ウサギ
「さ!寂しんぼウサギさん一緒風呂いきましょ?」
「…は?」
何を言ってる?よそんち、というか獅王の家で獅王の家族もいるのに一緒に風呂とか。
「別にいいでしょ?さすがに風呂場でセックスまでしませんし」
「セ…!」
「ほら着替え持って行きますよ?」
ちょっと待て、というのに獅王はぐいぐいと雪兎の手を繋いで連れて行かれる。
「雪兎さんと風呂行ってくる」
「どうぞ~」
階下にいってお母さんに獅王が声をかけてるけど…いいのか!?
「ちょ…」
いい、と断ろうとするのに獅王は無視して脱衣所で雪兎を剥いていく。
「平気平気」
どうにも獅王と感覚が違うらしい…。獅王とというか、獅王の家とだろうか…?キスも平気そうだし…。外国人の血が入っている人達だから平気なのか?
「そういえば…モデルのバイトは?行ってた?」
「一応ね。色々撮影とか。雪兎さんが土日も仕事だからよかった!もし雪兎さんが休みだったら絶対行かないですもん」
久しぶりのゆっくりした時間で獅王と向き合ってのんびり話しが出来るのが嬉しい。会えなくて電話だけの時はこんな話をする暇もなかったのだ。人の家の風呂場でこんな状態は恥ずかしい気もするが、獅王がずっと足りなかった分もあって…やはりちょっとこそばゆいが嬉しくもあるのが本心だった。
「どうしよう…?なんかじわじわとする…」
「うん?何が?」
獅王の家の風呂は檜作りの風呂で大きめだった。外国人が泊まるからわざと純和風にでもしているのだろうか?家自体は洋館だし雪兎用の部屋と案内された部屋もホテルのようなゲストルームらしかったが。
獅王の家族が雪兎を違和感なく中に受け入れくれているのが肌で感じられた。視線や態度に何一つ雪兎を怪訝そうに、そして卑下する事もない。
今まで付き合った男でさえもどうせ男とだし、という態度があったヤツもいて、雪兎自身もそう思う所があったのに、獅王に家だと獅王を好きでいるのがいいんだ、という受け止めてもらえてるのが分かる。
湯船に入ってきた獅王が雪兎を後ろから抱きしめて項にキスする。
「…風呂広いんだからくっつかなくとも」
雪兎のマンションでなら狭いからくっ付くのも分かるけど。
「だって雪兎さん足りないし…ああ…でもウチの風呂に雪兎さんってばチョーぴったりですね!檜風呂に和美人。濡れた髪とか上気した肌とか色気がパないし…写真撮りたい…」
「バカ?」
「バカじゃないです」
雪兎が照れくさいだけだ。
誰が見たって視線をひく獅王にそんな事を言われれば嬉しく思う。クライヴを見た後では余計にだ。
金髪碧眼の美青年で、彼と獅王が一緒にいるとそこだけが別世界のような感じなのに獅王は自分なんかを好きだと言ってくれる。
自分は普通の日本人顔だと思うのに獅王の目には一体どう見えるのだろう?だれが見たって雪兎とクライヴを比べたらクライヴに目を奪われるはずだと思うのに…。
でも獅王はこうして雪兎を捕まえていてくれる。
今までに誰にも与えられなかった安心感を獅王に感じていた。年はずっと下なのに雪兎の方が獅王に庇護されていると思う。
やはりウサギだからなのだろうか?獅王は百獣の王だから…?
ぷっと自分で笑ってしまった。
最初見かけていた時なんかは本当にライオンの鬣の様に薄い茶色の髪を立ててたけど今は下ろしている事がほとんどだ。そっと雪兎は手を伸ばして獅王の今は濡れている髪に触れた。
「ん?」
「いや…なんでもないけど…」
「甘えたいの?」
「…そうかも…。だって獅王ずっといなかったし…」
「うん…ごめんね?」
クライブが碧い目で雪兎を睨んでいた。明るい碧い眼のはずなのに雪兎を睨む目は仄暗かった。でも雪兎だって獅王を離せない。ずっと愛情なんて信じられないでいた雪兎を信じてみようかなんて変えてくれたのが獅王なんだ。
「雪兎さん…好き。今日の分。明日も好き」
「うん…。俺も…獅王…好き、だ」
獅王みたいにするっと言葉にして言えなくていつも照れくさくなってしまう。こんなストレートに言ってくれるのも獅王に外国の血が入っているからなのだろうか…?
でもきっと雪兎にはそれ位でいいのかもしれない。言葉がなければついもう心変わりしたんじゃないかと疑ってしまうのだ。
そして自分から距離を置いてしまう。自己防衛だ。…自分が傷つかないように。そして別れを切り出されてほらね?と思うのがいつもだった。
獅王は違う…。
そこに安心し獅王に体を寄りかけると獅王の手は雪兎を抱きとめてくれる。すぐに伸ばされる腕に安心して雪兎はうっすらと笑みを浮べた。
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