ライオン
何故か雪兎さんが嬉しそうだ。クライヴにあんな事言われたのにどうして?
雪兎さんがクライヴに突っかかられる必要はないのに…。
「ごめんね?小さい頃クライヴは体弱くてって言ったよね?それで甘やかされ放題になっちゃって…」
「別に平気だ」
雪兎さんが穏やかに笑みを浮かべている。
「獅王…」
階段を上って獅王の部屋に雪兎さんを招きいれ、ドアを閉じたとすぐに雪兎さんが獅王に抱きついて来た。
「雪兎さん?」
「……嬉しかったんだ…。獅王は家族が大事だろう?その中にクライヴも入ってる」
「そりゃ…でもっ!」
雪兎さんがそっと獅王の唇に指をあてて黙って、と目が笑っている。
「分かってる。でもそのクライヴにはっきり…言ってくれたのが…俺は嬉しい」
「…そんなの…当然だけど…?」
そして頬を紅潮させている雪兎さんが積極的に自分から顔を近づけてきてキスしてきた。
……それ位さっきのが嬉しかったって事?
獅王にしてみたら何も特別な事なんて言ってもないし、家族も大事だけど今は雪兎さんが一番なのは当然の事でしかないのに、そのほんの少しの事でさえ、雪兎さんにとっては嬉しい事になってしまうのだ。
つんと舌を突き出してきた雪兎さんの舌を絡めとリ腰を引き寄せた。
「ん…っ」
鼻から抜ける雪兎さんの色っぽい声にずきりと下半身が疼いてしまう。
…早すぎだろ…と思うけど、昨日の痴態を思い出すとやはり二週間も雪兎さんが足りなかったせか下半身を直撃してしまうらしい。
「……しお、う…」
雪兎さんがそっと獅王の唇を押さえて困ったように小さく抗議の声を出す。どうやらすぐに分かられてしまったらしい。
…だって当然だ!風呂も一緒入って、それでも風呂場ではさすがに家族の手前まずいだろうと獅王だってなるべく我慢してたのだ。
それが雪兎さんから官能的なキスを求められたら燻っていた熱がすぐにでも沸騰してしまってもおかしくはない。
「…する?俺はしたいけど」
「でも……でも…」
雪兎さんがもじもじとして獅王の肩口に顔を押し付けてきた。どうやらイタしたいけど家族もいるし…って所か。
「平気。誰も入ってこないって」
「そう…かも、だけど!やっぱり…ちょっと…」
「大丈夫。うち結構広いし。一階まで聞こえるとかないでしょ。それ言ったら世の中親と同居の夫婦だっているんだから」
「…そうだけど…」
「クライヴには雪兎さんの声聞かせてやってもいいかな?俺がこんなに雪兎さん愛しちゃってます、可愛がってますって分かるように」
「…やめろ」
かぁっと真っ赤になる雪兎さんは本当に可愛い。
このギャップが好きすぎる。
さっきのキスなんか自分からとろりとした目で誘って赤く熟れた唇を自分から寄せてきたのに、こんな小さな事で真っ赤になるんだから。
言葉をかけられる事が雪兎さんは極端に少なかったからだろう。
「雪兎さん。好き」
「…ん」
雪兎さんが自分から好きと言ってくれるのは照れくさいのか獅王が言う回数の半分にも満たない。俺も、と小さく返してくれるのでさえもなかなか難しいらしいのだ。
それでも今まで雪兎さんの中で封印されていただろう言葉を雪兎さんは小さく返してくれる。そうすると獅王はもう幸せと言っていい、ずっと言ってくれなかった言葉をちゃんと伝えようとしてくれているのが分かるから。それ位雪兎さんも獅王を大事に思っているし、真面目に想っているという事だ。
獅王は言葉を毎日繰り返す。軽く。でも嘘じゃないと心は込めて。
今日も明日も…ずっとこのままでいたいと。
「今日の分。それと明日も好きですよ…ほら?もう二ヶ月位…?そうしてあっという間に一年とか過ぎちゃうんですよ?」
「……ん…。…だといい、な」
擽ったそうに雪兎さんが肩を竦めながらも獅王に体を摺り寄せてきた。甘えたウサギらしい。
そんな雪兎さんを抱きしめながら頭や耳にキスを繰り返す。
「んんっ!くすぐったいってば…」
そんな事を言いながらも雪兎さんは獅王のされるがままにしている。
「…食べちゃいたい。……いい?ゴムつけるから…ダメ?」
そっと雪兎さんの耳を食みながら囁きお伺いをたてればダメという返事は返ってこなくて獅王は雪兎さんの体をお姫様だっこする。
「うーん…俺の部屋だとベッドが目の前だから抱っこの意味あまりないな」
くすくすと雪兎さんが獅王の首に腕を回しながら笑う。
「いいんだ」
「知ってる。雪兎さんお姫様だっこお気に入りだもんね?」
「だって変だろう?」
確かに見た目男同士なので変ですけど。雪兎さんが楽しそうだければ獅王は何でもいいんだ。
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