ライオン
早く!
エレベーターさえもどかしい!
イライラとして身体を揺さぶってしまう。
やっと開いたエレベーターに足早に部屋を案内するホテルのバイトの後ろに獅王達もついていった。
「あの…ここです」
おずおずとホテルのバイトの男が警察官に向かって部屋を指差した。
警察は部屋のチャイムを鳴らす。
中からの音は聞こえなくて状況がどうなっているか全然分からない。
チャイムを鳴らしたのに中から反応がない。
どんどんと警官がドアを叩きもういちどチャイムを鳴らす。
じれったい!
「開けろ!」
獅王が警察官を押しのけ激しくドアを叩いた。
「雪兎さん!」
どうなっている!?
そしてがちゃりと施錠が解かれる音がして獅王は我先にドアを開けると中に踏み込んだ。
「キミ!」
警察官の止める声が聞こえたがそんなのは無視だ!
「雪兎っ!」
目に入ったのは大きなベッドに手を縛られ押さえられ、スーツを半分以上肌蹴させられてうた雪兎さんの姿だった。
「こ…の…」
獅王は雪兎さんの腕を掴んでいた男に飛び掛り殴りつけ雪兎さんから退けさせる。
「警察だ。通報があって事情を…キミ!」
「雪兎さん!雪兎っ!」
「し、おう…」
雪兎さんの頬を手で包むと雪兎さんがほうっと安堵したように顔をくしゃりと歪ませた。
「大丈夫!?」
「大丈夫…だ。あ、でもクライヴが…」
背後で雪兎さんに乗っかっていた奴等が警察に食って掛かっている声なども聞こえたが獅王にはもう雪兎さんしか見えていなかった。
「待って縄解くから」
そんなこんなしているうちに警察官の数が増えて獅王が雪兎さんの身体を自由にして衣類を整えている間に林はクライヴの身体を起こして、後ろでは男三人が警察官に取り押さえられていた。
「雪兎さん…頬が…」
殴られたのか赤くなっていてそっと獅王が撫でると雪兎さんは大丈夫と気丈に笑みを浮べた。
「獅王…」
そしてやっと獅王はぎゅっと雪兎さんを抱きしめた。
「何も…されていない?」
下までは脱がされていなかったようだけど…と小さく獅王が尋ねれば雪兎さんが頷いた。
「ああ…平気。それより…クライヴ」
雪兎さんははっとして獅王の腕を退き、林に支えられていたクライヴの方に顔を向けた。
「大丈夫か!?」
「……」
クライヴが雪兎さんに向かって小さく頷いている。
「雪兎さん!」
自分の事よりクライヴを気にする雪兎さんに獅王は声を張り上げた。
「だって…本当に具合悪そうだったし…」
「あのね!」
はぁと獅王は大きく溜息を吐き出した。こっちは気が気じゃなかったのに!
「ちょっと君達話をいいかい?」
警察官に話しかけられてはっとする。
それから雪兎さんとクライヴは詳しく話しを聞かれ、獅王達も住所などを聞かれて質問の答えていく。
警察官の電話が鳴ってたり無線で話してたり、ホテル側も人がさらに出てきたりと場が騒然としてしまった。
その間にクライヴは大分具合を悪くしていたのもよくなってきたらしく顔色も良くなってきたし動けるようにもなってきた。
雪兎とクライヴを襲った男三人は連行されていってほっとしてしまう。
具合の悪かったクライヴは病院に搬送されそうになっていたのを断っていた。
どうやら脱法ドラッグってやつだったらしい。指定薬物は含まれていなかったらしく色々と聞かれたがどうにかクライヴまで警察に、って事にはならないらしくてさすがに獅王もほっとした。
勿論被害者っていう事もあるし、留学生というのが面倒というのもあるのかもしれないが…。
雪兎さんもその場で聞かれた事に答え、後日詳しくという事でこの場では開放された。
「林…悪かったな?」
「いや?ちょっと事情聴取とか初めてで貴重な経験した」
「あんましそんなの体験したいとは思わねぇけどな」
「ま、ね」
獅王が一人を殴ったのも一応不問にされた。だいたいそんな殴ったというほどのものでもなく雪兎さんの頬の方が余程酷い。
「雪兎さん…本当に大丈夫?」
「平気だって」
「クライヴも。病院本当にいいのか?」
「……いい。もう平気だ」
ホテルを出てタクシーを捕まえ乗り込んだ。さすがに電車で、とは雪兎さんも言わなかった。
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