ライオン
「あれか!」
裏のラブホというのはすぐに見つかり駆け込んだ。
「すみません!」
声を張り上げると入ろうとしていたカップルがぎょっとした様な顔をして出て行ってしまう。営業妨害になるかもしれないがそれどこじゃない!
「少し前に男何人かと金髪の外人と黒髪の綺麗な人来ただろう!?」
何事かと裏のスタッフルームから出てきた男に獅王は切り出した。
「お答えする事はできません」
勿論そうくるだろうなとは思ってはいたが…。
獅王は苛立つ。
「警察に電話してもらっている!もうすぐ来るはずだ」
ぎょっとホテルの男が驚愕の表情を浮べる。
「お客様…困ります」
「困りますじゃねぇよ!犯罪だろうが!犯罪にここ使われてて見ないふりしといて困りますもなにもねぇだろう!ああ!?あいつらどこ行った!?どこの部屋だ!?」
「それは…」
落ち着きをなくしたようにホテルの男がおろおろしだした。
「俺バイトなんだけど…」
「知るか!とにかくもうすぐ警察もくるけど!その前に…早く部屋!」
「いえ…でも…あの…少々お待ち下さい」
待ってる時間なんかないというのに!
二人が入ってからどれ位の時間が経っているのか。獅王には分からないのだ。その間に何をされるか…。
「レオ、落ち着けって。警察もすぐ来るだろう」
「…ああ」
ホテルの男はどこかへ電話しているらしくくぐもった声が微かに聞こえてくる。
こんなほんの少しの時間でさえ惜しいのに!
可能なら一つ一つの部屋を開けて確かめていきたいくらいだ。
部屋の使用状況を見てみれば八割がた埋まっているらしく繁盛しているらしい。ここに今から警察がやってきたら混乱するかもしれないが…どうなのだろう?
でももし本当に介抱だけだったら?
それならそれで何もなくてよかったになるだろうか?営業妨害とかで獅王が捕まる事にならないだろうか?
そう一瞬考えてしまうが自分の事より雪兎さんが心配だ。
クライヴの事を介抱してたらしいから雪兎さんは具合悪いわけではないようだけれど…それにしてもどうして自分からクライヴについていって…でもそうじゃなかったらクライヴは一人だったかもしれないし。
色々な事が短い待ち時間に頭の中をぐるぐると行き交う。
短い時間なはずなのに長い!
「おい!まだかよ!」
こんな短い間にも雪兎さんの身が危険かもしれないのに!
「あの…本当に警察が…?」
「ああ!女の子にたのんでここに来てもらうように言ってある。男達来てるんだろう!?」
「それは…」
「はっきりしろよ!」
「け、警察が本当に来れば…きちんと…」
「それじゃ遅いかもしれないだろう!?」
獅王はがつっとフロントの壁を蹴飛ばした。
「レオ、落ち着けって!…警察はすぐくるだろう!…じゃその男達は何分前位に入りました?」
林が獅王を抑えながらフロントに尋ねた。
「きっと警察にも聞かれますよ?」
「……まだ10分も経ってない」
「金髪の子は具合悪そうだった?黒髪の人は?」
「金髪の子はそう…ぐったりして、黒髪のスーツの人が大丈夫って声かけていたようだったけど…ほかに男が三人で…」
三人!?
「レオ、大学でもその三人つるんでるはず。多分。クライヴに目つけてるとか聞いた。いっつもレオにばっかりクライヴが張り付いてたから遠巻きだったらしいが」
雪兎さんとの事で獅王から離れたから…?
それが結果雪兎さんまで巻き込んでる事になっているのか?そうしたら悪いのは自分か!?
「レオ!」
悪い方に考えが向かって獅王が黙ると林に声を張り上げられはっとする。
今はそんな事を考える時じゃない!
そこに制服を着た警察官が二名入ってきた。
「警察です。通報をいただいたんだですけれどちょっといいですか?」
「待ってた!」
獅王が安堵の声を上げた。
「ん?君達は…」
「俺は連れ去られた金髪の親戚です。こっちは友人」
「通報をくれた女の子は…」
「俺の連れです」
林と獅王が代わる代わる答える。
「早く!」
獅王が急かすとホテルのバイトが慌ててキーを手にフロントから出てくる。
「被害届が他からも出ていたのでね…こちらも注意していたんだけど」
エレベーターに乗りながら警察官の一人が獅王達に話しかけ、もう一人は無線機でなにやら応援要請なんかを出していた。
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