帰ったとしてもきっと頻繁に来るに違いない。
なにしろ自分の音に明羅は特別な反応を見せるのだ。
なにも危惧する事ないか、と怜はほっと息を吐き出した。
「う、ん…」
息がかかったのか明羅が寝返りを打った。
おお。
明羅の綺麗な顔がこちらを向いたのでまじまじと眺める。
キスしたくなるような唇だ。
そういやキスもセックスもしばらくしていない。
まだ27なのにもう枯れたのか?
だが明羅のこの唇にはちょっと触れたいと思ってしまったのに怜は頭を振った。
いかんだろう。
ふと時計を見ればもう11時になっていた。
「明羅!起きろ。午後一で調律が来るんだった!」
「…え…?」
身体を揺すると明羅が目を開けた。
寝てる時の半開きの口はヤバイ。
明羅が目を開けたのに怜はほっと安堵した。