ウサギ
「ただいま…」
帰っても部屋は暗いし寒い。
いつもは獅王がいるのに……。
たった一月かそこら一緒にいただけなのにもうここに獅王がいるのが当たり前の感覚になっていたらしい。
「…こんなに静かだっけ…?」
しんとした部屋が寂しくてすぐにテレビをつけた。
今日から獅王がいないから帰りにスーパーに寄ってお弁当を買ってきた。きっと何もする気がおきないな、と思ったのだがやはりだ。
寒々とした部屋にテレビの音だけが響く。暖房がついて部屋が暖かくなってくるけどやっぱり寒い気はする。
きっと満たされる心が今日は足りないから、だ。
いつもおかえりと獅王がいてくれるだけでぽっと心が温まってたのに今日はないから。
「…つまんない」
携帯を見ても大学が終わって帰りますのあと獅王からメールは入ってはいなかった。
メールもよこすって言ってたのに…。
…と思ったら電話がなった。
「もしもし…」
〝雪兎さんお帰りなさい…でいい?もう部屋着いてる?〟
「…ついてる」
獅王からの電話に雪兎の声が心なしか弾んでしまって慌てて自分を抑える。
〝今風呂に行かせたからちょっと話せるんだ。雪兎さんにお帰り!って言いたくて…今日は部屋で待ってられなかったから…ごめんね?〟
「……そんな事…別に」
寂しくていたのについ強がりを言ってしまうが獅王には丸分かりなのだろうか?
〝なるべく今の時間に風呂に行かせるようにして毎日お帰りって言えるように頑張りますね?〟
「べ、つに…そこまでしなくともいいよ」
〝俺が言いたいだけ。部屋で待ってられない分。雪兎さん…好きです〟
いつも直接言われるけど、電話で言われるのもたまにはいいかも、なんて一人で雪兎は顔を熱くした。
「俺も…好き、だ」
〝うん…でも寝る間際も電話できたらするし。もし出来なかった時のためにね!一応保険で〟
毎日の確認のように獅王が言ってくれる。
うん…今は離れて顔も見れてないけど確かに好きという気持ちはなくなってはないと雪兎も確認できた。
〝今日は?何も変わった事とかなかった?〟
「何もないよ?変わらず」
〝ごはんは?〟
「弁当買ってきた」
弁当か…と獅王が呟いているのが聞こえるのがくすぐったい。
そして…会いたいな、と思ってしまう。まだ一日も経っていないのに!
そんな風に思ってしまった事が獅王に聞こえてしまうんじゃないかと思って慌ててしまう。
〝…会いたいな…キスしたいし…抱きたい〟
まるで雪兎の心を読んだ様に獅王が呟いて雪兎は焦ってしまった。
「まだ一日も経ってないのに」
〝そうなんですけど~…〟
自分もそう思ったくせにそれを隠して雪兎は強がった。
〝こんな風に機会みて電話とかしますね?〟
「…ん」
ちゃんと獅王は雪兎の寂しい思いを分かって気にしているのだ。
「いいけど…獅王は…負担じゃない…か?」
〝そんなわけないでしょ。俺が雪兎さんの声聞きたいだけ〟
俺だって…と雪兎も思ったけれどやはり口には出来なかった。
〝あ、やば!風呂上がってきたみたい。また電話できたらしますね〟
「…うん。じゃ」
獅王から切れる電話に心が少しだけ温まってそして寂しくなる。
「さて、風呂入って弁当食お」
雪兎は独りを紛らわすように声を出して寝室に向かった。部屋のあちこちに獅王の物が色々と残っている。
昨日は今日から獅王が帰ってこなくなると、つい遅くまで抱かれて、朝も寝坊気味だったから朝獅王が出て行ってそのままの状態になっていた。
獅王の匂いさえもそこかしこに残っている。
一緒に住んでいるとやはり気配が…。でも別れたわけじゃなくてまた帰ってくるのだから、と雪兎は仕方ないな、と獅王のパジャマを抱えて洗面所に向かった。
洗濯なんかも獅王のものがある。空室だった部屋も獅王の物が置いてあるし、リビングだってどこだって獅王の物がそこかしこにあるのだ。
こんなに獅王が雪兎の中に入ってくるなんて付き合ってくださいの告白の時には思いもしなかった。
家族にも紹介とか。
それを考えれば一ヶ月なんてきっとすぐだ。
今日寝ればもう一日が終わった事になる。そしてきっと日数は減ってくだけで、その後また獅王は戻ってくるのだから。
※ 坂崎 若様宅で月星続きupされてます^^
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