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太陽と月の欠片 独占欲7

 昼休みに杉浦と一緒に三年の教室に行った。。
 杉浦の容姿の話が飛び交っているらしくわざわざ教室まで見に来る奴らもいるほどで、大海はなんとなく面白くなくて青山の所に行くのにも付き合え、と杉浦を連れて行ったのだ。
 「俺も昨日考えてた。朝練だけでなく日曜とかももっと練習いれたい、と。…上手いお前らから言われるのがおかしいけどな」
 青山が苦笑する。


 部活を始める前にミーティングするぞ、とコートに集まってキャプテン青山が練習の事を告げると皆も頷く。
 きっと杉浦の事が皆引っかかってるはずだ。
 したくても出来ない。
 出来るのに出来ない。
 昨日の練習、セッターでトスしてるときは普通に見えたのに、やはりレシーブや予測不可能なボールに反応するのが遅いのは皆が分かった事だ。誰もそれは言わないけれど…。
 咄嗟の事に目がついていかない。
 それが誰にでも分かった。
 見えていれば…。
 誰もがそう思ったはずだ。
 そしてそれを思っているのが本人だろうという事だって誰だって分かる。
 だからこそ言えない。

 大海も昨日、一昨日と夜寝る時杉浦の事を考えていた。
 きっと昨日はバレー部のヤツ等は全員杉浦の事を考えたはず。
 ちらと隣に立つ杉浦を見た。
 髪を結んでTシャツ姿。眼鏡もしていない。
 やっぱ綺麗なんだよな…。
 思わず伏せた杉浦の目の睫毛に見惚れた。
 その杉浦の目がゆっくり大海を見た。
 真っ黒の目。
 「…何?」
 小さく杉浦が聞こえるか聞こえないか位の声で言うのにどきりとした。
 「…な、なんでもない」
 まさか綺麗で見惚れたなんて言えるはずなどない。
 慌てて大海は杉浦から視線をはずした。
 「よしっ!やるかっ!」
 2年でセッターの渡部が立ち上がる。
 「俺なんか全然だめだけど、杉浦!教えろ!」
 「…いくらでも」
 杉浦が表情を和らげている。
 全員が立ち上がって声を上げていた。
 大海は杉浦と顔を合わせ、杉浦の肩に手をかけた。
 「変わりそうな感じだ」
 「永瀬の為にも変わらないと」
 「俺?」
 「そう」
 杉浦が当然だ、と言わんばかりに頷いている。
 「杉浦、パス相手しろ」
 「はい」
 渡部に声をかけられて杉浦はさっさと渡部の方に行ってしまう。
 それがなんとなく大海はちぇっという気分になってしまう。
 「大海!振られたからって腐ってないでお前は俺とだ」
 「う~っす」
 大海は青山に声をかけられて仕方なく答えた。
 「つうか、振られたってなんすか」
 「なんだ杉浦に振られたからフテてんだろ」
 「……別にふられてないし。フテてもないし」
 ちょっとだけ面白くなかっただけだ。
 さらに体育館の下の小窓から顔を覗かせたり、ドアから覗いてる奴、バスケの奴らも自分達の練習をしながらちらちら見ている。
 「大変ね、旦那」
 「だから旦那ってなんすか」
 
 それからすっかりバレー部内で大海のからかいのあだ名は旦那に定着してしまった。
 杉浦はといえば全然それに動じもせず淡々とした態度はいつも崩れないのだ。
 面白がってるのは周囲だけ。
 杉浦も裏では騒がれていたらしいが、表立っては大海がいたからか特に日常に変わりはなく、バレー部はとにかく部活に燃える事になっていた。
 日曜も部活。
 毎日部活。
 杉浦一人入っただけでこんなに変わるなんて思ってもなかった位に部活に熱心になっていた。
 正セッターの渡部は特に熱心だった。
 あの杉浦のトスを見ればそう思っても仕方ないと思う。
 いくら練習したって杉浦に敵いはしない。
 練習でトスを出す杉浦に誰でも視線は奪われる。
 分かる。
 実際自分だって去年対戦した時に目を奪われていたのだから。
 誰もが勿体無い。目が見えれば…。
 そう思う。
 でも誰も口に出せない。
 杉浦も何一つ言わなく、淡々としているのがまた静かに部内で誰もがの心に火をつけていくのだ。
 試合で、杉浦の姿を見せたい。
 杉浦のトスからのスパイクで試合を決めたい。
 やっぱり密かに大海はそう思ってしまう。
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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