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太陽と月の欠片 庇護欲4

 「目、調子は?」
 「悪くない」
 待ち合わせして杉浦と昼飯。安い牛丼食って学校に行くんだけど…。
 「お前、制服…」 
 大海はバレー部のウェアだけど杉浦は制服を着てた。
 「替え持ってきてる。まさか学校に私服はダメだろ。それにはじめからTシャツ、トレパンじゃやる気満々みたいじゃないか」
 「…確かに」
 大海も納得する。
 「俺、ボール触ってないんだからな」
 「分かってる」
 大海の顔がニヤケる。
 「心配してねぇもん」
 「……もんじゃない」
 杉浦はいつもと同じだ。
 制服に眼鏡。
 でも今日トスが見られると思えばどうしても顔が緩んでしまう。
 「顔、しまりなさすぎ」
 杉浦に注意されるけど、その杉浦がなんとなく照れくさそうなのが可愛い。
 あんまり普段は表情が変わらないのによく見てるからか微妙な変化が分かると嬉しくて仕方ない。
 「そういや吉村に俺とお前って付き合ってるって思ってたって言われた…」
 ありえねぇよなぁ、と続けようと思ったんだ。
 「らしいね」
 普通に杉浦が頷いた。
 「………え?」
 大海は目が丸くなった。
 「そういう噂らしいよ」
 でも杉浦は淡々としてる。
 「ええと……???」
 「…お前知らなかったんだ?」
 くっと杉浦が笑った。
 「へ?」
 「ま、別に言わせておけばいいんじゃない?」
 それに対して何とも思わないようで杉浦は普通にして牛丼を食ってる。
 なんか杉浦に牛丼って合わねぇな、と大海は杉浦を見て関係のない事を思う。
 「俺は別にいいけど、永瀬はひどいか…。女の子寄ってこなくなるな」
 「いや、それは別にいいけど。女怖ぇし」
 またくっと杉浦が笑った。
 「ふぅん」
 隣に座る杉浦の目が永瀬を見た。黒い目。
 見えないからこんなに綺麗な目をしているのだろうか?
 長い前髪も眼鏡も邪魔だ。
 でもその隙間から黒い目が自分を見ている。
 「…食べないの?」
 「く、食う」
 わたわたと大海は慌ててかき込む。
 びっくりした。
 見惚れそうになった。
 いや見惚れたんだ。
 普段は別にそこまで…見惚れるまでじゃない、はず。綺麗だとは知ってるけど。
 今日が日曜で、学校じゃなくて、きっと普通の状況じゃないからだ。
 
 学校に向かうと部活をしているのは陸上部、サッカー部位。陸上部は個人で練習らしく、人数もまばらだ。
 「うっす」
 「はよっす」
 大海の後ろから声がかかった。
 「ダチの杉浦です」
 「はい。大海から聞いてるよ。ゆっくりしてって?」
 「はい」
 杉浦が頭を下げていた。
 「アレ、3年キャプテンで青山さん」
 大海が説明する。
 「結構身長大きいね」
 「ああ」
 「でもほどほど?」
 「……まぁ。多分もっと出来るんだろうけどな」
 大海は肩を竦ませた。

 杉浦は体育館でネット脇に立って練習を見ていた。
 どれ位見えているのかいまいち大海には分からない。
 全体的にぼやけて見えるとは聞いているけれど、黒板の先生の字も小さくなければ見えるらしい。
 大海は一人練習見に来るけど声もかけるな勧誘もするなと皆に言ってたのでだれも杉浦を気にしても声もかけなかった。

 なんでそれで通ったのか謎だ、と大海自身も思っていたのだが…。
 「は?だってお前自分の彼女呼びました。声かけるなよ、と同じでしょ」
 吉村にこっそり聞いたらそう返されてがくりと力が抜けた。
 そういや杉浦も付き合ってるとかいう噂にそうらしいね、と肯定してた。
 「おかしいだろ…」
 「元凶のお前が何言ってんの?」
 バカ?とまた吉村に呆れたように睨まれた。

 「大海っ!」
 「うすっ」
 オーバーからのアタック練習。
 オーバーでセッターに上げてトスからスパイク。
 杉浦をちらっと見るとじっと見ていた。
 コンビネーションの練習して。
 2チームに分かれて練習試合形式。
 吉村も杉浦に審判しろなんて余計な事は言わないで、いつも通り自己申告形の試合形式だ。
 
 「あ、そのままでいいです。練習したいんで」
 練習を終わって皆がネットを片付けようとしたので大海が声をかけた。
 「掃除もしとくからいいっす」
 そうか?と先輩達が帰っていく。
 「…何?個人練習?」
 吉村だけが寄ってきた。なにしろこいつは杉浦を知っている。
 「そう」
 「…一人で?」
 吉村は杉浦をちらっと見た。
 「一人で」 
 「……ふぅん。じゃ俺も見ていく」
 「帰れ」
 「いいよ。吉村は俺がセッターやってたって事知ってるんだろ?」
 杉浦がふっと笑った。
 「着替えるよ」
 杉浦が自分の荷物を開けた。
 体育館に残ったのは3人だけだった。
 
 

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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