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ライオンとウサギ 132

ウサギ

 家族だと…心配したと迎えられて嬉しかった。
 獅王も何があっても守るし助けに来てくれるって…言ってくれて…誰も自分なんかにそんな事言ってくれるような人などいないと思っていたのに。
 何があっても全部…雪兎の全部は獅王のものらしい。

 でもそれでいいんだ。それ位じゃないと雪兎は信じられないかもしれない。言葉で言われるのも嬉しいけれど獅王は態度にも全部出してくれるから。
 「雪兎さん好き。今日も明日もね。明日は雪兎さんも休みだしいっぱい言ったげる」
 「あ、の…それ…信じるから…毎日じゃなくても…もういい」

 信じ切れないでいた雪兎の為に獅王は呪文の様に毎日繰り返してくれていた。はっきり言ってメンドクサイだろうにそんな事一言も言わずに。
 「え?いいの?どうして?」
 獅王が不思議そうな顔だ。
 「言いたいから言ってるだけなのに…雪兎さんはもう要らないんだ?」

 「ちがう…獅王が…面倒かな…って」
 「まさか!…ふぅん…いらないんだ?」
 「ちが…いらなくない…言ってもらえるのは…嬉しい」

 「うん。ですよね。雪兎さんは寂しんぼだから。きっと言わない日あったら気にするでしょ?だからいいの。俺だって面倒とも思ってないし。可愛いな、好きだなって思ってるから言ってるだけで、むしろこれでも抑えてますけど?」
 「…え…?」
 そうなの…?
 「そうですよ?可愛い!ぎゅーっとしたい!なんてどれ位思ってるか…我慢してるけど」

 「…その…俺も…カッコイイな…とかいっつも思ってるし…好き…だ」
 典型的な日本人の雪兎にはなかなかふざけてない好きを言うのは難しいけど、それでも今日は思いが溢れている。
 「獅王…好き。ずっと一緒にいたい」
 「うん。勿論」

 獅王が嬉しそうに満面の笑みを浮べるのが見られるのが嬉しい。いつも外で見る時はクールな感じに見えるのに…こんなに好きとか普通に言ってくれていつも雪兎の心は満たされている。
 ずっとそんな事言ってたってきっといつかは捨てられるんだと…そう思っていたのに…家族と言ってくれて中に入れてくれ、そして温かい手を差し伸べてくれる。いつも両手を広げて怖くて小さく縮こまってる雪兎を包んでくれているようだ。

 「獅王…獅王…」
 「うん?どうしたの?」
 雪兎が手を伸ばすと下肢に向かおうとした獅王の顔が上に戻ってきて雪兎は獅王の首に抱きついた。
 「舐めるのもいいけど…こうしてたい…」
 獅王の体温を感じられるのが好きだ。

 「そう…?」
 「ん…」
 今日は特に…。ちゃんと獅王だと分かってキスも身体も繋げたい。何をされるかとどうされるかと不安がずっとどこか残っているようで…。

 すると獅王が雪兎の背中に手を回して抱きしめてくれる。
 年下のくせに広い胸で雪兎の事を包んでくれる腕だ。今日はちゃんと助けに来てくれて救ってくれた頼りになる腕。 
 すりと雪兎が顔を獅王の首筋にすり寄せるとそうじゃなくて、とくすっと笑ってキスする。

 「口の中、切れてるとこ痛い?」
 「ううん…平気だ」
 そんなの全然平気だ。与えてるのが獅王ならば。
 「どうしよう…なんかすごく幸せだ」

 「ええ?頬も腫れてるし口の中も切ってるのに?怖い目にもあったのに…」
 「そうなんだけど…その全部を獅王がひっくり返してくれたから…」
 「雪兎さんがそう思ってくれるならいいけど…。俺は反省中ですよ」
 「…え?どうして?」

 「元を正せば俺の所為かなと…。やっぱり俺が我慢して雪兎さんを家に連れて来るとかしなければクライヴの為に雪兎さんがあんな目に合う事もなかったかな、とか。クライヴを放置しないで連れ帰って来ればよかったとか。色々…」
 獅王が自嘲を漏らして雪兎は獅王の頬をパンと音をたてながら挟んだ。

 「獅王の所為って事はない」
 「ん…やっぱ雪兎さんには敵わないなぁ…そういうとこ好きです。雪兎さんって常に前を向いてるでしょう?臆病で寂しがりなくせにプルプルしながらも引き返すって事しないんですもん」
 「…そう…?」

 「そうですよ?臆病のくせに大胆だし」
 大胆…?
 そんな事言われた事ないけど。
 「けっこう突っ走っちゃう時あるもんね。今だってヤダとかはじめ言ってたくせに乗り気だし?えっちには最初から素直で大胆でしたけど」

 「獅王っ」
 「どっちかてぇと俺が食われちゃった感じだったしねぇ?でもそういうエロいとこも好き」
 いっぱい好きを言うと宣言したからなのか獅王がキスしながら好きと繰り返しそれだけで雪兎は絆されてしまう。
 だってそんなに好きを向けられた事がなかったから…。



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