ライオン
「しつこい!」
「だって!」
獅王の腕にぎっしりとしがみついたままクライヴがしつこく獅王に付き合っている相手の事を聞きだそうと躍起になっていた。
「大学にはいないよね!そんな相手見た事ないし!」
そしてはっとした顔をしてクライヴが恐る恐る獅王を見た。
「まさか…林…?」
「キモい事言うなっ!!!」
「…あ。よかった」
よりによって相手が林とか!天地がひっくり返っても絶対ない事を言われれば獅王に怖気が走る。
「じゃ誰?」
「お前に教えるわけないだろ」
「…へぇ?…自信ないんだ?」
「違う。相手に迷惑かけたくないだけだ。分かったなら離せ」
するりと獅王は腕に絡んでいたクライヴの体から逃れるように離れた。
「あん!レオ!」
嫌だとなおもクライヴが食いついてこようとしたが獅王はすたすたと歩いていく。
「置いてくなよっ」
クライヴが追いかけてきて獅王は溜息を吐きながら夜の繁華街を目立つクライヴを連れながら歩く。
酔っ払いの人達とすれ違うと酔っ払っていても視線で追われる。男も女にもだ。
獅王だけでも背も高いし外国人顔で目立つのは自分でも分かっているが、そこに金髪のクライヴがいればさらに目立つのは当たり前で向けられる視線がウザイと思いながらも歩いているとちょうど獅王の視線の先にある居酒屋から出てきた二人組みに獅王は視線が釘付けになった。
雪兎さん!?
思わず獅王は足を止めた。
「レオ?どうかした?」
足を止めた獅王の腕にクライヴの手がまた絡んで来たがそんな事よりも雪兎さんの肩に手を触れ親密そうに雪兎さんに顔を近づけて話す男に獅王はぶちんと何かが切れた。
「レオ?」
クライヴの腕を乱暴に振り払い獅王が雪兎目がけて一直線に足を向けた。
「あれ?しお…う?」
雪兎さんが獅王の顔を見つけて不思議そうに頭をかしげながらも仄かな笑みを浮べ、嬉しそうな表情を見ればこの男とは何でもない、と頭では理解する。
だが、雪兎さんはそうでもこの雪兎さんの横にいる男は違う。
近づいていく獅王の存在に雪兎さんの傍に立つ男が気付くと雪兎さんを守るように雪兎さんの肩を掴み男は雪兎さんを後ろに隠した。
…隠した?なぜ?
雪兎さんを守るように、まるで男は自分が雪兎さんを守るのが当然の存在で、獅王の方が付け狙う相手の様に睨んで来た。
間男はお前の方だ!
「市原?」
雪兎さんがどうかしたのか?と獅王の視界から隠すようにされて不思議そうにしている顔が見えた。
「…レオ?」
足早に雪兎さんに近づく獅王の後ろをクライヴも追いかけて来ているのが分かったがもうどうでもいい。
なんで会いたいのに我慢しなきゃないのか。
なんで雪兎さんを守るようにしているのが他の男なのか。
「なんだ!?キミは!?」
絡んでくる若い男とでも思ったのか、雪兎さんの連れが声を荒げる。
「あ、市原…違う。俺の…知り合いだ」
「穂波の…?」
獅王を目の前に雪兎さんと男の会話が聞こえてくる。
「………………知り合い?」
俺は知り合いでじゃあその男は何です!?
雪兎さんの説明にもカチンときた。
「おいっ」
雪兎さんに獅王が近づくのを阻止するように立った男を追い払うかのように退けると獅王は雪兎を抱きしめた。
「し、し、獅王っ!?…な、な、何!?お…お前酔ってるのか?」
「酔ってるわけないでしょ」
雪兎さんの耳元で話す。
「おい、お前なんだ!?」
ぐいと雪兎さんの連れが獅王の肩を掴んで雪兎さんから離そうとしている。
「レオ!何してるのっ」
そこにクライヴの悲鳴のような声が聞こえてきてげんなりする。
「……雪兎さん…我慢するの…無理みたい」
こっそり雪兎さんの耳元に囁く。
「い…や……あ、の……その…まずちょっと離して…」
周囲の目の視線が突き刺さっているのは分かった。
酔っ払い?ホモ?
…こそこそと言われているのも分かる。
「おい!」
「レオ!」
慌てている雪兎さんの連れとクライヴでさらに目立つ事この上ない。
「獅王…」
困ったような雪兎さんの声に仕方なく抱きしめていた腕を解いたがそのまま雪兎さんの肩に手を回した。
そして獅王の肩を掴んでいた雪兎さんの連れをぎりっと睨み返す。
「この人は俺のもんですけど、何か?」
「獅王」
本当にただの友人だったらこれは雪兎さんには迷惑でしかないだろうけど、この男の獅王を睨む目がただの友人じゃないと訴えていた。
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