2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ライオンとウサギ 116

ウサギ

 確かに雪兎のマンションでリビングから寝室に移動する時なんかに決まって獅王はお姫様抱っこするけど、数歩で着くベッドにまで…とおかしくて笑ってしまう。
 一番始めての時に照れくさくて笑ってしまったけれど、それ以来獅王は必ずそういう時はお姫様抱っこする。

 「…割れ鍋に綴じ蓋…?」
 「………どっちが割れ鍋?」
 くくっと雪兎はまた笑ってそしてぎゅっと獅王の首にしがみついた。
 ずっと足りなかったのに、こうして一緒にいるだけでも心が満たされる。獅王の言動の一つ一つが雪兎の心の穴の開いた部分を充溢させてくれるのだ。

 「ローションないんで舐めてあげますね」
 数歩で着いた獅王の狭いシングルのベッドに横にされてそんな事を言う。
 「別に…しなくても」
 「だめ~」
 そんな事言ったって雪兎だって獅王が欲しいんだ。

 昨日もしたけど、雪兎が仕事があるからと獅王は手加減してくれたから…。決して満足しなかったわけじゃないけど…雪兎の事を考えてくれる獅王は大人だ。雪兎の方がよほど子供だろう。
 寂しんぼで甘えたがりで我儘で与えられるのを待っているだけ。

 「獅王…」
 自分なんかのどこがいいのか…どうして獅王はこんなに全てを受け入れてくれるのだろう?
 …そんな事思いながらも雪兎から離してやる事はない。今日も明日も、そう獅王は言うし雪兎だってそれがずっと続けばいいと思う。でも人の気持ちは変わっていくから…そんな事も十分分かっている。それでも信じたいと思ったんだ。今日と明日が繋がってもう二ヶ月以上が過ぎて、さらにそれが一年、さらにそれが…とずっと続けばいいのに…。

 そんな不変な事はありえないとは思うけれど、でも獅王を見ていると信じたくなる。信じたくなる、と思う時点で雪兎は変わったのだ。
 人を信じるなんて…不変じゃないけれど、こういう変化ならばきっといい変化なのだろう。いい方向に変わっていく、それならばいいのだろうか?

 「獅王…」
 「どうしたの?」
 ぎゅうっと獅王の首に泣きそうになって抱きつくと獅王の手が優しく雪兎の背中を撫でた。
 この二週間…獅王がいなくて物凄く寂しかった。
 「何言われたって睨まれたって…どうでもいい…我慢するより…一緒いたい…」
 「…うん…」

 我儘と思われたっていい。自分も我慢しないで全部獅王に言える。獅王はちゃんと聞いてくれるから…。言葉をくれるから。
 市原との時は聞きたくても聞けなかったし言いたくとも言えなかった。自分も無理していたし、市原もだったのだろう。勿論子供だったというのもある。

 「もっと言って?雪兎さん…」
 「寂しかった。家帰っても獅王いないし…家が寒かった。一人で寝るのも…」
 「うん」
 獅王が雪兎の事を考えてくれてそうしていたのにこんな事を言っても獅王は嬉しそうに笑ってもっと言ってと軽いキスを繰り返してくる。

 「どして…?」
 「ん?何が?」
 「だって…獅王は俺の事考えてくれてたのに…こんな事言われて嫌じゃない?」
 「なんで?嫌だなんて思うはずないでしょ?それだけ雪兎にさんに俺が必要だって事ですもん。ね?ほんと…声だけってこんなの遠いのか…って。電車で一駅で近いはずなのに…何度も行っちゃおうかって思って。……俺が悪いんだけど」

 獅王が悪いんじゃない。
 確かにクライヴに睨まれてぅっと突き刺さるような視線で雪兎を見ていた。獅王は家族の意味合いでの好意だけだろうけど、クライヴは違うと思う。そしてそんなクライヴの気持ちを雪兎も分かる。
 そうはいってもきっとクライヴは雪兎を逆恨みするだろうけど…。
 でもいい…そんな目を向けられても平気だ。

 「獅王は悪くない…獅王」
 好きだという言葉がなかなか雪兎は言葉に出来ない。恥かしいし照れくさいんだ。獅王みたいにさらっと毎日なんて絶対言えない。そのかわり…と獅王の頬を包んで唇を尖らせ自分から顔を近づけてキスをねだる。
 好きだ…。
 「うん、俺も」
 「???」
 獅王がくすっと笑いながら雪兎にキスを返してくれる。

 「うん…って何が?」
 獅王が何に返事したのかと首を傾げると、さらに何度も獅王がキスする。
 「え?だって雪兎さんからのキスって好き好きって言ってくれてるのと一緒だからね。俺も好き…ほんとどうしてかなかぁ?全部どこもかしこもおいしそう…」

 がぶと獅王が雪兎の肩口に噛み付いた。
 …勿論甘噛みだ。
 それはいいけど好き好きって…。そうだけど…獅王は雪兎の言いたい事、伝えたい事を悟るのにも長けているのだ。
 
 

たくさんのポチいつもありがとうございますm(__)m
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村

小説(BL) ブログランキングへ
にほんブログ村 BL小説
 

電子書籍

サイトはこちら

バナークリック↓ banner.jpg

Twitter

いらっしゃいませ~♪

リンク