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ライオンとウサギ 86

ウサギ

 そんなにひどいヤツなのか…と雪兎も複雑になった。
 獅王と離れるのは嫌だが、確かに仕事場までこられて修羅場なんかになったら雪兎は仕事を辞めなくてはなくなる。
 それは避けたい。

 でも寂しくなる、嫌だ、とも思う。
 それにその相手が獅王に独占欲を見せるらしいのも雪兎には気にかかる所だ。獅王にその気がないと分かっていても好きな相手に言い寄られるのは気持ちのいい事ではないし嫉妬も覚える。

 だって獅王はそのおかげで雪兎から一ヶ月も離れると言うのだ。
 雪兎の迷惑にならないように、と獅王の話を聞いてもしそれが本当の事ならばとんでもない人物で、確かにマンションや職場まで現れて嫌がらせを受けるようならば獅王の言い分も分かる。
 頭では分かっていても…。

 「毎日好きの電話は必ずしますから…」
 獅王が雪兎を宥めるように言えばまるで雪兎が駄々を捏ねているみたいではないか。
 「別に…毎日じゃなくとも…」
 強がりを言ってしまう。

 「そこはダメ。だって毎日じゃないと雪兎さんはすぐ俺の事信用しなくなりそうですもん。…強がり言わないで?寂しいなら寂しいって言って?」
 そんなの寂しいに決まってる!電話だけなんて…。
 でも獅王が雪兎の事を考えてくれての事だという事も分かるから…。
 一ヶ月我慢するだけ…?本当に?…そうしたら獅王は戻ってくる…?
 どうしても不安が雪兎の心に広がっていく。

 もしその従兄弟だか又従兄弟だかに絆されたら雪兎は捨てられてしまう?
 「雪兎さん…また変な風に思っちゃってる?…ああ…やっぱり離れない方いいかな…」
 獅王が困ったように眉を下げた。
 「…一ヶ月…だけ…?」
 「勿論。そんなに我慢する事も俺はできないでしょうからその間も会えるようにどうにかします。林も知ってるし協力してもらうから」

 まるきり獅王と会えないわけじゃないのか、と雪兎もほっとする。
 「ウサギは寂しいと死んでしまいますからね。そんなに放っておく事なんてしないし俺もできないですからね」
 それなら…と雪兎も頷いた。
 不安はあるけれど、それでももし本当にこれを過ぎればさらに獅王を信じる事ができるかもしれないと思う。

 自分もいつまでも囚われてばかりではいけないと思うし強くありたいと思う。獅王に頼りすぎていた部分も多くあると思うし、自分が信じられなければこの先もずっと一緒になんて難しい事だとも思う。
 「…獅王を信じてる…」
 「ええ!雪兎さん…好きです。今日の分!そして明日の分も好き」
 獅王が嬉しそうにしながら軽いキスを繰り返してくるとくすぐったくて雪兎も笑った。

 「せっかくのご飯が…冷めちゃう」
 「俺は後でもいいけど?」
 「いやだ」
 こういう軽口だったらいくらでも強気の事が言えるのに肝心の事になるとどうしても言えなくなってしまうのが悪い癖だ。
 それでも獅王はちゃんと分かってくれようとするし雪兎を不安にさせないようにとしてくれるんだ。だから大丈夫。

 たった一ヶ月だ。
 今までだってずっと一人だったんだから…。ほんの一ヶ月ちょっと距離を置くだけなのだから。別れるわけでもないし、それが過ぎればまた一緒にいられるのだから、と必死に雪兎は自分に言い聞かせた。
 「雪兎さん…もし我慢出来なくなったらちゃんと言ってね?どうにかするから。一番波風立たないようにと、雪兎さんの負担にならないようにと思って離れるだけなんで、それが雪兎さんを無理させるというなら俺だって考えます」

 「……大丈夫。…獅王を信じるし…獅王が考えてくれてるのが分かるから…。でも…寂しくなったら…電話とか…いい…?」
 「あたりまえです!俺からもします!…というか何度もしちゃったらごめんね?だってきっと雪兎さんが足りなくて死にそうになるの俺ですから」
 本当だろうか?と雪兎がちろりと獅王を睨むと本当です、とまた軽いキスをはじめる。

 「ご飯だってば!」
 「食べていいですよ?俺は雪兎さんが食べたいんだけど…」
 「馬鹿な事言ってないでほら座れ」
 くいと獅王を手で押しのければ獅王が向いの席に戻っていく。いつも獅王はそんな事を言って雪兎を煽るくせに無理を推してくる事もないのが少々物足りない。

 今だって本当にご飯じゃなくたって別によかったのに…と頭の片隅で思ってしまってから雪兎は頭を横に振った。


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