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ライオンとウサギ 130

ウサギ

 クライヴは本当に具合が悪かったのが嘘の様に表情も目もしっかりしていて雪兎は安心した。本人ももう普通だとぶっきらぼうながらも心配する雪兎に声をかけてきた。
 …譲歩しているつもりなのだろうか?
 もっと仲良くなれればいいな、と思う。だって獅王の家族だから。

 家族と呼べる存在がもうない雪兎にとっては家族という括りがどうも特別らしいというのは獅王の家族と会ってから分かった事だった。自分でも知らなかった事だ。
 それを分からせてくれたのも獅王だ。
 「雪兎さん」

 獅王が雪兎の手を引いて二階の獅王の部屋に連れて行かれ、ドアを閉めると抱きしめられキスされた。舌が口腔に入ってきて貪るように獅王の舌が絡んで蠢く。
 「…つっ」
 「あ!…痛い?」
 「平気…もっと」
 殴られた頬の為に口の中も切れていたがそんな事よりも獅王の温もりが欲しくて自分からも獅王に抱きつきもう一度キスを求めた。
 「んっ」

 今度はそっと気遣うように獅王の舌が絡んでくる。ちゅくりと音を鳴らし唾液を交じらせ獅王の存在を確かめた。
 「ん、ふぅ…」
 まだ少し緊張が残っていたのか身体が解れていく感覚に自然と息が漏れた。そんな雪兎を宥めるように獅王の手は雪兎のスーツを脱がせながら背中を擦ってくれる。もう大丈夫だから安心してと言葉でなく獅王の態度が言ってくれていた。
 「獅王…」

 顔が熱い。キスだってもう何回も数え切れない位してるのに唇が離れる時は自分だけが夢中になっているように思えていつでも照れくさくなってしまう。
 だっていつもキスだけで雪兎の身体は熱を持ってしまうんだ。
 「…よかった…本当に…」
 しみじみと獅王が呟いて確かめるように抱きしめてくれる。

 「でも…肌…見られてたでしょ?…許せないな…」
 「別に見られる位…」
 「位って事ないです!雪兎さんは俺のなんだから!キスなんかもされてない?触られてない?何されました?」
 獅王が雪兎の服を剥いでいきながら確かめるようにむき出しになった肌を撫でていく。

 「ほとんど何も…?獅王がすぐに来てくれたから…よく場所も分かったな?」
 「偶然林が店にいてクライヴと雪兎さんを見つけたから。その林の連れの女の子もアイツラの悪行知ってて…協力してくれて…本当によかった…。よかったけど!もう二度とこんな事しないでください!俺がどんだけやきもきしたか…」
 はぁと獅王が大きな溜息を吐き出した。
 「だってクライヴが…」
 
 「…分かってます。クライヴが無事だったのは雪兎さんが一緒にいてくれたからだ。感謝してる。でも本当に心配したんですよ…生きた心地がしなかった」
 「もし……ヤられてたら…どうした…?」
 「どう…?アイツラを?」
 「ちがくて…俺…」
 今日は獅王がすぐに現れたから無事だったけど、もし獅王の友達が見ていなかったら…獅王は助けにこられなかったはず。そうなったら…。

 「雪兎さんを?どう…って?」
 獅王ば不思議そうな顔をして雪兎の顔を覗き込んだ。
 「ほっぺ痛そう…。着替えたら湿布張ったげますね。明日まで薄くなるかな…無理か…」
 「いいよ。熱出たとでもいって休む。ちょっとこの顔で仕事は…」
 「ですよね。すみません」
 「いや、ほとんど俺は公休以外休んだ事もないからちょうどいいだろう。…で…?」

 「で…って、ああ雪兎さんを…?ええと意味わかんないですけど?」
 「ヤられたら…ポイされる…?」
 「はぁ?なんで?そんなわけないでしょ。雪兎さんは俺のだって言ったでしょ。…一応その覚悟もしてたんですけど。離す気なんてさらさらなかったです。そうですね…もしそんな事なってたら雪兎さんを部屋に閉じ込めて出さないようにしちゃうかな。そうしたら危険な事ないだろうし」

 「それなら…それも…いい…かも」
 そっか…獅王は…そんな覚悟まで…してたんだ…。
 「獅王…。助けに来てくれたとき物凄くカッコよかった」
 「そう?」
 獅王が目尻を下げて顔をニヤつかせた。カッコイイなんて言われ慣れているだろうに…。

 「もっと言って。雪兎さんに褒めてもらいたい。俺頑張ったでしょ?」
 「…ん…ありがとう」
 半分脱がせられた格好のまま獅王に抱きつくと獅王がまたキスしてきて濃厚に舌を交わらせながらしっかりと抱きしめられた。
 
 


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