ライオン
やっぱり雪兎さんと一緒にいるのが自然だと思う。むっとして拗ねる雪兎さんを思い出して可愛いなと一人でにやけていたら林がおっす、と言いながら隣の席に座った。
「おや?今日はクライヴいないんだ?」
「ああ」
喧嘩でもしたのぉ?と女子にからかわれてそんなんじゃないと獅王も軽口で返す。
学科も違うはずなのに獅王の周囲でももうクライヴを知らない者はいない位だ。
それはもう別にいいけれど、やけに昨日はクライヴがおとなしかった。雪兎さんに突っかかってはいたけれど、高飛車具合がいつもよりもおとなしいのは獅王の態度の違いの所為か?
だったら今までがやはり甘かったのか…。
いや、なにしろ獅王の中での比重の違いがそのまま出ているだけなので仕方ない。今までクライヴに邪魔された子達と雪兎さんは全然獅王の中で扱いが違うのだから。
本当に雪兎さんは大人の男性で年も上だし恋愛対象になるなんてありえないはずなのに今はもう雪兎さん以外考えられない。こんな気持ちになるなんて自分でも想像つかなかった。
一目で惹かれて…男相手に!?と思ったけれど、知れば知るほど可愛くなっていく気がする…。いや、絶対気だけじゃない。
過去の雪兎さんのトラウマの相手だった野朗が出てきた時は焦ったが、ちゃんと雪兎さんの中では獅王は一応特別の位置に昇格していたらしい。
一人で顔をにやけさせていると林が獅王を呆れ顔でみていた。
「なんだ?図書館の彼とうまくいってるんだ?クライヴの事…全然平気なのか?」
「ん?ああ…昨日家に連れてったんだけど、とりあえず大丈夫」
「は?…はぁーん…それで今日はクライヴが引っ付いてないんだ?でも珍しいな?高校の時にお前の彼女追い払ってた時は関係無しにクライヴが上から目線で女追い払ってたのに?」
「そりゃね。俺の意識が全然ちげぇもん」
「…あっそ」
勝手にどうぞといわんばかりの林に獅王は苦笑した。ホント余計な事も言わないこいつは付き合いやすい。
雪兎さんも…昨日のクライヴに対しての事を思い出せばオトナなんだよな…と思う。それにやっぱり女と違う。面白くはない、と言うけれどちゃんと獅王の気持ちも分かってくれているのだ。どうしても獅王の中でクライヴは家族の括りに入っているのだ。
だからといって雪兎さんをないがしろにはしないつもりだし、そういう所をちゃんと雪兎さんも分かってくれてるのは家族という存在に雪兎さんが縁遠いからなのかもしれない。
でもヤキモチも可愛い…。
……なんだかな…どうにも自分の頭に花が咲いてるようだ、とさすがに獅王は頭を抱えて自嘲を漏らした。
幸いにも家族愛に飢えている雪兎さんに獅王の家族は好意的だ。小さい頃からクライヴは女は嫌いだ、レオと結婚すると繰り返してきて、免疫が出来てたのだろうか?
特に疑問も持たれなかったのは獅王にとっても謎ではあるのだが、雪兎さん本人を見たら否定的にはなれないのかもしれない。
今朝の母親の行動も…雪兎さんの淡々とした言葉の中に母性本能が刺激されたのだろう。母性本能など持っていない獅王でさえも守ってやりたいと思う位なのだから亡くした母親の事をあんな風に言われたらそりゃぐっとくるだろう。
雪兎さんが幸せだ、と言えるようにしてあげたい。
「………とか…」
そんな事考えるなんて自分も変わったのだろうか、と思ってしまう。
今日はバイトの日で衣装合わせ。
いよいよ本格的撮影に入ってくる。その前にちゃんとクライヴとの事もはっきりさせられたのはよかったかも、とも思う。
「レオ。あんたのウサギちゃん一緒に撮影とか…」
「ダメです」
姉貴がまた余計な事を言い出す。
「だって!ユニセックスで色気あって…」
「でしょ?そこはよく分かりますけど。ダメ」
「外人顔のアンタと対照的で並ぶとすごくいいんだけど」
「分かりますけど!ダメ」
「…ウサギちゃんに直接頼もうかな」
「ダメ」
もしかしたら雪兎さん、直接頼まれたら断れなくなるかも…。しかも姉貴の押しの強さと言ったら誰でも勝てないと思う。
「絶対ダメ。ちゃんと真面目な仕事してる人なんですから」
「…仕事辞めないかな?」
「辞めません」
「イケズ」
そういう問題じゃないっつぅの。
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