ライオン
「余裕なさすぎ…」
情けねぇ…と言いながらこてんと獅王が雪兎の上に覆いかぶさった。
「それ言ったら…俺だって」
雪兎さんも恥かしそうにして小さく獅王の耳元に呟く。
ほんっとにこういうとこが可愛くて仕方ない!
セックスの時はエロくて積極的で自分から足絡めたり腰振ったりするくせにちょっとの事で恥かしがるとか!
こういうギャップにやられるんだ、と獅王は雪兎さんにキスを何度も繰り返す。
目元のホクロもエロいのにでも普段は清楚とか。おとなしそうで従順そうなのに結構口悪いとか。
そういうとこも好きで…困った事に嫌な所が見当たらない。
いや、困りはしないけど!
「雪兎さん…好き…」
「……今日は言いすぎだと思う…けど…?」
「だって…ちゃんと確かめておかないと」
なにしろ過去の男の出現だ。アイツは雪兎さんの過去の中でも元凶のヤツだし。
キスも繰り返し繰り返し何度もしてしまう。勿論この二週間足りなかったというのもあるがそれだけじゃない。
「……獅王だけ…でいい…今日…よく分かった」
「……あの男?」
獅王の声が低くなってしまう。
「うん……ぁっ」
獅王が雪兎さんの中から抜けると雪兎さんが声を上げながらふるっと体を震わせて顔を仄かに赤くしてる。
だから!どうして入れる時はカモーンなのに出る時はこんなに恥らうのか!そしてまたスイッチが入りそうになるけど雪兎さんは明日も仕事があるしここは我慢だ。
「お風呂入れてくるからちょっと待ってて!」
獅王はそそくさと雪兎さんから離れて裸のままベッドから降りて風呂をセットしてすぐに寝室に戻る。
そして風呂ができるまでまたじゃれるように雪兎さんに触れてキスを繰り返す。
くすぐったそうにしてるけど雪兎さんも満足そうで獅王も顔がどうしても緩んでしまう。
「あ~…好き。なんでかなぁ…キスも止まりそうにない…」
「……別にいいけど…」
小さく雪兎さんが目元を赤く染めながらそんな事言うし!
「俺だって…ずっと寂しかったし…足りなかったし…だから…」
情事の後のしどけない格好でそんな事言われたらまた下半身にくるっていうのに!
「…雪兎さん…もっとって俺を煽ってるの?」
「ち、ちがっ!」
かっとさらに顔を赤らめるのがまた可愛くて意地悪も言いたくなってしまうけど、今は置いといて過去の男の事が先だ。
「今日…あの男……雪兎さんの事まだ好きでしょ!?」
「……え?」
雪兎さんの目がするりと獅王の視線から外れでうろうろと彷徨った。
…やっぱり。
「言われたんですか?」
「な、何…を?」
「好きだって」
「………」
「アイツでしょ?高校の時付き合ってて…フェードアウトしたの?それで?まだ雪兎さんの事が忘れられないとか、好きだとか言われたの?」
「ど、ど…どうして…?」
分かるんだ…?と雪兎さんがうろたえてる。
「分かりますよ。アイツの俺を見る目がね。挑戦的だったし、雪兎さんを我が物のように隠すし!俺のなのに!」
「………獅王…子供みたいだぞ…?」
雪兎さんの言葉に思わずむぅっと口を引き結んだ。
「雪兎さんに比べたら子供ですけど!未成年だし!」
「……怒ったのか?」
「怒ってません」
情けないだけ!
何しろ獅王はまだ学生だし、どうしたって年の差が埋まるはずはない。雪兎さんと一緒にいたあの男は見るからにリーマンで雪兎さんと並んでいても違和感もないし、チャラく見える自分とではしっくりきてないのは良く分かっている。
「どっか外国の大学に留学するかな…スキップ取って早く卒業して就職して…」
「……また離れるのか…?」
雪兎さんが体を半身起こして眉根を寄せた。
「う~…そんな顔しないでくださいよ…」
「……離れるの…いやだ」
「しません」
半分真面目に考えたけど雪兎さんにそんな事言われたら即答してしまう。
「……好きだって…言われた…。当時なんか一言もなかったのに…今更」
雪兎さんが苦笑を浮べた。
「それで…?雪兎さんは…?」
「俺?」
「嬉しかった?」
静かに雪兎さんが首を横に振った。
「獅王に会いたくなった」
ああ!もう!
獅王はぐっと雪兎を抱きしめた。
「俺…気が気じゃなくて…同級生の友人と、ってメール見てもうずっとイライラしてて…自分でも分からなかったけど静かにキレてたらしいです」
雪兎さんがくくっと笑った。
「そうなんだ?」
「はい!お願い…俺だけにして?」
「獅王だけだと言ってるのに!」
どれだけ信用ないんだ、と雪兎さんが顔を真っ赤にするけどその顔が嬉しそうだった。
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