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ライオンとウサギ 118

ウサギ

 はっと目が覚めると見慣れぬ天井と体にかかる腕に獅王の実家だったと雪兎は朝から仄かに笑みが浮かんだ。
 自分の家族には縁遠かったのにどうして人の家なのにこうしていられるのか…。
 「獅王」
 そっと声をかけるとうー…んと獅王が声を漏らした。

 「…起きる時間?」
 「ああ」
 ぐっと獅王の腕が雪兎の体を抱きしめる。
 朝から至福の時間だ。
 「おはよ」

 朝の光りを浴びる獅王は何時にも増して綺麗だ。まるで金色に輝いているように見える。
 髪も睫毛も光りを放っているようだ。
 「綺麗だな…」
 手を伸ばして獅王の髪を撫でると獅王が不思議そうな顔をしていた。

 「綺麗?何が?」
 「獅王が」
 「俺ぇ?そんな事言うの雪兎さんくらいじゃない?」
 ぷっと獅王が笑っている。
 「いや?綺麗だよ」
 「かっこいいなら分かるけど?」
 ふざけた口調の獅王の頭をぽかりと叩いた。

 「自分でかっこいい言うな」
 ちょっとの事が楽しくて仕方がない。こんなふうに感じる日が来るなんて想像もしなかった。
 起きて階下に下りていけばすでに獅王のお母さんは起きていて朝ごはんを作ってくれていた。
 「ユキトくんはご飯がいい?パンがいい?」
 「え、とじゃあ…ご飯、で」
 朝からご飯なんて…何時以来だろう?

 「いつもはセルフなのに!雪兎さんがいるから張り切ったらしい」
 こそりと獅王が耳打ちしてくる。
 「当たり前でしょ!お母さんのいい所見せないとね!」
 お母さん…か…。

 母親が亡くなってからもう10年近くになる。母親にカミングアウトはしなかったけれど、もししていたらどうなっていたのだろうか?蔑みの目を向けられたのだろうか…?
 「ユキトくん?」
 ダイニングに並んだ料理を前に少しぼうっとしてしまった。

 「あ…ちょっと…俺の母親亡くなってもう10年近くなるな、と。ウチの母親は朝食なんて作りもしなかったですけどね」
 獅王と獅王のお母さんに向かって苦笑すると獅王が雪兎を腕にだいてよしよしと頭を撫でてくれる。
 ……だから、どうしてこういうのを家族の前でもこっぱずかしくもなく獅王は出来るのだろう?
 「ユキトくん、ユキトくん」

 おいでおいでと獅王のお母さんも向かいあわせのキッチンで呼んでいて雪兎はなんだろうと思いながら行くと獅王のお母さんにもハグされた。
 雪兎よりも少し低い背なのによしよしと雪兎の背中を撫でてくれる。
 
 
 「…お母さんも家族もあんな感じだから獅王みたいになるんだな…」
 一緒に獅王と家を出て駅に向かって歩きながらしみじみ雪兎は口を開いた。
 出掛けに起きてきたクライヴがなんでこんな早い時間に出るの!?と騒いでいたけれど獅王はそんなの聞こえないふりで獅王のお母さんにいってらっしゃーい、と見送られながら雪兎と一緒に家を出た。

 大学の始まる時間には早いのにいつも獅王は雪兎に付き合って早い時間に一緒に出る。
 「雪兎さんももう家の内側に入ってるでしょ。そこはいいけど…二週間痴漢にあったりしませんでした?」
 「ないよ」
 あるわけないだろう!と獅王に呆れる。
 「別に俺に付き合う事ないのに…」

 「だめ。だって朝の電車ぎちぎちで心配なんですもん。折角大学と雪兎さんの職場が向かいで電車も一緒なんですから…ああ…そういえば図書館で禁断のキス…よかったよね?」
 「…うるさい」
 職場で就業時間内に…なんて雪兎も考えられない事だった。それくらい切羽詰っていたのだ。
 「…もうしない」
 「え~?そんなこと言わないで」

 駅に向かう人がこの辺でもやはりいる。声は小さくて他人に聞こえる事はないだろうが朝からする会話じゃない。
 つんとして雪兎が返事しないと獅王が諦めたのか肩を竦ませた。
 そんな雪兎の態度も獅王がそれ位で腹を立てるなんて事をしないと分かっているからだ。つくづく甘えきっている。
 「獅王って本当に19?」
 「なんです急に…」

 駅のホームは出勤のサラリーマンばかりだ。その列に獅王と一緒に並びながら聞いてみた。
 「それ言ったら雪兎さんは本当に27?」
 「…どういう意味だよ」
 雪兎がむっとすると獅王がくすくす笑いながら雪兎の肩を組んで来た。
 「だって可愛いところばっかりなんだもん」
 そんなの思うのも言うのも獅王だけだ。可愛げがないなと言われた事はあったけど、可愛いなんて言われた事などなかったのだから。
 
 
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