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ライオンとウサギ 128

ウサギ

 獅王が助けに来てくれた。
 危ない時に現れるヒーローみたいに。
 その後もずっと獅王は雪兎を気遣ってくれて、それは嬉しいのだが…。

 「……悪かった」
 タクシーに乗ってからクライヴが窓の方を見ながら小さく隣に座る雪兎に謝った。
 「何もなくてよかったよ」
 雪兎の言葉にクライヴは返事をしなかったけれど本当にほっとした。

 「獅王…ありがとう」
 獅王が雪兎の肩を抱いてくれる。こういう所が獅王ははっきりしている。普通もっとクライヴを心配してもいいと思うんだけど…とかえって雪兎の方がクライヴに気を使ってしまう。

 クライヴも黙っているから…。かえってもっと心配しろとか言ってくれたら雪兎だって気楽なのに。我儘だなんて獅王は言ってたけど本当に獅王の事が好きなんじゃないのか?
 ちりと雪兎の心が痛む。それでもそんな獅王のはっきりした態度が嬉しいと思っているのだから自分の方がクライヴよりも我儘なような気がしてしまう。

 「雪兎さん…俺のほうこそ…ありがとう…クライヴについててくれて」
 「…余計な事だったかもしれないけれど」
 クライヴに言われていた通り雪兎は家族でもないのだ。本当は。
 でもそれなのに獅王は何も言わずに雪兎もそのまま獅王の家に連れて行こうとしている。

 「クライヴ、雪兎さんも…うちの両親が心配して待っている。無事でよかったけど……クライヴは自分のしたこと反省しろ」
 「獅王…いいって」
 さらに追い討ちをかけるように言う獅王を雪兎は止めた。
 「だって雪兎さん!心配したんですよ!電話は出ないし!」
 「うん…ごめん」

 でも雪兎はクライヴの自棄になりたい気持ちも知っているから…。市原と連絡が途絶えた大学始め頃は誰でもいいからという気分でゲイの集まる店に行って遊ぶ相手を探していた位だ。
 真剣であればあるほど受けるショックは大きい。
 だからといって自分はいいからクライヴに優しくして、なんてそんな事を雪兎は言わない。

 「クライヴ…ごめんね。獅王はどうしたって渡せないんだ」
 雪兎がクライヴの方を見てきっぱりと言うとクライヴが驚いたような目で雪兎を見た。
 「別に…レオ見てれば分かるし…」
 「そう。俺は雪兎さんの。雪兎さんは俺の」
 「獅王…ちょっと黙って」
 タクシーの中なのに声を高々に言い放つ獅王を雪兎は顔を熱くしながら止めた。

 「え~…」
 獅王が不満気だが雪兎がちろりと睨めば肩を竦めて黙った。でもその代わりに雪兎の肩を引き寄せて頬の辺りにキスしてくる。
 「…本当に…無事でよかった…」
 獅王が溜息と一緒に小さく雪兎の耳元に囁き雪兎の心がぎゅっと掴まれた。
 助けに来てくれたんだ…。

 「獅王…」
 何度ありがとうと言っても足りない位だ。
 ちらとクライヴを見ればまた窓の外に顔を向け、バックミラーに映った運転手は前を向いている。
 雪兎は獅王の方にそっと身体を寄せそして急いで獅王の頬にキスした。
 「雪兎さんッ」
 さらに獅王が抱きついてこようとしたのを雪兎は手で押して止める。

 「い、いいからっ」
 だって…雪兎だって嬉しかったんだ。ドアを開けて飛び込んできた時は本当に…いつもかっこいいけどいつもよりもっとかっこよかった。
 あとで…ちゃんと言おう…とさすがにタクシーの運転手やクライヴがいる前では言えないと獅王をちらと見て後でね、と小さく囁いた。

 顔が熱い。
 身体も。
 何事もなく帰ってこられたんだと獅王の体温を身体半分に感じながらほっとし、今更ながら震えてきそうになる。
 どうにかしようなんて自分では何も出来なかったのに、獅王の電話にも出られなかったのに獅王はちゃんと助けに来てくれた。心配して…そしてよかったと抱きしめてくれて…。

 泣けてきそうになる。
 獅王が飛び込んできた瞬間何事が起こったのかと思ったけれど、全部獅王の顔を見て吹き飛んだ。
 きっと獅王はどこにいても雪兎を助けに来てくれる。
 クライヴが動けなくてどうにかしないと思うばかりで何もできなかった雪兎に獅王はお礼まで言うんだ。

 本当に何もできなかったのに。
 無理にでも雪兎がクライヴを連れて帰ってれば何もなかった事なのに。
 獅王の手が雪兎の肩を抱きしめてくれていて雪兎もそっと獅王の肩に頭を乗せた。
 


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