ライオン
雪兎さんはどこにいるんだろう?
クライヴもどうせ酔っ払うなら泥酔して寝てしまう位に酔っ払ってしまえばいいのに、そうしたら放置して雪兎さんに会いに行くのに中途半端に酔って獅王を離さないクライヴに苛立ってくる。
「俺もうそろそろ帰るわ」
苛立ちがどうしても治まらなくなって獅王は立ち上がった。
「あん!レオ!待ってよ!置いてくなってば。レオが帰るって言うから俺も帰るね!じゃあねぇ~~!」
慌ててクライヴがコンパに来てた人達に挨拶しながら獅王の腕にくっ付いてきて店を出て行く。
「いい加減にしろよ」
「何?急にどうしたの?」
にやにやとクライヴが笑って獅王の顔を下から覗きこんでいる。生粋の外国人であるはずのクライブの方が獅王よりも身長もなく獅王を見上げている。獅王の方がよほど外国の血を受け継いだような恵まれた体格をしていた。
「やっぱりレオ変だ」
「別に!」
昼間、中途半端に雪兎さんを感じてしまったからかどうにも余計に雪兎さん不足に拍車がかかってる。
おまけに雪兎さんも飲みに出かけてるらしいし、お酒に弱い雪兎さんの事が心配で仕方ない。その相手が本当にただの友人ならいい。…でももし、例の雪兎さんの中に今でも根強く残っている元付き合っていた相手だったら…?
雪兎さんが今までずっと気にしてきた相手だ。寝た事もあったはず…というか雪兎さんの初めての相手…?そんな特別な人の前で色っぽい雪兎さんなんか見せたらついふらっと、とか…。雪兎さんも…ずっとずっとえっちもオアズケだったし…。
いやいや、と獅王は頭を横に振った。
そんな事まで考えるのはあまりにも飛躍しすぎているし、雪兎さんを全然信用してないみたいじゃないか!
自分が悪いのに…。
横にいるクライヴを恨んでしまう。
やっぱりクライヴなんか放って雪兎さんの所に行ってしまおうか?
「……レオ?」
「…ああ?」
怒った口調で獅王が返事すればクライヴがくすりと笑った。
「やっぱりいるでしょ?隠してるんだ?」
「何を?」
しらばっくれるに限る。
「彼女はいないって言ったのに嘘つくんだ?」
「嘘はつかない」
雪兎さんは彼女じゃないからな!
大事な相手だ。
「………」
クライヴが獅王の腕を離し顔を顰め腕組みしながら片手で口元を押さえ考え込んでいる。
あ、やばい…相手が男だって気付くか?
歩いていた足を止めてクライヴが考え込んでいるがその顔はさっきまでの酔った顔ではなく真面目だ。
…こいつ酔ったフリしてたのか?平然とそれ位はするヤツだ。
「…レオ…嘘つかない…って小さい頃から約束してるよね?」
「…してる」
「聞き方変える。……じゃあ付き合ってる人は?」
「いる」
小さい頃に色々なことがあったクライヴは人不信で、絶対に獅王はクライヴに嘘はつかないと約束をしていた。
「……彼女はいなくて…付き合ってる相手はいる…?」
ゆっくりとクライヴの顔が獅王を見た。
「…それって相手…まさか男って事…?…獅王…違うって言ってたのに…?」
「ああ、ごめん。そこは訂正するけど、でもだからといって誰でもいいわけじゃないから。その人だけが特別って事だ。今だってその人以外の男は無理。だから男だったら自分でもいいだろなんて事言うな。あくまで特別な人だからだ。…もうその人以外の誰とも付き合うつもりはないし、ずっと一緒にいるつもりだ」
クライヴが目を見開いて碧い瞳で獅王を凝視していた。
「…嘘だろ」
「嘘は言わないって言った」
「言ったけど!なんで今更!?」
「……人通りの多いこんな所で騒ぐな」
何しろ居酒屋や夜の店が立ち並んでいる区域だ。そこに外人風と外人の男同士が日本語で口喧嘩はかなり目立ちすぎる。
勘弁してくれ、と思うのが正直な感想だ。
かえって英語を使ったほうが目立たないはず。
「今ここでそんな話はしなくていいだろう?帰るぞ」
「…隠してたんだ?」
「ああ、勿論。今までにお前がしてきた事を思えば当然だ」
「ひどい」
「ひどい~?どの口がそれを言う?散々引っ掻き回して来たくせに」
「そうだけど!…それは今までレオだって本気じゃなかったし!」
「そりゃそうだ。けどだからといってしていい事じゃないだろう!?」
う…とクライヴが声を詰まらせる。
「レオが本気だっていうなら…そんな事しない」
「………それこそ嘘だね。俺はお前に嘘言わないけど、お前は平然と嘘つくし?」
クライヴが碧い目で獅王を睨んでいた。まったくもって反省なんかしてない目に獅王は溜息を吐き出した。
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