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太陽と月の欠片 庇護欲7

 「俺チャリだから帰るね~。また明日~」
 「おう、じゃな」
 「また明日」
 片付けを終わって3人で外に出て学校出た所で方向が違う吉村は手を振って帰って行った。
 「永瀬はそっちじゃないのか?」
 「いいよ。駅まで一緒に行く」
 大海は本当は駅と反対方向だが杉浦と並んで駅まで歩いた。
 杉浦は黙ったままで何かを考えている様子だ。きっと吉村の言った事を考えているんだろう。
 結わえていた髪は元通りで眼鏡も元通り。
 やっぱりもったいないと思いつつ、知っているのが自分だけ、いや、吉村もいたけど、そう思えば優越感が増す。

 「あのさ…何考えてる?」
 難しい顔をしている杉浦に思わず声をかけた。
 「え?」
 「バレー部入部するかしないか、だろ?でもそれの何が杉浦の悩むところ?」
 「………俺が入ったら邪魔にならないか、とか。よく見えもしないのにやっていいのか、とか」
 「間違ってるっしょ?一番は杉浦がしたいか、したくないか、じゃないの?その後の事は後で考えればいい事で、一番はそこだと思うけど?」
 あっ、と杉浦が顔を上げて大海を見た。
 「でしょ?」
 「……そうか?」
 「そうでしょ。……そうだな…俺の願い言っていい?」
 「願い……?」
 「一回でいい。試合で、お前のトスでスパイク決めたい。……本当は今日だって今日だけって言ってたのに、…あれ見ちゃったら欲出ちゃった。杉浦は…?」
 杉浦は顔を俯けた。
 「…杉浦?」
 また顔を歪めている。
 大海は屈むように杉浦の顔を覗き込んだ。
 「簡単に言うけどっ!高校生のスパイクなんかレシーブ出来ないぞ」
 「いいじゃん。吉村にレシーブ受けさせれば」
 「………そういう問題じゃないだろう」
 杉浦が顔を顰めたのに大海は笑った。
 「杉浦難しく考えすぎ!」
 「先の先まで読まないと気がすまないから」
 「セッターだからねぇ」
 思わず納得してしまう。
 「したい!だろ?今日楽しそうだった」
 「………」
 杉浦がふっと顔を背けた。
 「……永瀬と、もっとしたい、とは思った」
 う~~~わ~~~……
 大海は杉浦の顔をまじまじと見た。
 「…何?」
 照れた顔だったのがあっという間に普通の顔に戻ってる。
 惜しい…。もっと見ていたいのになかなか素の顔を見せてくれない。
 「なんでもな~い。けど……」
 杉浦がそういう風に思ってくれたという事に照れてしまう。
 「杉浦にしたらもどかしいと思う。今日の部活の練習見てわかっただろ?うちの部のほどほど具合。杉浦にしたらもどかしいだろうと思う。もしって、考えたら…」
 「…いや、俺は一度はやめたんだ。永瀬だったから今日も受けた。永瀬がいなかったらなかった話だから全然そうは思わない。今だって俺の中でバレーは終わってる。でもあとちょっと…永瀬がいるなら、と思ってしまうだけだ。スタメンとかは全然何とも気にしない」
 「なら、やっぱりやろうぜ?俺も杉浦ともっとしたい。せっかく同じ学校になったのに!」
 「…いいの?俺と付き合ってる事になってるのに部活も一緒で?」
 くっと杉浦が笑った。
 「別にいいよ。ふざけてるだけだろ」
 「…ふぅん。そう?」
 杉浦が表情を緩めて前髪をかき上げたのにどきっとした。
 やっぱり綺麗だ。
 だから!綺麗だの、可愛いだの、っておかしいだろ!
 と思ってもそう思ってしまうのだから仕方ないけど。
 「それならそれで好都合だろ。杉浦の傍にいても何も言われないし」
 杉浦に余計な虫も寄ってこないだろう。
 絶対この綺麗な顔に余計なのがついてくるはずだ。
 「いいんだ?」
 「いいよ。彼女とかも別に今んとこいらねぇし。面倒だ」
 大海が言えば杉浦はふっと笑った。
 「へぇ」
 「なんだよ?」
 「別に?……………永瀬、迷惑かけるかもしれない。いや、もうかけてるだろうけど……」
 「迷惑とは思ってないから!全然っ!なんでも言っていい!」
 「……ありがとう」
 「……やる?」
 「やる」
 杉浦の返事にうしっ!と大海はガッツポーズを出した。
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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