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ライオンとウサギ 126

ウサギ

 部屋に入り男がクライヴをベッドに放った。
 「クライヴ!」
 うんと呻るクライヴに雪兎が駆け寄った。
 「水!」
 一人に向かって雪兎が声を出すと冷蔵庫から水を出してくれ雪兎に手渡してくれ雪兎は急いでクライヴに水を飲ませた。

 「大丈夫…?」
 こくこくと嚥下するクライヴにほっとするが状況は全然安心できない。
 「ウサギさんが二匹」
 くっくっとクライヴを抱えていた男が笑っている。
 「俺はエロいホクロのお兄さんね」

 焦点の合っていなかったクライヴの碧い目が雪兎を見た。
 「なんで…」
 「君の事は守るから」
 小さく雪兎がクライヴに言った。
 「別に…アンタは逃げればよかったのに」

 「そうはいかない…君は獅王の家族だ」
 雪兎は違っても…獅王はクライヴを家族と言ったから。
 「バカだな…」
 「動けない…?」

 ドアから廊下に助けを呼んで叫んで出て行ったら誰か来てくれないだろうか?だめだろうか…?
 獅王は連絡も入れない雪兎に呆れたのか電話も震えない。無視してるわけじゃないんだけど…電話をかけてもいいだろうか…?
 どうしたらいい?
 男達の気配がさらに悪くなったのは肌で感じていた。クライヴが動けるなら廊下にでも飛び出して助けを求めるんだけど。部屋は大分埋まっていたようだったし…。

 男達がなにやらこそこそと頭を寄せているのが視界に入る。クライヴが動ければいいんだけど…ぐったりしていてそれはどうしたって無理そうだ。
 「ウサギ…さっきよりはいいけど…まだ…」
 クライヴが頭を小さく横に振っていた。
 「アイツら…やばいかも…」

 「今更!だから言ったのに!」
 「…アンタは逃げて…なんでもないんだろ…?で、…できれば…助け呼んで…都合よすぎ…なんだ、けど」
 「ばか!クライヴ一人置いていけるわけないだろう!」
 一体何をされるのか…。でもここに二人でいても…とも思うがもし万が一雪兎が離れた隙に最悪の事になんかなったとしたら…。

 連日流れる色々な事件のニュースの事を思えば怖い考えの方に向かってしまう。
 「でもこのままだと…」
 クライヴが雪兎に青い顔を向けて来る。
 「おい?何の相談だ?」
 一人がドアの前に立って逃げる先を塞ぎ二人が広いベッドに横たわるクライヴとそこに付き添っていた雪兎ににじり寄ってきた。

 そして一人の男がスラックスのポケットから出してきたのは縄紐だった。
 「何…する…」
 雪兎が声を強張らせ、クライヴを守るようにクライヴを背に男に向かった。
 「ウサギのお兄さんが先だ。クライヴはまだうまく動けないだろうしな」
 縄を手に雪兎に近づいてくる。
 さらにビデオカメラまで出してきて雪兎は顔を顰める。撮るつもり…なのか?

 「いい思いさせてやるよ?いやならクスリ打ってやろうか?最初は皆嫌がるけど最後には腰振る様になるぜ?」
 雪兎は首を横に振る。
 「やめろ。犯罪だろ…」
 「ばれてねぇし?撮ったビデオ表に流されたくないだろうから誰も何も言わねぇよ?」
 初犯ではないらしい物言いにぞっとしてくる。

 「やめろ…」
 「やれ!」
 主犯格だろう男が声を出すと、縄を持った男が雪兎に踊りかかってきた。
 「お兄さん悪いね?諦めな」
 全然悪いとも思っていない口調で雪兎の手をつかんでくる。
 「やめろ!」
 雪兎も暴れて抵抗した。

 「この!おとなしくしな!」
 がつっと頬を殴られる。
 「ウサギ…っ!」
 クライヴの叫ぶ声。だがその声に力はなく、まだ動くのは難しいらしい。それでも雪兎に馬乗りになってきた男二人にクライヴが身体を動かそうとしているのが倒れた雪兎の目にも見えた。
 
手を押さえられ縄を結ばれれば自由が利かなくなる。さすがに自分よりも体格のいい二人に押さえられれば雪兎が必死に抵抗しても敵わない。
 そのままクライヴの寝かせられているベッドに体を持ち上げられ放り出された。
 身体を必死に捩り抵抗するが、縛られた腕を一人に押さえられ足にもう一人に乗りかかられては雪兎の身体の自由は利かなくなる。

 「おい、ビデオ!スーツ脱がすってのもいいのかもな」
 ドアに張っていた男がビデオを手に近づき、そして雪兎のネクタイ、スーツ、ワイシャツのボタンを外されていく。
 「なんだ…?こいつ…抱かれてんじゃん?エロい身体!」
 身体には獅王につけられているキスマークが多く残っている。
 「やめろ!」

 「なんだ?それなら余計遠慮なしでいいらいいな」
 隣でクライヴが手を伸ばしてきたがビデオの男に殴られた。
 「う…」
 「クライヴ!」
 「まだ人の事気にしてる。人の事より自分の方気にすれば?」
 腕を押さえている男が雪兎の顔を覗き込みながら不気味に笑った。
 


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