ライオン
本当にマズイ!雪兎さんは隠しておかないといけないと思う。
「まず…雪兎さんは男性だし。いくら可愛くともね!」
「……可愛いは置いといて。…俺は獅王よりもずっと年上なのに…」
可愛いって…と雪兎さんがちょっとうろたえているけど、そういうのが可愛いんだけどな…と獅王は顔がにやけそうになる。
「今まで俺の相手で男はいなかったわけで、そこを知られると襲われるのがエスカレートしてしまう可能性が…、でもそこはまだ俺の事情があるし大丈夫ですけど。何しろ男で反応できるのは雪兎さん限定だしね!だからいいんですけど、その分俺の本気度が分かられちゃうわけで、そうすると雪兎さん本人に嫌がらせが向く事になるわけだ」
「…例えばどんな?」
「嫌味、暴言、当てこすり、どれも犯罪まではいかないけど、かなり…です。…多分。家も知られちゃったら家まで来るかも」
「……それは迷惑かも」
「何言っても聞く耳持たないんですよ。思い込みが激しいというか…」
はぁ、と獅王が大きな溜息を吐き出す。
「そんなに…?」
「ええ」
雪兎さんが頭を傾げて怪訝そうにしているのも分かる。
「……家まで来られるの迷惑なんだけど…」
「ですよね。でも全然人の事なんか考えない自分の都合だけで動くヤツなんです」
ああ、どう言ったらいいのだろう。
でも雪兎さんと離れたくないし…でも一緒にいたら絶対ここまでやってくる。人を尾行するなんて位平気でするヤツだ。
「聞く耳持つヤツだったら勿論雪兎さんの事ちゃんと紹介して言い聞かせるんだけど…なんというか…そうストーカーじみてるんですよ。かなりイっちゃってるストーカーみたいな…」
雪兎さんがそんなに?と顔を顰めた。
「ストーカーと違うのはわかってそれをやって楽しんでる部分もあるところ。だからタチワルイんです」
雪兎さんがうーん…と呻っている。
獅王も呻る。
「………物凄く不本意なんですけど…雪兎さんに迷惑かけられないし…俺…ヤツがいる間は家に戻ります…。こっちにずっといるなら考えるけど、一ヶ月だと言うし…でもつらい…」
「………」
雪兎さんが顔を俯けた。
「雪兎さん…本当に…知られたら迷惑かける事になると思う。…平気で雪兎さんの職場でもぶちまける事位するヤツなんです…」
…分かって、と獅王は椅子から立ち上がり向い側に座る雪兎の傍に膝をついて雪兎の膝に手をかけた。
「…職場までは…やめてほしい…」
「分かってます。させません。………でも俺と離れるのも…嫌?」
雪兎さんがそう思ってくれればいいのに…いいけど、せっかく雪兎さんが落ち着いてきたのが見えてくるようになったのに邪魔されるのが不本意だ。
でも雪兎さんの事を考えればヤツがいる間は離れてるのが一番いい。
「雪兎さん…俺だって…嫌ですよ。でも雪兎さんの生活まで脅かしそうなんて…そんな事もさせない…。一ヶ月だけ…。その間もうちの家族に協力してもらって絶対時間作るから。まるきり雪兎さんと離れるなんて俺出来ないですもん。雪兎さんが足りなくなっちゃう…」
「そんなの…俺のだって…」
雪兎さんが小さい声で足りない…と付け加えられれば獅王の心がぎゅっと鷲掴みにされてしまう。
「雪兎さん!」
「あ…」
せっかくこうやって雪兎さんがちゃんと言ってくれるようになったのに、なんで離れなきゃないのか!
でもマジで雪兎さんを危険な目に合わせる事はできないし、一ヶ月の我慢だ。
ぎゅっと雪兎さんを抱きしめれば雪兎さんが持っていた箸を落としてしまう。
「一ヶ月だけ!電話もするしメールもします。雪兎さんの事守らないといけないから…一ヶ月だけ」
果たして我慢出来るか獅王にも分からないけれど…。いやしないと!
「…寂しくなったら…?」
雪兎さんが心細げな顔で獅王を見てきた。
「いっぱい好きって電話で言う!雪兎さんが眠るまでずっと電話で伝える…」
「……ばか?」
そんな事いうけど雪兎さんの耳はほんのりとピンク色になっている。
「馬鹿じゃないです!…日本じゃなかったら…雪兎さんの職場とか関係ないなら離れないんだけど…」
「…職場は…本当に…」
「分かってます。雪兎さんは人と接する仕事だし…図書館であることない事ぶちまけられたりしたら…」
「……」
雪兎さんが小さく分かった、と答えた。
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