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太陽と月の欠片 答え7

side   悠



 答えを出した。
 永瀬からのメールを見た時悠は固まった。
 でも永瀬の態度は普通に見えて答えの意味を間違っているんじゃないかと勘繰ってしまう。
 もしくはNOか?
 悠の答えはもう始めから決まっている。
 練習試合が終わってから、そう言われたのにどきりとした。
 だけど顔には出ていないはず。
 永瀬はいつでも悠の横にいてくれる。
 まるで危ない事から守るようにと。

 いつの間にか悠の目の悪い事も広まっていて永瀬がそれで悠の傍にいるんだというように解釈されるようになっていたのに悠は安心し、ちょっとは残念に思う。
 別に目の事が知れ渡っても悠は何ともしないからいいけれど。
 それでもバレー部内では永瀬のあだ名は旦那に定着して、永瀬もそれに対して特に拘りはないらしいのがおかしい。

 
 土曜日、対戦校がやって来た。
 午前から皆出てきて練習していたので身体は温まっている。
 どうだろうか…?
 悠はベンチに入って試合を見る。
 審判は相手校の先生がすることになり、ラインズマン、点数捲りなどスタメンに入っていない選手が担当する。
 相手は2、3年生がスタメンで1年生は入ってないらしい。
 悠は相手校の選手の顔は知らない奴らばかりだが永瀬と吉村は同中の奴がいたらしく話をしているのが見えた。
 
 ホイッスルの音がして選手が並ぶ。
 自分は選手として並ばないけれど久しぶりの緊張した瞬間だ。
 悠は選手としては立てないけれどこのちょっとした緊張の場にいられる事に、永瀬の姿を見られることに満足した。

 試合はあっけないほど簡単だった。
 同じ位という話だったが永瀬のスパイクと吉村のリベロが冴え渡った。
 課題も見えてくる。
 ブロックが弱い。
 それと永瀬に頼りすぎる。
 これ位の相手だったらそれでも永瀬のパワーで決まるけれど、上位のチームだったらいくら永瀬でも一人で点数取れるわけでもないので捕まってしまうだろう。
 「先生、もっと強い所との練習試合を組んでください」
 今日はさすがに先生も出てきていたので悠はそう頼んだ。
 「あ、ああ…そう、だな」
 先生も永瀬を見て顔色を変えていた。
 「杉浦、永瀬は…なんでうちの学校にいるんだ?」
 「……俺も本人に聞きましたよ。本当は全国区の選手なのに」
 「そう、なのか?」
 「…そうですよ。ジュニア強化の練習とかにも行っていたはず」
 悠も出る予定だったが目の悪化で諦めたのだ。
 
 先生もやる気が出たみたいで何処が強いかなど練習試合を終わった後で青山と相談しながら決めていく。
 「…忙しくなりそうだな」
 「ま、いいことだ」
 悠がタオルを渡しながら永瀬に言えば永瀬が頷く。
 対戦校が帰った後でミーティング。
 「ちょっといいですか?」
 悠が手を上げながら声を出すとキャプテン言ってみろと顔で促した。
 「必要なのはブロック強化。壁が揃ってない。穴が出来ているしタイミングも悪い。永瀬が前衛の時はいいけれど、後衛の時が弱い。それと永瀬に頼りすぎ。上位校相手じゃ掴まってしまう。コンビももっと使わないと…」
 その他にも悠が問題点を指摘し、明日からの練習の課題とすることにして今日は終了解散となった。
 

 「一緒に電車乗ってく」
 「え?」
 駅に向かいながら永瀬が言ったのにどきりとした。
 「時間早いし。帰っても暇」
 「………永瀬がいいなら明日日曜だしうち泊まる?」
 「え、ええっ!……いい、のか?」
 「いいよ。母親にメールしとく。今日出かけるって言ってたからまだ帰って来てないと思うけど。帰るの夜って言ってたし」
 「俺もじゃ連絡、いれるっ」
 永瀬がわたわたと携帯を取り出して電話をかけている。
 「おっけ!!」
 にかっと永瀬が笑うのに悠はくすっと笑った。
 答えを出したといった永瀬だ。
 それなのにこうして一緒にいるということはそういう事でいいんだろうか?
 悠は顔を俯けた。
 自分はいい。
 でも永瀬は本当にいいのだろうか?
 逃してやる?やらない?
 でも永瀬の答えを聞くまでわからないか、と悠は自嘲的に笑った。
 
 
  

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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