杉浦のお母さんが帰って来て夕食をご馳走になり、客用の布団を杉浦の部屋に運んだ。
「着替え、兄貴のなんかない?」
「あるわよ。出してくる」
兄貴?
杉浦と杉浦のお母さんの会話に大海は頭を傾げた。
「兄貴いるの?」
「いる。でかいんだ。永瀬位はある。年は10も離れてる」
「へぇ、そうなんだ?」
杉浦が頷いた。
「兄貴もバレーやってたんだ。全日本選抜にも選ばれた事あったけど今は怪我で選手無理でリーグチームのコーチしてる」
「まじで!?すげぇな!!!」
驚いた。
「兄貴がいたから俺もバレーするようになったもんだから」
「へぇ」
杉浦の事が一つ一つ分かるのに顔が弛む。
「お前は?なんでバレー?いつから?去年まで見た事なかったけど」
「あ?ああ。ウチ転勤族だから。中2の秋にこっちにきた。元々小さい頃はこっちだけど。バレーは俺小さい頃から身体無駄にでかかったから親がなにかって。バスケかバレーかって」
ぷっと杉浦が笑った。
「無駄にって……」
そこに杉浦のお母さんが着替えを持ってきてくれた。
風呂を借りて、服も借りて、申し訳ないな、と思いつつも心が浮かれてる。
そして落ち着かなくて心臓がばくばくしてる。
だって杉浦の風呂上りとか、やけにエロく見える。
暴走しそうな感じになってしまうけど我慢だ。
だってそもそもバレーばっかで男同士がどうするのかイマイチわかってなかったし興味もなかったから。
…調べておこう、と杉浦の上気した顔を見て心に決める。
健全な男子高校生がイタシたくないわけがない。
「今度はウチ来るか?マンションだけど」
「行く」
杉浦がベッドに入って大海は布団の上で胡坐をかきながらそう聞いてみたら杉浦がすぐに答えた。
「あ~~~……部屋掃除しとく」
そう言うと声をたてて杉浦が笑った。
「別にいいけど。俺は目が見えないとき大変だから綺麗にしてるだけだし。細かいものとか探すに探せない時あるから、そうならないようにしてるだけだ」
「……えらいよなぁ」
よしよしと大海は杉浦に手を伸ばして頭を撫でた。
「あのね…子供じゃないんだから」
「ん?いいだろ。触りたいだけだ」
「そ、そういう事さらっと言うな」
杉浦がむっとした顔をする。どうやら照れを隠すときは杉浦は怒った顔をするらしい。
「さらっとじゃなければいい?」
「…そういう問題じゃない」
はぁ、と杉浦が嘆息するけど、どうしたって大海の顔はにやけてしまう。
「……うちの兄貴に今度練習とか聞いとく。永瀬はもっとレベル高いとこじゃないと…」
杉浦がバレーに話題を変えてきた。
「そうか…?……いや、うん…そうだな」
大海の頭の中でこれからを見据えてを考えた。
杉浦と一緒にいるために。
「……お前専門って学校決めているのか?」
「え?いやまだ。ただ…東京の方に、とは思ってる、けど」
「ちょうどいい。じゃ、俺も大学はそっち目指す。高校卒業したら一緒に住もう」
「は?」
「え?だめ?」
「だめ、じゃないけど……。永瀬話飛躍しすぎ」
「そんな事はない。杉浦と一緒にいられるようにをまず考えるから。あと3年後にはそうなってる」
杉浦が黙った。
「俺簡単に考えてないから。お前みたいに難しくは考えないけど」
単純だから、と笑って付け加えた。
「3年後杉浦もそのつもりでいて?」
「……忘れなければ」
「ひでぇな。…な、キスしていい?」
「…だから、断らなくていい…」
杉浦が視線を背けるけど大海はその杉浦の顔に自分の顔を近づけて唇を軽く合わせた。
「……明日も練習だ。寝るか」
「ああ」
杉浦の黒い瞳が大海をじっと見ていた。
綺麗な瞳。
「……永瀬、本当に俺でいいのか?お前ならそれこそ女の子選び放題だろう?」
「いらない。それ言ったら杉浦の方がだろ。中学ん時もすごかったじゃないか」
杉浦が首を振った。
「絶対ない」
そして言い切った。
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