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太陽と月の欠片 庇護欲3

 「なぁ、今度の日曜に珍しく練習あるんだ。午後体育館使うのははウチだけらしいし時間も3時までだから…その後、どうだ?OKだったら残って練習したいって言って使用許可とっておくから」
 「…いいよ」
 「うしっ」
 思わずガッツポーズが出る。
 杉浦の目は本人が言っていた通りに三日したら元の通りに戻ったらしい。
 とはいっても元々あまりはっきりとは見えていないらしいが。
 本人いわく小さい頃からそれが普通だったからどうってことはないというけれど。
 「…練習、隠れて見てもいいのかな?」
 「別に隠れなくてもいいだろ」
 「…余計な事言われない、か?」
 「じゃ、先に俺言っとくから。余計な質問とか話とか何もするなって」
 「…………お前1年だろ?先輩に?」
 「ん~。ここの学校部活ユルイせいなのか、わりと先輩達も温和なんだよな」
 「あ、そう。じゃ行く。何時から?」
 「午後1時から。あ、俺迎えいくか?」
 「………いい」
 「いいじゃん。どっかで飯食ってからってのは?」
 「……いいけど。でも学校から近いお前がわざわざ出てくる必要ないだろう」
 「いいよ。暇だし。普通だったら一日練習してるんだろうけどなぁ…」
 「…だろうね。永瀬もした方いいんじゃない?」
 「ん~~……」
 大海はバレーで大学に進む気もなかったのでそこまでバレーに固執してはいなかった。
 でもここ最近はちょっと考えるようにはなっていた。
 したくても出来ない杉浦がいるのに出来る自分が何をやっているのだろうと。
 でも杉浦は決してそんな言葉は吐かない。
 それがまた大海がひっかかるのだ。
 「……ちょっとは考えてる。でもさ、バレーって個人じゃないだろ?ましてここは進学校。おまけに何故か知んないけどバレー部皆頭いい人ばっかなんだよね」
 「そうなのか?」
 「そう。皆学年上位ばっか」
 「………珍しいな」
 「だろ?」
 「……まぁいいや。俺も楽しみにしてる」
 「おう。あと時間とかメールする」
 「了解」
 杉浦が昇降口から帰っていくのを見送って体育館に向かう。
 ここ最近はもうずっとそれだった。

 「大海って何?杉浦の保護者?」
 「は?」
 「ん~~~違うか。何?彼氏?キモっ!」
 「はぁ?」
 大海の後ろから声をかけてきたのは中学校から一緒のリベロの吉村だった。
 「なんかいつも杉浦守るように立ってるよね?」
 ぶぶっと吉村が笑う。
 「…………間違ってはないな」
 思わず大海も認めた。
 「うわっ!さむ!まじで!?杉浦綺麗だけど身長175近くもあるだろうし野朗なのに…やっちゃうの?」
 「………やっちゃう?」 
 吉村は身長170ない位しかない。だからリベロしかやれない。
 その吉村は去年の大会の事を覚えているので杉浦の隠している顔も知っているのだ。
 「まぁ、別に俺に関係ないからいいけど。見える所でキスとかやめてね。キショイから」
 「しねぇっつぅの。ふざけた事はおいといて日曜に見学呼んだから」
 「え!?杉浦入るの!?」
 「いや、入らない」
 大海が断言すればなんだ、と吉村ががっくりする。
 「…なのに来るの?」
 「そう」
 「それも意味わかんねぇな……」
 「質問とか勧誘一切するな」
 「……なにそれ?お前杉浦の窓口?」
 「そう」
 「………お前それでいいのか?杉浦いたら思い切り出来るんじゃないのか?」
 ふざけてた吉村の口調が真面目なものに変わった。
 「そうだけど…いいんだ」
 大海はふっと笑った。
 「ふぅん……ま、お前がいいならいいけど。俺は拾うの専門だし」
 「おう」
 「しかし……大海と杉浦か……」
 「何?」
 「つきあってんでしょ?」
 「はぁ?男同士だけど?」
 「うわっ!まじで言ってるの?………へぇ、そうなんだ。もうそうなんだと思ってた。違うんだ?へぇ……」
 「なんだそれ…?」
 「ああ………忘れてた。大海ってちょーニブいんだったね」
 「ニブくない」
 「ニブいって!まさか自分自身にまでニブいとは思ってもなかった」
 呆れたように吉村が言った。
 「お前何言ってるの?」
 意味が全然通じない。
 「ううん~~~?べっつにぃ?お前ってバカだなぁと思ってるだけ」
 「失礼な。お前より頭いいぞ」
 「そのバカじゃないって」
 背の低い吉村が大海の背中をどついてきた。
 
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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