ライオン
「ただいま」
「おかえり~!ユキトくん!待ってたのよ!入って入って!」
「お…お邪魔します…」
「やだ~…ただいまでいいのよ?レオ、お部屋に案内してやってね」
雪兎さんが仄かに顔を緊張で赤らめながらおずおずと挨拶すると母親が軽く雪兎にそんな事を言って、雪兎さんが困った様におろおろしてるのに獅王は顔が笑ってしまう。
困っているけど嫌なのではないのが見える。
「雪兎さん、こっち。荷物や着替えは適当に俺運んで来たけど…見て?」
「あ…ごめん」
「全然?姉貴から車借りたしね!足りないのあったら俺学校の帰りにでもまた寄ってくるから言って?一応部屋は俺の隣。一緒でもよかったんだけど、俺のベッド狭いから…今度せめてセミダブルのに変えようかな…雪兎さんが泊まるなら…」
「い、いいよ…そんな…」
雪兎さんは落ち着かなさそうにしながら獅王の後ろをついて階段をついてきた。
びくびくしてる臆病ウサギになってる…。
「あ!アンタ…本当に来たんだ?」
階段を上ったところで丁度クライヴが使っている部屋から出てきた。
「クライヴ・ルーサー・アリンガムです」
にこやかにクライヴが雪兎さんに外面のいい笑顔を向けながら手を差し出してきた。
「あ…穂波…雪兎です」
雪兎さんもそろりと手を出しクライヴと握手を交わすとその雪兎さんの手をクライヴがぐいと引っ張った。
「あんた…レオの何?」
雪兎さんの顔の前に顔面をくっ付けるようにして雪兎さんを睨みつけている。
「クライヴ…」
はぁ、と獅王はクライヴの手を離し雪兎さんを背中に隠した。
「言っただろう?俺の大事な特別な人。伴侶。いいか?雪兎さんに何かしたら俺はお前を許さないからな?今までは何も言ってこなかったけど雪兎さんは別だ。雪兎さんの生活を脅かすような事をしたらお前の事は一生許さない」
「レオっ」
「これは本気だ」
今まではクライヴに甘くしていたけれど雪兎さんの事は別だ。
「ね、雪兎さん」
そっと雪兎さんの黒い頭を抱き寄せてキスすれば雪兎さんが首を竦ませかっと耳まで赤くしている。人前でこういうことされるのが雪兎さんは慣れていないのですぐに反応してしまうのがまた可愛い。
横目でクライヴを見てみればぴきりと片眉を跳ね上げている。
「じゃあ昨日そいつと一緒にいた男は!?」
「あれは過去の事だ」
獅王が言い切る。そこを突かれれば獅王だって面白いわけでもなくて声は不機嫌になってしまう。この野朗と獅王はクライヴを睨んだ。
「今は俺だけ。ね?」
「…勿論」
雪兎さんに促すように確認すれば雪兎さんがこくりと頷き小さい声で同意して獅王は満足する。
「なんで…今更男相手に…」
わなわなとクライヴが手を震わせている。
「今更とかそういう問題じゃないからだ。雪兎さんが雪兎さんで俺が欲しいと思える相手だからだ。たった一人の人だから」
「獅王…」
「獅王!?レオ!名前で呼ばせてるの!?」
「そりゃあね。好きな人にはちゃんと名前で呼んで欲しいし」
家族でさえも皆レオ呼びでどこか獅王と呼ばれるのには抵抗があったのに雪兎さんの口から聞こえれば自然に聞こえるんだから不思議だ。
その雪兎さんはきょとんとして獅王を見ていた。
獅王という名前にはずっと違和感を持っていた。それが雪兎さんに呼ばれた時はすんなりと獅王の耳に馴染んだのだ。
今思えばきっと雪兎さんがユキウサギさんだからだろうけど…。
獅王は雪兎さんを見てくすりと笑ってしまった。
「何笑ってる?」
「いいえ?」
だって…名前がユキウサギって…、と思ったらますます雪兎さんを見て笑ってしまう。何故獅王が笑っているのか雪兎さんは分かっているらしく少しだけ口を尖らせ面白くなさそうな表情をつくったが、それが可愛いすぎるんだけどな…と獅王は口元を緩めながら素早く雪兎さんの唇にキスした。
「獅王!?」
人前で!…とでも思っているのか雪兎さんが真っ赤になるのがまた可愛い。
男しか好きにならないらしい雪兎さんで自分から積極的でもあるくせに人前に抵抗があって決して公に行動しない雪兎さんは獅王の行動に慌て、そして動揺して顔を真っ赤にするんだ。
二人きりの時は妖しい位に官能的に獅王を誘うのに。
ホント可愛い、ともう一度キスしてから雪兎さんの肩をぐいと掴んでクライヴから離れ部屋に案内した。
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