ライオン
「うーん…現代美術はさっぱり分かりませんね。現代美術以外なら分かるのか、って聞かれたら綺麗とか上手とかそういうのしか分からない程度ですけど」
「俺も同じ。でも…観るのは嫌いじゃない」
雪兎さんが楽しそうに笑いながら答えてくれる。
博物館、美術館と巡ってそれだけでもう時間は夕方だ。
でもゆっくりした時間が過ぎて見たものをあれこれ言うのが楽しい。同じ時間の共有だ。
「この先にカフェあるんだけど行きません?うまいですよ?」
「…行く。…本当に獅王はここら辺来るんだ?」
道に迷ったり、みっともないとこ見せられないとわりと獅王がよく行く美術館などに誘ったのだが、雪兎さんも気に入ってくれたらしくてほっとした。
「結構来ますよ、一人でゆっくりしたい時とかね。そこのカフェもウサギとかリスとか出てきそうな感じでゆったりした時間が流れてるようなんです。今はもう冬に向かってるし出てこないでしょうけど。春とか夏もいい感じですよ」
「……意外だ」
獅王がこんな辺鄙な所を好きなのが雪兎さんには意外だったのだろうか?確かに見た目が派手なのは自覚しているけど人が集まる場所はどちらかと言えば好きじゃない方なんだけど、と苦笑すると雪兎さんが一人で納得しながら頷いていた。
「人が一杯いるようなところだと逆ナンとかがすごいか…」
そうか、と一人で頷いている。
「あ~…まぁ…うるさい…ではありますね」
「そうだろうな…」
雪兎さんが納得したようになるほど、とこくこくと頷いている。
こんな風に一緒の時間をゆっくりと同じように味わえることが嬉しいと思う。
「雪兎さん…休み合わせてまたデートしましょうね…。今度は雪兎さんの行きたい所とか」
「俺の?……うーん…あんまりないな…。今日みたいなのがいい。あまり人が多くなくて、とか…ゆっくりできるような所が」
ほら、やっぱり一緒の感覚だ。
「じゃあ一緒に考えて、にしましょう?車は姉貴に借りられるし」
「…いいのかな?」
「いいんですよ!ただちょっと派手なんですけどね」
獅王が苦笑すると雪兎さんも笑った。
「俺だったらRV車とかがいいんですけどね。ごっついデカイ車。そんな車だったら山の中のどこかのバンガローに一泊で行くとか」
「そういうのもいい」
「でしょ?…頑張って車買えるくらい稼ぐようになりますね!」
「…でも無理はしなくていい。…家にいるのだって俺は別に嫌じゃないし…」
「あ、俺も雪兎さんのマンションでただべたべたしてるのもチョー好きですから」
「……」
かっと雪兎さんが顔を火照らせ、仄かにピンク色に染まるのが可愛い。
どうしてもそれを見ているとムラっとして早く帰りたくなってくる。帰って雪兎さんとベッドに入りたい。
だけど折角のデート。それは夜でいいし、今は外で一緒にいる時間を大事にしたい。でも…。
うーん…と獅王が呻ってしまったら雪兎さんがどうした?と獅王の方を見上げて来た。
「え?あ…俺、声に出てた?」
「なんか呻ってたけど…?」
おもわず苦笑してしまう。
「あのね…こういう時間も好きなんですけど、やっぱり雪兎さんとえっちしたいなぁとか思っちゃって葛藤してたんです」
雪兎さんの耳に顔を近づけて正直な心を囁くと雪兎さんが顔を真っ赤にさせた。
「そ…ういう…事をこんな所で…」
言うな、と訴える雪兎さんが壮絶に可愛く見えるのだからますますスイッチが入りそうになってしまう。
「コーヒー飲んだら…帰る?」
獅王が雪兎さんの耳にキスを掠めるようにして囁けば雪兎さんが小さく頷いた。
獅王の言葉で雪兎さんにもエロのスイッチが入ってしまったのだろうか?
えっちには積極的な雪兎さんだったらありだ。
「それともアオカン…は寒いから無理だな…風邪ひいちゃう」
「ばか!そんな問題じゃない!外で…なんてしないからな!」
「…車も狭いし…やっぱ大きなRV車ですね!」
「そういう事じゃない!」
雪兎さんが耳まで真っ赤にしながら抗議してるのが可愛い。きっと本当に大きなRV車だったらここみたいにあんまり人の通らないような所だったらダメとかいいながらも雪兎さんもしてくれるかも…とか考えてしまって真面目にバイトを頑張ろうか、などと獅王は思案してしまった。
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