ライオン
「レオ?午前中に講義サボってどこ行ってたの?」
「はぁ?」
まるで浮気の確認みたいなクライヴの言い草に獅王はげんなりしてしまう。
「いちいちお前に断る必要はないけど?」
午前の講義を終えて学食に向かう獅王にクライヴが合流し、獅王の腕にぶら下がるようにしてくっ付いてくる。
なんで腕にヤローをぶらさげなきゃないんだ?
雪兎さんだったら大歓迎だが雪兎さんは人目がある所では決してそんな事しないし…。
クライヴは獅王の事などおかまいなしに自分がしたい事を我慢するということもせずにそのまま行動にうつすのが常だ。
「……レオ、やっぱり彼女いるでしょう?」
「いない」
即答する獅王を疑わしげな目でクライヴが見ていた。
「でも大学内にはいなさそうなんだよね…。そういう視線がない。ポルシェの女の人の存在は聞いたけど、あれはサラ姉さんだろうし。…どこに隠してるの?全然電話も鳴らないけど…」
「だからいないって」
彼女は。
嘘はついてない。なにしろ雪兎さんは彼氏だ。
「林は知らないの?」
「いないと思うけど?聞いてないし、俺はレオの彼女なんか興味もない」
一緒にいた林にクライヴが確認すると林も援護してくれる。
…が、じとりとクライヴが獅王を林を見比べている。
「怪しいんだよね。なんとなく…」
お願いだからおとなしくしとけ!と獅王は言いたくなる。
「いないものはいない」
「じゃ俺と付き合う?」
「無理。嫌」
それも即答だ。当然だが。
「どうして?昔はお人形さんみたいに綺麗だねって言ってくれたのに!」
「女の子だと思ってたからだ!しかもいくつの時だと思ってる!?たった四、五歳の頃の話だ!」
「…そうだけど!それから俺はずっと獅王一筋なのに」
「嘘をつけ」
「だって体は別だもーん」
散々男と付き合って遊んでいるのは獅王だって知っている事だ。新しい彼氏が出来るたびに必ずクライヴは獅王に報告してくるのだから。
それなら獅王の事など放っておいてくれればいいのにこうして絡んでくるんだから性質が悪い。
「ねぇ!今日の夜はどこかお店に連れてってよ?」
「嫌だ」
なんで雪兎さんとも夜に出かけた事ないのにクライヴを!
「じゃあ仕方ないな…コンパに誘われたんだけどついてきて」
「お前一人で行けばいいだろう」
そうしたら俺は雪兎さんの所に行く。
「レオも連れてくって言っちゃったもん!俺に恥じかかせないでよ」
「知るか。俺は元々コンパとかそんなのに滅多に行かない」
「じゃあ俺を店に…」
「行かない」
「レオ?どっちか二つに一つ」
クライヴが悪魔の笑みを浮かべている。
こうなるとクライヴはどんな手段を使ってでも獅王や家に迷惑も顧みず絡んでくる。例えば酔ったふりで警察の世話になるとかは平気で仕掛けてくるはず。
隣で林がご愁傷様と言わんばかりの視線で獅王を見ていた。
「……コンパ」
二人きりよりましだろう。
「了解~」
ご機嫌な声でクライヴが答えれば獅王は大きな溜息を吐き出した。
折角雪兎さんを少し補充して気分は上向きだったのにクライヴのおかげで急降下だ。
そうやって言う事を聞くから増長するのも分かっているが、これが一番穏便なのも身にしみて分かっている。今までかけられた迷惑は数知れず、自殺まがいの騒ぎもあった位だ。そんな事に巻き込まれるくらいならコンパに行く位は我慢の範疇だろう。
こんな迷惑なヤツをイギリスから出すな、とクライヴの親に言いたいが、言ったってクライヴが言う事を聞くはずもない。
日本で騒ぎを起こされるのは正直やめてほしい。獅王の親からもクライヴの親からも謝られながら頼まれている身で獅王は我慢するしかない。
本当に迷惑以外の何者でもない。
「…早く帰れ」
「何か言った?」
「別に」
確実に聞こえていたはずなのにクライヴは平然と受け流す。まったくもって自分に都合の悪い事は聞こえない耳だ。
いつか目を覚ます時が来るのだろうか?
今までだったら獅王もここまで邪険に思わないのだが今回は違う。そしてこの先も。
雪兎さんをイギリスに連れて行ってちゃんと紹介してと思っていたのに先駆けして来られて計画は狂ってしまった。
イギリス国内でなら多少の迷惑は全部クライヴの家にかかるけど、日本ではそうはいかない。
まったく、と獅王は頭を抱えるしかなかった。
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