ウサギ
「あんまり…その刺激しない方…いいんじゃ…?」
獅王の部屋とその隣の一応雪兎用の部屋を案内され、部屋に入り雪兎が小さく言った。
「反対ですよ?見せ付けてやらないと。遠慮ってものを知りませんから、間に一ミリも入る隙間がない事を教えてやらないとね。今までは全然…ホント俺も悪いんだと思いますけど…別に邪魔されても気にもしなかったし。……でも、雪兎さんは別」
「……名前、も…?」
最初に名前を呼ぶ人がいないって獅王は言っていたが本当に?
「雪兎さんだけですけど?〝獅王〟って呼ぶのはね」
「ご家族も…レオだよな?」
「そう。ずっとアカンボの頃からレオ。獅王はね…その漢字と意味知って余計に恥ずかしいというかなんか違和感あるような気がして呼ばれるのが嫌で…」
「ユキウサギよりいいだろうが」
自分も名前が嫌だった雪兎が言うと獅王がぷっと笑った。
「…雪兎さんは可愛い」
「……」
名前の事だろうか?とちろりと獅王を睨むとし王が肩を竦めながらくくっと笑って雪兎の肩をぎゅっと抱き寄せた。
「俺のウサギさんだから…だからすんなり雪兎さんには名前呼ばれても平気だったのかな。平気というか雪兎さんには獅王って呼んで欲しくて…すとんと入ってくる」
そんな事言われればやっぱり嬉しい。だって家族でさえレオなのに…。
「俺も…自分の名前嫌いだったけど…獅王に言われる分に嫌はない…」
あだ名もずっとウサギとかそんな事言われてたりして本当に嫌だったのに不思議と獅王にだったらいいと思えるのだから不思議だ。
「勝手に荷物持ってきたけど足りないものないか見てみて?」
「着替えさえあればとりあえずは大丈夫だと思うけど…」
「髭剃りなんかも雪兎さんはいりませんもんね?」
雪兎のつるりとした口元を獅王が手で撫でながらくすりと笑う。
「すべすべ」
「どうせね…」
不思議だ…。
よその家なのに獅王が傍にいるからだろうか?全然平気そうだ。獅王のお母さんの態度もにこにこだからだろうか?どうしてそんな…と思うけれど、おおらかな獅王を見れば納得する部分があるのも確かだ。
雪兎がスーツを脱いでカジュアルな服に着替え終わるとそのまま階下に獅王と向かう。
「ウサギさんっ!」
どん、と雪兎にぶつかってきた小さな物体を受け止めた。
「類くん…」
「こら!ルイ!ウサギさんは俺のだって言っただろ!?」
「だって!ウサギさんは綺麗で可愛い…」
「おい、こら」
獅王が小さな子に睨みを利かせていて雪兎はそれを笑いながら類くんを抱き上げた。
「こんばんは」
「こんばんは!ウサギさんだぁ…」
目線が同じになると類くんは小さな手で雪兎の頬をぎゅっと掴み、ちゅっと可愛い顔で雪兎にキスしてきた。
「ふざけるな!」
雪兎がびっくりしてると獅王がべりっと類くんを取り上げずかずかとリビングに向かった。
「姉貴!類ちゃんと見てろよな!俺の雪兎さんにキスしやがった!」
あはは!とお姉さんが豪快に笑っている。
……いいのか?しかし…幼稚園児にキス…。
「いらっしゃい!雪兎くん」
「あ、お邪魔してます…」
獅王のお父さんとお兄さんはいないみたいだ。
「雪兎くんにプレゼントあるんだ!」
はい、とお姉さんに紙袋を渡され、獅王を見た。
「もらっとけば?ラサ-ルイの服だろ?」
「そ!雪兎くんに是非!着て欲しくて!今日来るって聞いて持ってきた!」
「え…でも…」
ファッションに疎い雪兎でも聞いた事のあるブランド物で逡巡するがおねえさんはがさがさと紙袋を開けながら雪兎に服を当てながら説明を始めた。
トップスがこれのときはボトムはこれ、サイズは合ってるはずだけど、こっち着た時はこれね、とパンパンに紙袋に入っていた服を次々出してくる。
「え…え…?」
類くんも確かに可愛い服を着ていると思ったけど…。
「あの…でも…なんか…」
どうも…男の洋服というより…女の子が着てもおかしくないような感じが…女の子っぽい、のではないのに…ボーイッシュというか…。
どうしよう…?と獅王に目で助けを求めるが獅王は絶対似合いますって、と安請け合いしてる。
獅王もよくかっこいい服を着てるけどどうも雪兎にと持ってきた物と系統が違う。獅王のはカッコイイのが多いのに雪兎のは可愛いのが多いような…?
次々とお姉さんが雪兎を立たせたままで服を宛てああでもないこうでもないと吟味しているのに雪兎は抵抗も出来ずになすがままだった。
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