ライオン
雪兎さんが電話に出ない。
電車が混んでるのかそれとも何か出られない事情が出来たのか。
どうやら一緒にいるらしいクライヴの方にかけても出ない。そうするとやっぱり電車の中か…?電車はきっと今の時間は混みあっているだろうし。
そうは思ってもイライラしてしまう。
「ちょっと駅まで行ってくる。雪兎さんクライヴと一緒らしいんだけど…」
すでにサラの所は終わって帰って来てたのだが、いてもたってもいられず母親に説明して靴を履き獅王は外に出た。携帯は手に持ったままだ。電話がかかってきてもすぐに出られるように。
空気が冷たく、さらに冬に向かっていて息を吐き出せば白い。
さっきの電話のままこっちに向かって帰って来ているならいいのだが…クライヴと一緒だといった雪兎さんが気にかかる。
クライヴは雪兎さんが獅王の今までの相手と違うと分かったからなのか雪兎さんに対する態度がかなり違っていたし、獅王に対しても違った。分かってくれたのかと思っていたのだが…。
「あー…くそっ」
駅に足早に向かいながら苛立つ。
雪兎さんにもし何かあったらどうすればいいだろう…。いてもたってもいられない自分の気持ちにそこらじゅうの物に当たりたい気分だ。
雪兎さんには獅王しかいないのに!そう自惚れているし、独占欲の塊になっている。束縛したいと思うし閉じ込めて誰にも触れさせたくないとも思ってしまう位に雪兎さんだけが特別だ。
なんでこんなに雪兎さんだけで自分の中が埋め尽くされるのか自分でも分からない。
家族に縁遠くてあの寂しそうな雪兎さんを見れば全部を満たしてあげたいと思うし自分があたえられるものは与えたい。
それが獅王の身勝手な思いだという事は分かっているけれど、それを雪兎さんも嬉しそうに受け取ってくれるから増長してしまうんだ。
駅に着くと人が次々と改札口から出てきて、その中に雪兎さんとクライヴの姿を探したがない。目立つだろう二人の姿を見逃すはずはないから乗っていなかったんだ。
このまま電車に飛び乗りたい気分だがすれ違うのは目に見えてひたすら我慢するしかない。
イライラと足を踏み鳴らし次の電車を待つ。その間に携帯が鳴るかと思ったがそれもない。
「何してるんだ!」
雪兎さんからレスがないという事はレス出来ない状況という事か?
親指の爪を噛んだり、髪をかきあげたりと落ち着かない。
次の電車が着いてもやはり人波に二人の姿はなかった。
…クライヴに雪兎さんが振り回されているんじゃ…?別に子供じゃないんだからクライヴの事なんか放っておけばいいのに!
でもそう思いながらもクライヴは獅王の中で家族の括りに入っているし、もし困っていたりすれば獅王は手助けするだろう。それを雪兎さんは分かっているから…家族という存在を特別視している雪兎さんだ。クライヴを放っておけといってもきっとそんな事はしないし、だからこそ獅王だって雪兎さんの事が好きなんだ。
そこに電話が鳴って慌てて画面を見れば雪兎さんではなくて林からだ。こんな時に!と思いながらも電話に出た。
「もしもし!」
『レオ?あのさ…なんかクライヴと一緒にお前の彼氏…だと思うんだけど、コート着たスーツの人一緒にいるんだけど…?』
「ああ!?どこだ!?」
『それだけじゃなくて…なんか大学でも金持ちのボンでちょっとタチ悪いって噂のグループ…三人ばかりも一緒いる』
「はぁ!?まじか!?」
『ああ。ほら前に皆で行った事あるクラブだ。俺今女といたんだけど…その彼女があいつら最近ドラッグとか手出して男も女も見境なくホテルに連れ込んでる噂あるとか…って』
「今から行く!悪い!二人見ててもらってもいいか!?」
『いいけど…』
「今駅にいるからすぐ行く!」
獅王は急いで改札を通り電車に飛び乗った。
なにしてんだ!?
…って多分クライヴのせいだろう!雪兎さんがそんなのに引っかかるはずはないだろうから。
それなりに遊んできたらしいけど雪兎さんは基本真面目だし人と深入りはしないし危ない事もしない。クライヴがいやがらせに雪兎さんを連れまわしているのか?
「くそっ」
電車の中で小さく吐き出す。
雪兎さんに何かあったら許さない…。そう言ったのに!
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