ライオン
雪兎さんはどうやら安定したらしい。それに獅王自身も。
どうにも焦燥感に駆られてかなり無理したと思う。
昨日は我慢するって言ってたのに押しかけて今日は無理に実家にまで連れて来たのだ。
でも雪兎さんはどれも嫌ではないらしくそこだけは安堵してしまう。
色々自分の我儘を通しているのは分かっているけれど…それでも雪兎さんは信じようとしてくれているし、そうしたいと思っているという事が獅王にだって分かる。
だから余計に愛しくて、可愛いと離せなくなる。
あんなに頑なだったのに…。
あの日、思い切って告白してみてよかった!
男から告白なんて相手にされないだろうと思っていたのに…。それにしてもあの雪兎さんの過去のトラウマの男が出てくる前でよかった!
もし獅王の方が後だったらどうなっていたか分からない。
「……なんだ?じっと見て」
風呂を上がって脱衣所で着替える雪兎さんをじっと見つめてしまっていた。
白い肌が風呂で温まって上気して、黒い髪が濡れて黒子が色っぽく獅王の目に映る。
このまま無茶苦茶にしたい欲求が出るけれど、ぐだぐだに甘やかしたくもある。
「……髪、乾かしてあげる」
洗面所にあるドライヤーに手を伸ばし雪兎さんの髪を乾かしてやる。
「あのな…」
雪兎さんはおとなしく獅王のされるがままだ。ずっと愛情がどうやら足りなかったらしい雪兎さんは擽ったそうにしながらもこういう事をされるのは嫌ではないらしいのはもう知っている。
「こういうの…なんでもないちょっとの…事なんだけど…されるの…好き」
小さい声で雪兎さんが恥かしそうにほっぺをピンクに染めながらこういう事言うんだから下半身にずきゅんと響いてきてしまう。
「…もっと言って?…俺がこんな事するの雪兎さんにだけだから」
「……ん」
クソ可愛い!
これで6こも年上ってない!
きっと雪兎さんは大人になりきれてない部分があるからこんなに可愛いんだろう。
「はい。できあがり。先に行ってて?俺も髪乾かしてから行くから」
「……俺、してやる?」
「いや、いいです。これ以上可愛い事言われたらここで押し倒したくなっちゃうし!体冷えちゃうからリビングにでも行ってて?すぐ行きますから」
「……」
分かった、と雪兎さんは押し倒されちゃ堪らないと言わんばかりにそそくさと洗面所から出て行ってしまって獅王は苦笑してしまう。
やることがいちいち可愛いのにベッドではエロなんだからまた堪らないなんて分かっているのかいないのか。
しかしクライヴがおとなしいな…と獅王は頭を捻った。
ずっと獅王と雪兎さんをじっとりした視線で見てはいたけれど、獅王に絡まってくるわけでもないし、雪兎さんに突っかかっても来ないのも不気味だ。
はしゃいでる姉貴と母親のオモチャにされていた雪兎さんをじっと見て、…その後クライヴも同じようにオモチャにされてたけど。
母親と姉貴、類まで雪兎さんの事を受け入れている事からおとなしくしてるのか?
それとも獅王が本気だと悟ったのか?
…それで大人しくなってくれればいいのだが。
なにしろ獅王も今まで本気になった事もなかったし、それに獅王だって同性相手に本気になるなんて自分でも考えた事もなかったのだ。
ずっとクライヴは獅王に固執していたがどうしたって獅王は同性相手になど考えられるはずもなく、だったのに。
雪兎さんだけが特別なんだ。なにしろ獅王の獲物なのだから。
離してなんかやるもんか。
あの、雪兎さんが高校生の時の相手には色々と複雑な思いが今も渦巻いている。
あの場で雪兎さんを庇うようにしたのにはムカつき、雪兎さんを過去に傷つけられたのには怒りを覚え、でも雪兎さんが今こうして獅王にだけ甘えてくれているのはそのことがあったからだ。
家族にも甘えられず、付き合う相手にも甘えられず、そしてずっと自分を作ってきたから…あんな可愛い生き物が出来上がったんだ。
「しまりねぇ顔…」
洗面所の鏡に映った自分の顔を見て苦笑した。
ずっと自分だけが傷ついてそれに気付かないふりをして自分を囲って心の中でぷるぷる震えながら生きて来たんだと思う。
あんなに寂しんぼで甘えんぼなのにずっと我慢して…。
雪兎さんには態度だけでなく言葉も必要らしい。獅王の家がオープンな家でよかった。外国的な家はキスも言葉も獅王には日常的に当たり前な事だったのに初めて感謝した。
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